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全てのアーティストが交渉したら可能かもしれないが。
グランプリという餌が無くて、果たして彼らは協力してくれるだろうか?
◇
「サンウン!? サンウン、どうだ!? 」
「――」
ジュジンの問い掛けに、サンウンは無念そうに首を振った。
その様子を見遣り、デヒョンとマネージャーは顔を曇らせる。
【ナモ・コレ】でのテロ騒ぎは直ぐに収束し、被害は軽微だったものの――中には、運の悪い者もいた。
それが、サンウンだった。
ただでさえ調子の悪かった喉に大量の煙を吸い込んでしまい、喉は相当なダメージを被ってしまった。今はもう、普通に声も出せない状態だ。
――――ましてや、歌う事なんて…………。
デヒョンは肩を落とし、マネージャーに視線を向ける。
「医師は、なんと? 」
「怒っていたよ。僕も怒っているよ。なんでポリープの事を黙っていた!? 」
「――すみませんでした」
「それより! どうなんだ!? 煙の影響で声が出ない状態は、治るのかっ! 」
胸倉を掴むような勢いで問い質すジュジンに、マネージャーは身を仰け反らしながら答える。
「の、喉の方は、このまま安静にしていれば大丈夫らしい。ポリープに関しては、これも差し迫って、今直ぐ手術する程の状態ではないようだ。帰国してからの治療でもいいという事だが――――ただ、声を出すのは、最低一週間は禁止ということだ」
「そんな……」
茫然するデヒョンに、マネージャーは慰めるつもりなのか、スマホの画面を見せた。
「どっちにしろ、明日のMHJは中止の方向で纏まっているようだ。ネットニュースでも、その話題で持ちきりだよ。中には、開催の決行を訴えているアーティストもいるらしいが。…………ほら、この国のお偉いさんが会見している映像だ」
画面の中の男は、ハッキリと中止を宣言していた。
人員の安全を保障できない以上、今回のMHJは中止だと。
ただ、それに伴う契約に関しての賠償については、ナモ公国と主催者企業の間で既に合意されている枠内で粛々と進める――らしいが。
「いずれにせよ、今回のMHJが開催中止となれば、これからウチの方も賠償の話は出てくるだろうが、そういうのはもう事務所の仕事だ。それにたとえMHJが決行されていたとしても、サンウンがこの状態ではViVaceは欠場するしかない」
「し、しかしっ! 」
「それに――言っちゃあ何だが、MHJに参加する際は、出場アーティストの体調管理までを、所属事務所が必ず確約するという事が契約条件に入っていたんだ。だから、最悪もしかしたら、逆にこちらが主催者側へ契約違反の賠償金を払う事になっていたかもしれないんだよ。だから――――逆に中止で良いんだよ、これで」
「どこが良いんだ! 」
激昂して、ジュジンが噛み付いた。
「オレ達はサンウンの喉の負担を考えて、新曲を選択する事にしていたんだ! せっかく、それで上手く纏まっていたのに――リハーサルまでしたのに、それが全部無駄になるんだぞ! 」
しかし、激昂するジュジンに対し、デヒョンの方は項垂れたままで、静かに声を漏らした。
「――――もう、『もしも』なんて話はどうでもいいよ。問題は……サンウンがどうしたいかだ」
そのセリフに、熱くなっていたジュジンも我に返った。
そうだ、真の当事者は、このサンウンだ。
声が出せない状況で、サンウンはどう思っている?
MHJは完全に諦めて、大人しく帰国するか。
それとも、MHJ決行を主催者側に訴えるか。
『オレは』
サンウンは、紙にペンで文字を書く。
『オレは歌えないが、それでもステージに上がりたい。声が出せない分、渾身のダンス・パフォーマンスをしたい。そして、3人でViVaceとして喝采を浴びたい』
グランプリという餌が無くて、果たして彼らは協力してくれるだろうか?
◇
「サンウン!? サンウン、どうだ!? 」
「――」
ジュジンの問い掛けに、サンウンは無念そうに首を振った。
その様子を見遣り、デヒョンとマネージャーは顔を曇らせる。
【ナモ・コレ】でのテロ騒ぎは直ぐに収束し、被害は軽微だったものの――中には、運の悪い者もいた。
それが、サンウンだった。
ただでさえ調子の悪かった喉に大量の煙を吸い込んでしまい、喉は相当なダメージを被ってしまった。今はもう、普通に声も出せない状態だ。
――――ましてや、歌う事なんて…………。
デヒョンは肩を落とし、マネージャーに視線を向ける。
「医師は、なんと? 」
「怒っていたよ。僕も怒っているよ。なんでポリープの事を黙っていた!? 」
「――すみませんでした」
「それより! どうなんだ!? 煙の影響で声が出ない状態は、治るのかっ! 」
胸倉を掴むような勢いで問い質すジュジンに、マネージャーは身を仰け反らしながら答える。
「の、喉の方は、このまま安静にしていれば大丈夫らしい。ポリープに関しては、これも差し迫って、今直ぐ手術する程の状態ではないようだ。帰国してからの治療でもいいという事だが――――ただ、声を出すのは、最低一週間は禁止ということだ」
「そんな……」
茫然するデヒョンに、マネージャーは慰めるつもりなのか、スマホの画面を見せた。
「どっちにしろ、明日のMHJは中止の方向で纏まっているようだ。ネットニュースでも、その話題で持ちきりだよ。中には、開催の決行を訴えているアーティストもいるらしいが。…………ほら、この国のお偉いさんが会見している映像だ」
画面の中の男は、ハッキリと中止を宣言していた。
人員の安全を保障できない以上、今回のMHJは中止だと。
ただ、それに伴う契約に関しての賠償については、ナモ公国と主催者企業の間で既に合意されている枠内で粛々と進める――らしいが。
「いずれにせよ、今回のMHJが開催中止となれば、これからウチの方も賠償の話は出てくるだろうが、そういうのはもう事務所の仕事だ。それにたとえMHJが決行されていたとしても、サンウンがこの状態ではViVaceは欠場するしかない」
「し、しかしっ! 」
「それに――言っちゃあ何だが、MHJに参加する際は、出場アーティストの体調管理までを、所属事務所が必ず確約するという事が契約条件に入っていたんだ。だから、最悪もしかしたら、逆にこちらが主催者側へ契約違反の賠償金を払う事になっていたかもしれないんだよ。だから――――逆に中止で良いんだよ、これで」
「どこが良いんだ! 」
激昂して、ジュジンが噛み付いた。
「オレ達はサンウンの喉の負担を考えて、新曲を選択する事にしていたんだ! せっかく、それで上手く纏まっていたのに――リハーサルまでしたのに、それが全部無駄になるんだぞ! 」
しかし、激昂するジュジンに対し、デヒョンの方は項垂れたままで、静かに声を漏らした。
「――――もう、『もしも』なんて話はどうでもいいよ。問題は……サンウンがどうしたいかだ」
そのセリフに、熱くなっていたジュジンも我に返った。
そうだ、真の当事者は、このサンウンだ。
声が出せない状況で、サンウンはどう思っている?
MHJは完全に諦めて、大人しく帰国するか。
それとも、MHJ決行を主催者側に訴えるか。
『オレは』
サンウンは、紙にペンで文字を書く。
『オレは歌えないが、それでもステージに上がりたい。声が出せない分、渾身のダンス・パフォーマンスをしたい。そして、3人でViVaceとして喝采を浴びたい』
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