【完結】記憶喪失の男の人を助けたら私のストーカーでした!?

十六原

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嫌な予感

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翌朝。
目が覚めると既に起きていたらしい彼におはようございますと言われた。ぼんやりしながら挨拶を返す。彼の顔を見ると昨夜のことを思い出してしまってすごく恥ずかしくなる。でも、後悔はなかった。むしろ……なんていうか、凄く幸せだった。思い出すと顔が熱くなってくる。それを見た彼は嬉しそうに微笑んで、また可愛いと言った。

「よく考えたら、本名も知らないのに付き合ってるなんて、変な感じだよね」

二人で朝食を食べながら私が言うと、彼は、そうですねと笑った。

「でも、僕は幸せです」
「……うん、私も」

そう答えると、彼はとても嬉しそうに笑っていた。

食事を終えると、彼はいつものように食器洗いを済ませて戻ってきた。

「そういえば、さっき牛乳切らしちゃったんですよね。あとは今日の晩御飯のおかずと……」

彼はそう言いながら、テーブルの上に置いてあったメモ帳を手に取り、ボールペンを走らせていく。買い物メモを記入しているようだ。何気なく覗き込んでみると、そこにはぎっしりと食材の名前が書き込まれていた。

……が、そんなことよりも気になることがあった。
私はこの文字に見覚えがあったのだ。この独特の……というかけっこう下手くそな、まるでミミズが這ったようなぐにゃぐにゃした文字。
これってもしかして、昔私の家に届いた、あのストーカーからの手紙……。

驚いて固まっていると、彼がどうかしましたかと聞いてきた。何でもないと慌てて誤魔化す。まさか本人に言えるはずもない。彼は不思議そうな顔をしていたが、それ以上は何も言わなかった。

そのまま彼は買い物に行ってしまった。一人になった部屋で、ベッドに腰掛けてぼうっと天井を見上げる。
結局、あれはどういうことだったんだろう。まさか、ストーカーの正体は黒太郎くんなのだろうか。考えたくはないけれど、でも、あの文字は確かに私の家に届いていた手紙の文字と同じようなものだった。いや、たまたま似たような下手くそな字を書く人だっただけで、別に黒太郎くんはストーカーと関係ないのかな。

(そうであってほしいけど……)

ぐるぐると考え込んでいるうちにだんだん頭が痛くなってきた。とりあえず、今は考えないようにしよう。そう決めて立ち上がる。
それから少し経って、玄関の鍵が開く音が聞こえてきた。彼が帰ってきたみたいだ。私は出迎えるために、急いで玄関に向かった。

ドアを開けると、彼が立っていた。何事もなかったかのように普通にただいまと言う彼に、私もおかえりなさいと言って同じように返した。

もしかしたら、私の勘違いかもしれない。きっとそうだ。だって、こんなに優しくて格好いい人が私のストーカーのわけないし。そう自分に言い聞かせて、リビングに向かう彼の後ろ姿を見送った。
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