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黒太郎くん、改め

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それから、ゆっくりと確かめるように尋ねてきた。

「ゆ、ゆかりさん、僕のこと嫌いになってないんですか? どうして……?」
「だって黒太郎くん、こんな状況でも結局私に優しくしちゃうんだもん。ほんとはすごく優しい人なんでしょ?」
「…………」
「それに、今まで短い間だったけど、黒太郎くんと一緒に過ごした時間はすごく幸せだったから。だから、もう少し信じてみてもいいかなって。次裏切られたら、さすがに嫌いになるかもだけど……でも、今はまだ好きだなって思うの。目の前にいるのは自分のストーカーだった人のはずなのに、変だよね」

そう言って笑う。彼はしばらく呆気に取られたような顔をしていたが、やがて私の言葉の意味を理解したのか、頬を赤く染めた。それから、嬉しそうにはにかんだ。照れくさそうに頭を掻いて、少し恥ずかしそうにして。
それは、私が初めて見る彼の笑顔だった。やっぱり彼は笑っている方が素敵だと思う。

「そういえば、ほんとの名前聞いてなかったよね。……教えてくれる?」
「……ま、真冬って言います。天崎真冬……」
「じゃあ、これからは黒太郎くんじゃなくて……真冬くん、だね」
「あ……」

真冬くんは照れてしまったのか、また俯いてしまった。耳まで真っ赤になっている。私はそんな彼を愛しく思った。真冬くんのことはまだ全然知らないけれど、それでも少しずつわかっていくことができたらいいなと思う。

「……本当にすみませんでした。僕はもう、ここから出ていきますから」
「え、もう夜中だよ。今日は泊まっていったら?」

私は思わずそう言っていた。自分でも驚くくらい自然に口から滑り出た言葉だった。しかし、今更撤回する気にもなれない。

「もう遅いし、一緒に寝よ、真冬くん」

私は冗談っぽく笑ってみせる。すると、彼は顔をさらに紅潮させた。それから、泣きそうな顔をして私を見つめる。
それから、消え入りそうな声で呟いた。

「……好きです」

その声が耳に届くと同時に、私の唇は彼のそれによって塞がれていた。
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