【完結】記憶喪失の男の人を助けたら私のストーカーでした!?

十六原

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私の彼氏

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「僕、ゆかりさんと同じ大学通ってるんですけど……ゆかりさんは僕のこと、知りませんか」
「え、同じ大学なの!?」
「はい。まあ今年入学したばっかりなので……知らなくて当然かもしれないですけど」

知らなかった。言われてみても、全然見覚えも何もない。

「話したことはない、よね?」
「……はい。僕が話しかける勇気なかったので……いつも遠くから見てました。見てたのは3年くらい前からですけど」

そうだったんだ。やっぱり知らない人じゃん……。私は大きな溜息をつく。彼は不安そうにこちらの様子を窺っていた。

「あ、じゃあさ、私に彼氏ができたことも知ってたの?」
「もちろんです。……というか、別れさせたのも僕ですし」
「……は? どういうこと!?」

私は驚いて声を上げた。すると彼は申し訳なさそうな顔をする。それからおずおずと話し始めた。
彼は、私に近づきたくても近づけなかった。高校生と大学生では接点もないし、下手に接近して警戒されるのも嫌だったからだそうだ。でもそんな中、私に彼氏ができたことを知って、彼は酷くショックを受けたという。それならいっそ奪ってやろうと思ったらしい。

「ゆかりさんがあんな男のものになるの、許せなくて。僕のほうがゆかりさんのこと好きなのに」
「あんな男って……、別に悪い人じゃなかったでしょ」
「悪い人でしたよ。僕が彼好みの女性を紹介したら、すぐそっち行ったんですから。ヤれるなら誰でもいいって言ってました」
「……なにそれ……」
「それなのにゆかりさんが今でもあの男のこと引きずってるのはすごくむかつきますけど……、でも、あいつに騙される前に僕が救えて本当によかったです」

私は複雑な気分で黙った。彼が嘘をついていたことには腹立たしさを感じたが、その理由を聞くと怒ることもできなかった。それにしても、まさかこんな事情があったなんて……。なんだか、元彼にいつまでも囚われているのが馬鹿らしくなってきてしまう。

「ゆかりさん、本当にごめんなさい。ゆかりさんのことが好きで、どうしようもなくて……僕……」

彼はぽろぽろと涙を流しながら言った。その表情はとても苦しそうだ。きっとずっと辛かったのだろう。

「大学で普通に話しかけてくれたらよかったのに」
「だ……だって、僕みたいなのが急に話しかけたら気持ち悪いかなって……」
「ストーカーするほうが気持ち悪いでしょ」
「うう……」

言い返す言葉もないのか、彼は悲しげな顔のまま項垂れた。その姿がなんだか可哀想に思えてくる。私が言うと、彼は恐る恐るといった様子でこちらを見た。そして遠慮がちに口を開く。

「ゆかりさんのこと……、まだ好きでいても、いいですか」

その瞳には期待の色が見え隠れしていた。私は小さく微笑んで言う。

「当たり前でしょ、私の彼氏なんだから」
「……まだ、付き合ってくれるんですか?」

彼の目が大きく見開かれた。
信じられないというようにぱちぱち瞬きを繰り返す。
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