エロゲの妹キャラ(男)に転生した俺、なぜか主人公(姉)に熱い視線を向けられる

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6.お嬢様学校に入っちゃうの⁉︎

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 俺は桜木のこの誘いを待っていたんだ。

「はるき様、エトワール女学院に転入しませんか?」

 それに対し、お姉ちゃんははてなマークを浮かべていた。

「えとわーるじょがくえん? てんりゅう?」
「ご存知ないのしょうか?」
「◯◯県にいるお嬢様学校、だっけ?」
「その通りですわ」
「てんりゅうってなに?」
「生徒になることを指しますが?」

 混乱してるな我が姉。明らかに桜木の言葉を理解していない。
 約3秒フリーズした後、

「転入って、えぇえええええええええええ⁉︎」

 今日二度目の悲鳴を喉の奥からあげていた。

「やはり迷惑なのでしょうか?」
「待て待て! ちょっと質問してもいいか!」
「もちろんですわ」

 目をぐるぐるしながらお姉ちゃんは質問する。

「そもそもなんでボクをそこに?」
「確かに、わたくしの説明不足ですわ」

 桜木はスマホを持ち出して、画面を読みながら続けた。

「実はわたくし、僭越ながらはるき様の背景を調べさせていただきましたわ」
「さっきもそういうことを言ってたな」
「貴女はわたくしに害を与えるような人であるかどうかを、万が一のためにも財閥の力で調査しましたわ。気分を害したら謝りますわ」
「仕方ないことだし、謝らなくてもいいよ?」
「ありがとうございます。それで、調査の結果、はるき様の家庭事情と、学校に通っていないことがわかりましたわ」
「そうなんだ……」

 お姉ちゃんは苦虫を噛み潰したような顔を逸らした。
 今まで意図的に避けてきた話題がこんな形で持ち出されて、色々と複雑なのだろう。

「だから恩返しとして、貴女をわたくしの知っている中で一番の学園に通わせたいのですわ。わがままがすぎたのでしょうか?」
「お嬢様学校だろう? ボク、知っての通りの貧乏人だよ、学費払えないし教養もないんだよ」
「ご心配なく。学費はもちろん、学校の勉強も、自由に暮らせるほどの生活費も、わたくしが責任を持って用意、サポートしますわ」
「県外の学校だけど、通ってもいいのか?」
「学園に寮はありますわ。もちろん引越しなどの費用はわたくしが用意します、今の家が心配でしたら財閥の人に代わりに管理させることもできます」
「学校に通ってないボクでも、あそこにいけるのか?」
「はい、はるき様ならきっと、楽しい学園生活を過ごせると信じているのですわ」
「ボクでも、学校に……」

 お姉ちゃんが動揺している。とんでもないチャンスを目にして、心が動かされた。
 俺としては動揺なんかせずに早く承諾しろって思っているけど。もうバイトなんかやめて、学校で青春を堪能してくれって思ったね。

「貴女が心配することはなに一つありません。わたくしが言うのもなんですが、かなりに良い提案だと思いますの」

 しかし彼女は俺の顔を一瞬覗いた後、

「ありがとう、ゆうきちゃん。有難い話だけど、やはりボクはそれを受け取れない」

 と提案を拒否した。

「えっ」
「えええええええええええええええええ⁉︎」

 今日三度目の悲鳴は俺の口からのものだった。
 なんで⁉︎ ゲームだと普通に受け入れたのに⁉︎ なにがダメだったんだ⁉︎
 
「ごめんね、言ったそばからあんたの頼みを却下してしまって」
「理由を教えてくださるでしょうか?」
「ボクは、すばるのやつをひとりにしたくないんだ」

 俺のせい⁉︎ どうして⁉︎

「なに言ってんだよお姉ちゃん⁉︎」
「ボクひとりだけ楽しんでになって、あんたひとり家に残すなんてできねえ」
「君だけが楽しい? どういうことなんだよ⁉︎」
「だって男のあんたが女子校に通えないだろ?」

 なるほどそういうことか⁉︎ ゲームのすばると違って俺は男だから、俺がエドワール女学院に入れないことに引っ掛かったのか!

「それは知ってる! だけどそれとこれは別の話だ! 俺は今の暮らしだけでも十分なんだよ!」
「15歳のガキを数年間留守番させるわけねえだろ! そんな情けねえ姉になった覚えはない!」

 なにを言ってるこのアホは? この期に及んでまだ俺のことばっかり。
 俺は彼女の肩を掴んで訴える。

「ふざけんなよこのバカ姉! ちょっと年上ってだけで大人つらするな!」
「こっちのセリフだ! あんたをひとりなんかにしたら、親父とオカンが泣くぞ!」
「知るかよ! だからなんで君はいつも自分の幸せを捨てて俺に構うんだ! 受ける側の気持ちにもなってみろよ!」
「それが姉としての責任だろうが!」

 まるで自分のことかのように怒ってしまった。
 たった二ヶ月の付き合いとは言え、こいつは俺の姉だ。俺の前で幸せを捨てさせてたまるが。
 
『バン!』

 俺たちが言い争いしていると、急に何か大きな衝撃音が聞こえた。
 お姉ちゃんと一緒に音の方を見ると、地面を全力で踏み込む桜木があった。気のせいか床が凹んだように見える。

「仲良しなのは素晴らしいことですが、わたくしの話を聞いてくだざる?」
「「はい……」」

 まるで鬼でも見たかのように俺たちふたりは恐縮した。

「すばる様が転入できないなんて一言も言ってませんわ」
「俺入っていいんですか?」
「もちろんですわ、むしろなぜできないと思っていたかを聞きたいですの」
「いやっ、常識的に考えて」

 原作のお姉ちゃん(男)が入れたのは桜木を助けたからであって、ちょっと協力したサイドキャラの俺が同じ扱いされるとは思ってもみなかった。

「忘れていませんこと? 貴方も私の恩人に含まれているのですわ」
「恩人もなにも、俺はお姉ちゃんを助けるために乱入しただけで、そんな大層なことはしてませんよ?」
「全く、姉に似ている弟ですこと」
「えっ」
「とにかく、貴方も恩人である以上、はるき様と同じ待遇で恩返しするつもりですわ。……丁度学園長も新しい風が望んでいましたので」

 意味が全くわからない。
 しかし俺も入学できたことで、

「わかった! ボク学校に行きまァす!」
「手にひら返すの早っ!」
「あんたが欲しかったことだろう?」
「それはそうだけど」
「これで決まりですわね」

 こうして、この茶番は終わりを迎えた。
 ゲームと全く同じ形で、英家姉弟はエドワール女学院に入学することとなった。
 入学の詳細を話した後、お姉ちゃんは他の検査を受けることになって、「もう検査は懲り懲りだ~」と泣きながら連行された。
 個室が俺と桜木の二人きりになった瞬間、さっきまで柔らかい笑顔を浮かべていた彼女の顔は一気に厳しくなった。

「はぁ……」

 ため気はやめてくれ。こっちは緊張しちゃう。

「あの、もしかして桜木さんはまだなにか要件でも?」
「その通りですわね」

 その冷たい顔、やはり本命はお姉ちゃんで、俺はおまけみたいな感じなのかな。
 記憶の中だとそれはゲーム内で彼女が主人公以外の男に向ける顔だ。確か男嫌いという設定だったはず。俺の彼女にとっての立場もそれに近いだろう。
 しかし無理もない、今日だけでも男の人に散々な目に遭わされたから、こういう暴力沙汰に遭うのは金持ちの定めなのかもしれない。
 
「その前に、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい?」
「なぜ敬語ですの?」
「えっ、だって俺と桜木さんは……」

 いくらなんでも、サイドキャラの俺がヒロインとため口で話すのは恐れ多いというか。
 もし原作ファンがいたら確実に殺される所行だ。

「友だちじゃありませんの?」
「いや、その」

 彼女、俺のさっき言ったことをしっかり覚えている。しかも僅かだがその顔から寂しさを感じた。
 男嫌いではあるけど、本気で俺のことを友だちだと思う節もあるのか?

「なんでもない、俺たちは友だちだ、桜木」
「苗字で呼ぶんですの?」
「……ゆうき」
「ありがとうございます、すばる様。それでは無駄話はここまでにしましょう」

 さく、いや、ゆうきと改めて挨拶して。彼女は本題に入った。

「まず、わたくしは善意だけで貴方をエトワール女学院に誘った訳ではありません」
「それはどういう意味?」
「詳しい話は省くが、今のエトワール女学院には変化が必要ですわ。そのために、学園長は貴方のようなわたくしたちとは全く違う環境に生きている方を生徒にしたかったのです」

 ゲームだと、生徒たちはエリート主義の集まりみたいなものだったと記憶している、だから意識改革を含めて庶民のお姉ちゃんを誘った。

「だけどなんで俺まで? 庶民サンプルならお姉ちゃんだけで十分では?」
「貴方、ストレートな物言いをしますのね」
「すまん、そんな性分なので……」
「いいわ、そういうのわたくし嫌いじゃない」

 言い過ぎたことを反省し、俺はもう一つの質問をした。

「もしかして、庶民だけじゃなく、男性も欲しいみたいな感じかな?」
「その通りですわ。この学園、全国の中でも男嫌いが有名ですもの」
「そ、そうなんだ」

 確かに男にいい印象がないイメージなんだけど、全国レベルで有名なんだ。

「ちなみにすばる様ははるき様と仲良しなのでしょうか?」
「いきなり? 断言しつらいけど、仲はいい方だと思う」
「今日だけで二度も彼女のために口喧嘩したんですもの」
「二度、って、部屋に入る前の話も聞いたの⁉︎」
「外まで聞こえたので、つい」
「面目ない……」

 激昂しすぎて声が外まで漏れたのか、なんか恥ずかしい。

「謝ることはありませんわ、そこまでお互いを思う家族、わたくしからすれば眩しいくらいですもの」
「そ、そっか。ありがと」
 
 おそらく眩しいというワードは誇張ではない。
 ゆうきの親は忙しくてまともに親子の時間を過ごせていないという設定だと覚えている。
 お姉ちゃんとは違う方向性だけど、彼女もまた家族に思いを抱いているのだろう。

「正直に言わせていただきますわ。わたくしも男の人が嫌いです。下品な連中だと思っていました」
「なんとなくわかる」
「ですが、貴方を信じてみたいと思いますの」
「どうして?」
「貴方のはるき様を思う気持ち、今までの男にはなかったものですので、だから信じてみたくなったの。はるき様を悲しませぬためにもね」
「ありがと、お姉ちゃんのことを心配してくれて」
「そして彼女を悲しませる可能性を塞ぐためにも、貴方にひとつだけ頼みたい事がありますわ」

 彼女は俺が思ってもいなかったことを頼んだ。

「すばる様、わたくしの従者になりなさい」
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