運命を殺したい僕、運命を幸せにしたい俺

かりん

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3 なぜ人は苦しむのか。知ってしまったからだ。

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(side夏向)
……無花果か。
そういえば。
僕は学園に転入する直前の、追風との荷造りについてふと思い出した。僕の自宅まで荷造りを手伝いに来てくれた追風は休憩中、美味しそうに無花果を頬張る。そしてふと、僕に言った。

「夏向さま、そういえば無花果について知ってますか?」

その日の前日、実は八百屋で野菜を買ったら店員から、おまけとして無花果を貰った。丁度旬らしいからと。僕はそれを受け取った。
荷造りを手伝いに来てくれたお礼として、『せっかくだから』と、僕は無花果を振舞ったのだ。

「何?」
「禁断の果実は元々、無花果という説があります」
「林檎じゃないんだ」

追風は軽い雑談のつもりだったのだろう。いや、確か……追風の家はキリスト教だからそういうのに詳しいのかもしれない。

禁断の果実というのは、アダムとイブとか楽園のあれだ。
楽園にいたアダムとイブに、蛇が唆す。思わず禁断の果実を食べてしまったふたりは、神さまから楽園を追い出される。
そうして、ふたりに知恵がつき、服を着るようになり、死すべき宿命を背負いながら……人間として、生きることになる。こういう話だ。

「林檎の説もあります。ヨーロッパでは林檎とされていますしね」
「その他、ブドウの説もあったりトマトの説もあります。まあ、確かめる術は誰にも無いですけどね」
「そうだ。確かめる術は無い。真実が正しいのでは無く、『そう言われていること』が何より重要で正しいのかも……」
「そうですね、林檎と無花果。このふたつが現在有力です」

林檎と無花果……。ただの雑談だ。そうこの時は聞き流していたが……ああそういえば、生徒会長のフェロモンの香りと一緒。
そんなことを今になって気づく。まあ、多分関係はないと思うんだけど……僕は宗教に詳しくないから分からない。
まあそれに、どうでもいい。

無花果をすべて食べ終えた追風は、ああそういえばと話を変えた。

「夏向さま。学園に銃を持っていくことは難しいと思います」

当然殺すために持っていくはずだったので驚いてしまった。僕の愛銃はベレッタ・ナノ。ポケットサイズの小型の銃で、衣服に引っかからないよう凸凹を削ぎ落としたデザインの銃だ。隠し持つのには丁度いい。
ナイフもまあ、一応使えるけれど…あんまり使ったことは無い。
それ以外なら格闘術とかちょっと習った程度だ。

「なんで?」
「荷物検査があります。空港並に」
「なるほど、そういうこと」

転入生だもんな。厳重な気もするけど……エリート学園だし、多少は警戒して当然か。生徒は大抵名家の跡取りだったりするし、それくらいしないと僕みたいな変な奴から守れない。
銃を入念に隠しても、見つかるとめんどくさい。エアガンとか嘘ついても通じるかな。いや……警戒されるか。

「その点ナイフなら、人を殺す以外に多少の用途はあります。ナイフなら夏向さまでも持ち込めそうですけどね」
「まあ、そうか。じゃあナイフで行くよ」
「愛銃ですが、可能ならば右代家の使いの者に届けさせます」

使いの者か…
確か、右代に使えてる家は大概風っぽい名前だったはず。追風とか、そんな感じの。

「分かった。まあ……無理なら、無理しなくていいから」
「ええ、可能であればの話です」

そうして僕と追風は休憩を終わらせ、また荷造りを始めた。
荷造り中に散々考えて……決めた。
たくさんのナイフの言い訳は、彫刻が趣味だということにしよう。

これが転入する前の話だ。
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