〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩

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10 夫人の元に届けられたもの

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 羨ましい、か。
 確かに。
 あの母親とあの父親らしき男を持っていた、と思わざるを得なかったのだから。
 私は一応お母様が「身体が弱いにも関わらず私を産んでくれた」という一点だけで、悪い気持ちはしない。
 感謝できる。
 父に関してはある程度「仕方ないよな」という気分もあった。
 「母を愛していたならば」という前提つきならば。
 それに比べると、ミュゼットの方が捨てられた感は強かっただろう。
 ともかく現在の疑問が全て解決した暁には、私も彼女も確実に重荷が消えることになる。
 たぶん私がしたいのは、復讐というよりは、「排除」だ。
 この家において、私は使用人達の中では受け容れられている。
 確かに男爵令嬢としての立場で扱われてはいないが、生きていく術は皆に教わっている。
 では何をしたいのか、と言えば。
 やはり父と義母という、自分の生存に危険な要素を排除したい。
 そういうことなんだと思う。
 ミュゼットの方がよほど「復讐」感は強いのではないだろうか?
 そんなことを夜、つらつらと考えていたら、ファデットがまだ起きていたのか、と部屋にやってきた。

「なるほど、アリサ嬢さんはそう思うと」
「それで勢いが無くなってしまうという訳ではないんだけど。だって、何だかんだ言って一応雇い人としての契約を結んでいて、家族がちゃんと他に居る皆より、私の方がいつ消されても判らない立場なんだもの」
「うん、まあ、だったらもうちょっと危機意識を持ちましょうよ。それこそアリサ嬢さんは、それでも一応男爵令嬢なので、いきなり何処かに嫁がされるって可能性もあるんだし!」
「あ、それは嫌」
「でしょう! だったら気合い入れていきましょう!」

 そうね、と私はファデットと背中を叩き合った。



 そんなある日、家に大きな荷物がやってきた。
 業者が運び込むと、階上から夫人が既に気付いていたのか、軽やかな足取りで下りてきた。

「まあ! やっと来たのね!」

 窓掃除をしながら、その様子をうかがっていた私達は、夫人のあまりに浮かれた様子が気になった。
 自ら受け取りをし、その上で、すぐに開けてもらう様に業者に指示する。
 どうやら壊れ物の様で、開けるにも手順が要るらしい。
 木箱の釘をいちいち外し、その中の詰め物を広げ……

「これよ」

 ふふふ、と彼女は露骨な笑みを浮かべる。
 そこに現れたのは、腹の高さほどある極彩色の壺だった。
 人一人すっぽり入っていてもおかしくない程の。
 私は他のメイドにこそっとつぶやく。

「……そんなに壺がお好きだったかしら」
「少なくとも私は知らないけど……」

 この家にも特にそんなものは今まで無かった。
 何故だろう?
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