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18 買い出しに行こう

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「買い出しに一緒に行く? アリサ嬢さん」
 ハッティとロッティに例の話をしたあと、彼女達にそう誘われた。
 別に私は外出ができない訳ではない。
 禁じられてはいない。
 ただあまり外出するだけの口実が無いのだ。
 まず、他の雇い人と違って「休日」が決まっていない。
 私はあくまでこの家の生まれなのだから。
 それこそミュゼットの様に逃げ出すという手もあるが、お祖父様の復権の日まではここに居てできるだけ男爵夫妻のボロを掴んでおきたいという気持ちがあった。
 内側からでないと見えないものがある。
 だが、外で調べたいものが、何だかどんどん出てくるのだ。
 調べに出すと妙なことが次々に湧いてくるものだから。
 私はそれでも口実がやってきたかな、と思う。

「買い出し?」
「そう。ロッティの代わりに嬢さん行かないかなって」
「行けるなら行きたいわ」

 買い出しというのは案外少ない。
 と言うのも、業者が持ち込んでくるのが基本だからだ。
 だからわざわざ「買い出し」と称して外に出るのは、こまごまとしたものを一気に買う時である。
 荷馬車に揺られて、ハッティは歌など口ずさみつつ、その道を楽しんでいた。
 確かに外に出るのは何年ぶりだろう。
 家の庭が広いからさほど閉塞感は無かったけれど、それでも外の爽快感には敵わない。

「それで今日は何処を回るの?」
「幾つも。紅茶の良いものとそうでないもの。質の良い紙を少しと、良くないものの束。奥様がバザーに出すもの用に作る小物用の、もの凄く質が良い訳ではないリボン。布はいいんですって。何でも嬢さんやミュゼットが以前着ていた服を解いて作るそうよ」
「あれを……」
「あ、それと例の子用に、と子供服屋にも寄っていかなくちゃならないわ。一応立場は近侍、なんですって」
「それを男爵は知っているの?」
「まあ知っているんじゃない? 留守にすることが多いし。だったら外で浮気されるよりは、中でペットに奉仕させておく方が気楽なんでしょ。奥様も別に恋がしたい訳ではなさげだし」
「そうなの?」
「まあね。奥様って恋より金、でしょ」
「わかるの?」
「……って言うか、嬢さんは…… じゃ、判らないか。まあ仕方ないね」

 ハッティは木箱にもたれたまま、ため息をついた。

「そりゃあ、男が女を買いに行くんだ。逆の欲望だってあるだろ? 神様が見ているって言ったって、目と心に蓋をすればいいし。まあねー、実際男といちいち付き合うと面倒ってのはあるのよね。でもしたいことはしたいとしたら、まあ身分の低い男連れ込むか、それこそペットを買いとってくるくらいよね」
「でもそれ、見つかったら」
「そうよねー。男連れ込んでいるのがばれたら離婚だろうし、ペットはそもそも買うのが犯罪だもの」
「え」

 そこか。
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