21 / 43
21 瓶は何処からやってきたのか
「そうなんだよ。うちの御主人は最近愛人を連れ込んでさ。奥様はいいとこの出だから、追い出すこともできないんだよ」
……こんなにあからさまに言ってしまっていいんだろうか。
使用人用のお茶と、形がいびつな菓子を前に、私とハッティはこの大きな屋敷のメイドと話していた。
「いやそれ言ったら、うちだって、後妻の夫人がペット連れ込んでいるからね。まあ何処でもある話って言えばそうだろうけどさ」
「ペットかあ。奥様が欲しいならそれでいいかもしれないけど、あれ、高いんだろう?」
話が私に振られる。
「さ、さあ…… でも、一緒に来た瓶はずいぶん上等でしたから」
「あー、だったらその瓶の数倍はするねえ」
「そうなのかい? 相場は」
「うん。その辺りは、うちより、サブスル家辺りが詳しいんじゃないかね」
「サブスル家?」
貴族じゃないのか。
「って言うか、だいたいその手の瓶だのなんだのってのは、サブスル商会が扱うだろ? 書いてなかったかい?」
「書いて――なかったわ」
あの瓶は送り主の名は書いてなかった。
けど、当然の様に、事故にも遭うことなく届いていた。
「あ、それだと送り主と受け取り主が一緒ということが考えられるねえ」
「え?」
「あんたのとこのハイロール男爵様は結構あっちこっちの商会に出資しているじゃないか。サブスル商会にも出資しているんだったら、そういう送られ方するのもありだよ」
「そうなんですか……」
何か今、ちょっとつながった気がした。
*
それからあちこちで細々としたものをきちんと買い、私達はまた戻ってきた。
その頃には既にとっぷりと日も暮れていた。
「ただいま帰りましたあ」
そう言って使用人口へまたもや戻ると、皆がどっと押し寄せてきた。
「私らの茶缶! 持ってよぉ」
「チョコレート!」
……まあ、寄り道もしたのだ。
夫人用のクッキーだけでなく、板チョコレートとか、バニラエッセンスとか、ハンドクリームとか。
仕事以外で欲しいものも頼まれていたので、使用人達は待ち構えていたのだ。
「あ、嬢さん、ミュゼットから手紙が来てますよ」
ファデットがそう言って渡してくる。
だがいつもよりやや厚い。
というか、大きい。
一体何を送ってきたのだろう。
ともかくそれはエプロンのポケットに根性で押し込み、夕食を摂った。
途中でお茶はできたけど、それだけではさすがに育ち盛りの身体には厳しい。
「今日はよく食べるねえ」
ドロイデはそう言ってはねじった形の悪いパンを私にほいほいと渡してきた。
私もそのみっしりとしたパンをがしがしと噛み締めた。
もの凄く久しぶりの外、ということもあってやっぱり相当興奮していたのかもしれない。
それから片付け物の続きをして、屋根裏へと戻って行く。
その途中、奇妙に甘い香りを鼻に感じた。
二階を通る時だったことから、私は少しばかり嫌な気持ちになった。
そしてそのまま廊下を渡り、屋根裏への階段へと向かっていった。
……こんなにあからさまに言ってしまっていいんだろうか。
使用人用のお茶と、形がいびつな菓子を前に、私とハッティはこの大きな屋敷のメイドと話していた。
「いやそれ言ったら、うちだって、後妻の夫人がペット連れ込んでいるからね。まあ何処でもある話って言えばそうだろうけどさ」
「ペットかあ。奥様が欲しいならそれでいいかもしれないけど、あれ、高いんだろう?」
話が私に振られる。
「さ、さあ…… でも、一緒に来た瓶はずいぶん上等でしたから」
「あー、だったらその瓶の数倍はするねえ」
「そうなのかい? 相場は」
「うん。その辺りは、うちより、サブスル家辺りが詳しいんじゃないかね」
「サブスル家?」
貴族じゃないのか。
「って言うか、だいたいその手の瓶だのなんだのってのは、サブスル商会が扱うだろ? 書いてなかったかい?」
「書いて――なかったわ」
あの瓶は送り主の名は書いてなかった。
けど、当然の様に、事故にも遭うことなく届いていた。
「あ、それだと送り主と受け取り主が一緒ということが考えられるねえ」
「え?」
「あんたのとこのハイロール男爵様は結構あっちこっちの商会に出資しているじゃないか。サブスル商会にも出資しているんだったら、そういう送られ方するのもありだよ」
「そうなんですか……」
何か今、ちょっとつながった気がした。
*
それからあちこちで細々としたものをきちんと買い、私達はまた戻ってきた。
その頃には既にとっぷりと日も暮れていた。
「ただいま帰りましたあ」
そう言って使用人口へまたもや戻ると、皆がどっと押し寄せてきた。
「私らの茶缶! 持ってよぉ」
「チョコレート!」
……まあ、寄り道もしたのだ。
夫人用のクッキーだけでなく、板チョコレートとか、バニラエッセンスとか、ハンドクリームとか。
仕事以外で欲しいものも頼まれていたので、使用人達は待ち構えていたのだ。
「あ、嬢さん、ミュゼットから手紙が来てますよ」
ファデットがそう言って渡してくる。
だがいつもよりやや厚い。
というか、大きい。
一体何を送ってきたのだろう。
ともかくそれはエプロンのポケットに根性で押し込み、夕食を摂った。
途中でお茶はできたけど、それだけではさすがに育ち盛りの身体には厳しい。
「今日はよく食べるねえ」
ドロイデはそう言ってはねじった形の悪いパンを私にほいほいと渡してきた。
私もそのみっしりとしたパンをがしがしと噛み締めた。
もの凄く久しぶりの外、ということもあってやっぱり相当興奮していたのかもしれない。
それから片付け物の続きをして、屋根裏へと戻って行く。
その途中、奇妙に甘い香りを鼻に感じた。
二階を通る時だったことから、私は少しばかり嫌な気持ちになった。
そしてそのまま廊下を渡り、屋根裏への階段へと向かっていった。
あなたにおすすめの小説
妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
妹と王子殿下は両想いのようなので、私は身を引かせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナシアは、第三王子との婚約を喜んでいた。
民を重んじるというラナシアの考えに彼は同調しており、良き夫婦になれると彼女は考えていたのだ。
しかしその期待は、呆気なく裏切られることになった。
第三王子は心の中では民を見下しており、ラナシアの妹と結託して侯爵家を手に入れようとしていたのである。
婚約者の本性を知ったラナシアは、二人の計画を止めるべく行動を開始した。
そこで彼女は、公爵と平民との間にできた妾の子の公爵令息ジオルトと出会う。
その出自故に第三王子と対立している彼は、ラナシアに協力を申し出てきた。
半ば強引なその申し出をラナシアが受け入れたことで、二人は協力関係となる。
二人は王家や公爵家、侯爵家の協力を取り付けながら、着々と準備を進めた。
その結果、妹と第三王子が計画を実行するよりも前に、ラナシアとジオルトの作戦が始まったのだった。
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
溺愛されている妹の高慢な態度を注意したら、冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになりました。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラナフィリアは、妹であるレフーナに辟易としていた。
両親に溺愛されて育ってきた彼女は、他者を見下すわがままな娘に育っており、その相手にラナフィリアは疲れ果てていたのだ。
ある時、レフーナは晩餐会にてとある令嬢のことを罵倒した。
そんな妹の高慢なる態度に限界を感じたラナフィリアは、レフーナを諫めることにした。
だが、レフーナはそれに激昂した。
彼女にとって、自分に従うだけだった姉からの反抗は許せないことだったのだ。
その結果、ラナフィリアは冷血と評判な辺境伯の元に嫁がされることになった。
姉が不幸になるように、レフーナが両親に提言したからである。
しかし、ラナフィリアが嫁ぐことになった辺境伯ガルラントは、噂とは異なる人物だった。
戦士であるため、敵に対して冷血ではあるが、それ以外の人物に対して紳士的で誠実な人物だったのだ。
こうして、レフーナの目論見は外れ、ラナフェリアは辺境で穏やかな生活を送るのだった。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるラフェリアは、実家との折り合いが悪く、王城でメイドとして働いていた。
そんな彼女は優秀な働きが認められて、第一王子と婚約することになった。
しかしその婚約は、すぐに破談となる。
ラフェリアの妹であるメレティアが、王子を懐柔したのだ。
メレティアは次期王妃となることを喜び、ラフェリアの不幸を嘲笑っていた。
ただ、ラフェリアはわかっていた。甘やかされて育ってきたわがまま妹に、王妃という責任ある役目は務まらないということを。
その兆候は、すぐに表れた。以前にも増して横暴な振る舞いをするようになったメレティアは、様々な者達から反感を買っていたのだ。