〈完結〉ごめんなさい、自分の居た場所のしていたことが判らなかった。

江戸川ばた散歩

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13 少年達の警告、そして

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 結局、五人で冒険ものの映画を観て寮に戻って来た時には、夕方になっていた。

「それじゃ、また」
「先生」

 リョウは片手をすっと挙げた。そして低い声でつぶやいた。

「できるだけ早く、あの園から、出た方がいいですよ」

 じゃ、と彼らは素早く身を翻し、建物の中に入って行った。



 その夜、真理子はなかなか寝付かれなかった。
 彼らの言っていたことは、あまりにも信じがたく、それでいて妙に真実味があった。
 ああ駄目だ駄目だ。
 眠ろう。
 眠って、明日またしっかり考えよう。
 そう思うのだが、やはり眠れない。
 思い切って彼女は身体を起こすと、ハーブティーを入れよう、と起きあがった。
 灯りをつけよう、と電気のスイッチに手を伸ばした時だった。

「誰?」

 こんこん、と小さな音がした。
 窓の外に、誰か居る。
 彼女はぞっとするものが背中を走るのを感じた。
 泥棒?
 注意しつつも、おそるおそる、窓を開けた。
 風の無い、五月の夜は、少しだけ空気が湿っている。
 彼女は身を乗り出し、辺りをきょろきょろと見渡した。
 月の無い夜だった。
 常夜灯の光は、彼女の部屋の前の樅の木のせいで、半分以下しか届かない。
 安全対策に全くなっていない。
 彼女は再び電気のスイッチに手を伸ばした。

「点けないで!」

 低い声がした。
 男の―――声だ。
 ひっ、と彼女は息を呑んだ。
 身体がこわばるのが判る。

「先生…… オレだよ」
「だ、誰?」
「オレ…… クニ……」
「クニ?」

 彼女はすぐに窓辺に駆け寄ろうとした。
 だが、はたと足を止める。
 クニはまだ、三月の卒業の時には声変わりもしていなかったじゃないか。
 確かに思春期の少年の発育は早い。
 いきなり変声期が来たのかもしれない。
 だが今、真理子の耳に届いた声はそんな変わったばかりの少年のものではなく、大人の男のそれだった。

「そんなはず、ない! クニはまだそんな声じゃなかった!」
「オレだよ先生! ホントなんだ、ホントなんだ! お願いだから、少しでいいから、そうしたら、オレ、すぐに、行くから」
「行く?」
「逃げる前に、先生に、会いたかったんだ…」

 大人の声なのに。
 最後の方が、詰まっていた。
 泣いている様に。
 彼女は劇場用の小さなペンライトを持つと、そっと窓辺へと近づいた。
 男が一人、うずくまって、泣いていた。
 彼女はそっとその上に光を向ける。
 ゆっくりと、光度を強くして行く。
 男はそれに驚いて、顔を上げた。

「!」

 真理子は思わずペンライトを落とした。
 かつん、と小さな音がして、光が消えた。
 男は立ち上がった。
 高い背。
 180センチはあるだろう。
 肩幅も広い。筋肉も――
 だが。

「……クニ…… クニなの」

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