〈完結〉ごめんなさい、自分の居た場所のしていたことが判らなかった。

江戸川ばた散歩

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12 「飼われてる」と中学生達は言った

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「まあ落ち着いて下さい、マリコ先生」

 そう言いながら、リョウは真理子につ、とラテを勧めた。
 彼女は微妙な苦みのあるそれをすすりながら、冷静になろう、と努力を始めていた。
 どうやらこの「子供達」は自分の知らない、そして自分にとっては何かショッキングな―――そう、昔、野辺山加子の身体の話を聞いた時の様なことを言おうとしているらしい。

「まず――そうですね、マリコ先生の一番知りたいのは、クニの行方ですよね。でも正直、オレ達も、何処に行ったのかは知らないんです」
「知ってるのは、クニはオレ達と同じ中学には行けなかった、ってことだけ。予想はしてたけど」

 言いながらトシは、椅子の背に、背中と両腕を投げ出した。

「予想…… してた?」
「だってマリコ先生、クニは、頭良く無かったもん。スポーツも普通だったし、これと行った特技も無い。じゃあ、中学には、行けないよ」

 ミナもまた、当たり前の様に言う。

「そんな訳ないでしょ!」
「あるんですよ」

 静かに、という様に、リョウは真理子の肩を押さえた。

「オレ達、あそこで育った子供は、だんだん気付くんですよ。とにかく何かに秀でていなければいけないって。そうでなければ、あの中学校の寮には行けないって。マリコ先生、三年も居たんだし、知ってると思ってましたけど」
「知らなかったのね」

 サワはため息をついた。

「でも、じゃあ」
「ごめん、本当に、その先は、オレ達にも知らないんだよ」

 苦々しげに、トシは両手を組み合わせ、そこに視線を据える。

「オレ達の先輩に、タマミさんって居たでしょ」
「あ、……ああ、居たね」

 最初の年に担当した子供の一人だった。
 大柄で、腕っぷしの良い少女だった。
 頭は良くないが、下の者の面倒見が良かった、という記憶がある。
 ただまだその頃は、真理子自身、仕事に慣れるのに精一杯だった。
 子供達一人一人に情を移らせる余裕も無かった。

「オレ、その時まだ四年だったけど、あのひとのことはとっても好きで、会いたくて、中学まで訪ねてったんだ。そうしたら、やっぱり他の先輩から、言われたんだ。『居ないんだ、連れていかれたんだ』って」
「連れて?」
「ねえマリコ先生…… わたしたちって、飼われてるんです」

 サワは静かに言った。
 真理子はからかうんじゃない、と言おうとした。
 だが実際には、その言葉は出て来なかった。

「生まれてすぐに放り出されたわたしたちは、拾われて、飼われてるんです。そして中に上質なものがあれば、それなりに生かしておくし」
「そうでなけりゃ」

 ミナは口の端を上げ、首の所で手をすっと横に引いた。

「冗談は…… 止しなさいよ」
「冗談じゃないですよ。具体的に何処に行ったのか、まではオレも知らないけれど、クニがオレ達とは違う利用目的のために連れて行かれた、ということは確かです」
「利用目的」
「それが、何であるのかは判りませんが…… ただ、まず会えないことは、先輩達の話からして、確かだと思います。探しようも無いし、探しているってことが判ったら」

 リョウは首を横に振った。

「だからこんなとこまで、わざわざ出て来た、って訳?」
「そ」

 トシは短く答えた。

「オレ達は、先生と映画見に行ってるの。だからできればそっちも付き合って欲しいな。何処かでボロが出ない様にさ」
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