反帝国組織MM⑤オ・ルヴォワ~次に会うのは誰にも判らない時と場所で

江戸川ばた散歩

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第22話 「天使種は人間じゃないでしょ」

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「出発は、明日の朝だよ」

 キムは何気ない口調で座り込む彼に告げた。

「お前はどうすんの? 俺達とは行かないんでしょ?」
「まあね」
「一緒に来ればいいのに」
「人間なのに?」
「違うでしょ?」

 Gは弾かれたように顔を上げた。

「天使種は人間じゃないでしょ」

 目を大きく広げる。少なくとも、このレプリカの口からそれが告げられるとは思ってもいなかった。

「首領が言ってたよ。天使種は俺達が敵としなくてはならない『人間』ではないって。むしろ俺達のような、何かと何かが生きてくために共存しているようなものだって。だからGは俺達と大して変わらない訳でしょ?」
「お前…」
「あ、でも俺別にそれでお前の軍の連中をやったことは別に弁解しないからね。そうしなくちゃ俺達は生きられないでしょ」
「ああ」

 それは事実だ。

「それで何か悩んでる? お前は」
「悩まないのか? 自分のしていることが正しいかどうか…」
「そういうのは、生き残ってから考えればいいんだ」

 やや怒ったような口調で、キムは口をとがらせる。

「Gは俺より『覚めて』る時間長いはずなのに、どうしてそんなことも判らない訳?」
「キム?」
「そんなことは、誰が決めるんだよ?」
「誰が…」
「正しいか正しくないかなんて、そんなの、お前、自分で決められるほど自分が正しいなんて思っている訳? そんなのは、後で考えればいいんだよ。死んだ後で、誰かが決めればいい。少なくとも、そんなことで今生きなくちゃならない俺達が、悩む暇はないよ」

 彼は目を閉じることも忘れて、目の前のレプリカントを見据えた。答えは明快だった。ひどくそれは単純で、それで納得のいくものだった。

「俺はさ、だからまず生き残りたいし、それに、助けてくれた首領のために、何かしたい。それで生き残れたら、それはその時だし、死んだらそしたら、俺の行動なんて、後に俺達を滅ぼした人間達が勝手につけてくれるさ。だけどそれはもう俺の知ったことじゃないだろ?」

 ああ、とGはうなづいた。

「お前にはそういう相手はいないの?」
「居る」
「だったら話は早いじゃない。とにかく生きていりゃ、その人のために何かできるじゃない」
「全くお前は」

 彼は苦笑する。

「何、俺笑えるようなこと言ってる?」

 いいや、とGは軽く頭を横に振った。その拍子に、キムほどではないが長い髪が揺れる。それを見てキムは彼に訊ねた。

「いつもリボンでしばってるけどさ。面倒じゃない?」
「え?」
「いつだってそうじゃない」
「…ああ」

 そう言えばそうだった。解かれるための、リボンをしていた。だがそのことは口には出さない。代わりにそう言う相手の髪を手に取ると、彼は器用にそれを編む。

「何すんの」
「こっちだっていつも思ってたんだよ。ちゃんと手入れしないと、傷むぞ」
「ふうん」

 そして長く編まれ、ハンカチでとりあえずと縛られた自分の髪を見ながら、キムはうなづいた。

「悪くないね」

 だろ、とGは軽く笑いかけた。
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