65 / 125
第65話 「他愛ない『裏』新入生歓迎行事でしょうね」
しおりを挟む
「……でも結構胸は小さいな……」
「無駄な肉がなくていいではありませんか」
その間にも自分にもあれこれと上級生の手は回されている。
くすくすと笑いながら、だらんと投げ出された彼女の脚を掴むと、それを大きく広げさせる。
目を覆っている手の隙間に、ほんの少しの光の琴線が見えた。
どうやら携帯用の小電灯を持っているらしい。ほんの少し、その熱が感じられるのは、胸でも顔でもない。脚だった。
ももの内側に、ほんのりとした暖かさが感じられる。
とすると。
悪趣味だ、とシラは思った。
だがその後がさらに悪趣味だ、と思わずにはいられなかった。
わざわざ場所を確認してるんだわ。そうとしか思えなかった。何故なら。
!
いきなり感覚が額まで走った。
相手は的確に、そこを掴んだのだ。
それまでじっとしていたシラの身体が急に動き出す。
止めておけないのだ。軽く背中が反る。あごが軽く上を向く。
くすくすくす。
その場所を、相手はずいぶん念入りにいじりまわす。
慣れている手だった。
何故慣れているか、なんてシラは知らない。
だけど、こんなにしなやかに、強くゆるく、を念入りにするのは、手慣れているに決まっている!
こんなに自分の身体と頭がばらばらになったしまった気がするのは初めてだった。相変わらず、頭はどんどん冷静に、事態を知ろうとする。だけど身体は勝手に感じている。
何を言っているのか自分でも判らない声が喉からあふれる。
ざわり。別の手がその下へ伸びてくる。ひとしきりそちらもいじくりまわしているよう。
くすくすくす。
それまで自由になっていた口を誰がが塞いだ。
そして、シラは次の瞬間、喉の奥で叫んだ。
*
「……痛かった」
「痛かったですか?」
「痛かったわよ」
そう言えばそうかもしれませんね、などと相棒はいけしゃあしゃあと言う。
「あんたねえ……」
「何ですか?」
嵐が過ぎ去って少ししてから、ナギが小さな声で大丈夫か、とシラに問いかけてきた。その答えが先のものである。
「……あんた知ってたの? こういうことが起こるって」
「……聞いただけでしたけれどね」
「聞いたって……」
シラはぴょん、と身体を起こすと、横にくしゃくしゃにされたままの毛布を身体に巻いて立ち上がった。
窓寄りのベッドに上半身を起こした相棒は、さらけ出されたままの胸を隠そうともせずに、ひざに両のひじを立てていた。
「ここへ来る前に付けられていた家庭教師の一人がこういう所の出身の女性だったんで、高等科に中途編入するなら気をつけなさいって言われてましたし」
その割には落ちつきすぎだ、とシラは思う。
「あんた何されたの?」
「まあ…… あなたとそう変わらないんじゃないですか?」
「具体的に言ってよ、何がどうなったか」
彼女は肩をすくめる。
「変な人ですね。そんなこと聞きたがるなんて」
「あんた程じゃないわ。言ってよ」
はいはい、と言ってナギも毛布を巻くと、ベッドから降りた。そして替えられたばかりのジュータンの上にぺたんと腰をおろす。シラもつられて、その場に座り込んだ。
「別に、何てことはないですよ。全身点検されて、突っ込まれただけでしょう。暇ですねえ。まあ他愛ない『裏』新入生歓迎行事でしょうね」
「……他愛ない…… だけってね、あんた……」
「あ、そうですね…… あなたそういうこと今までなかったんですよね……だったら言っておいた方が良かったかな……」
ナギはぱさぱさと目の当たりに落ちてくる髪をかき上げながら、何気なく言う。昼と違って解かれている後ろ側の髪が何処ともなく彼女の身体にまとわりついている。
「あんたはそうじゃないって言うの?」
「あれ、あなた私を何だと思ってたんですか?」
意外そうな声を立てる。
「何って……」
「だってあなた、私が『人形』だって知ってはいたんでしょう?」
それは知っていた。可能性として、父親のものという意味でも。
「知ってたわ」
シラはやや顔をしかめる。
「だったらそういうことが全くないなんてこと、ある訳ないじゃないですか?」
「確かにそうだけど」
何となく、忘れていたのだ。
「何かあんた、そういう感じしないから……」
「見た目じゃあ人なんて判りませんよ」
ぎくり、とシラは心臓が掴まれる気がする。
「現にあなただってそうでしょう? そぉんな可愛らしい外見しておきながら、結構中身は物騒じゃあないですか」
「……あんたに言われたくはないわ」
「どっちを? 可愛い? 物騒?」
くすくす、と笑い声が聞こえる。自分はこいつにからかわれているな、とシラは気付いた。
「どっちもよ!」
ぱっと口が手で塞がれる。手はややひんやりとしていた。どうやら声が大きかったらしい。
ナギはもう片方の手を、もう少しこっちに来て、とシラの首に回した。
確かに近付いた方が、内緒話はしやすい。だが、両手を動かしたせいか、ナギを覆っていた毛布はするりとそのまま床に落ちた。
カーテンの布越しに入り込んでくる月の光のせいで、ナギの身体の線は、あますところなくシラの視界に入ってくる。浴室などでも見慣れたはずなのに、どうしてそういう時とは印象がまるで違うのだろう?
それまで毛布に絡まっていた髪は、そのまま身体にまとわりつく。シラは口を塞いでいる手をゆっくりとはがした。冷たい手だ。
「……あんた寒くないの?」
「あなた寒いですか?」
「あたしが聞いているのよ」
「寒くないですよ」
「嘘」
「嘘じゃないですよ」
「手が冷たいじゃない」
「体温が低いんですよ」
ほら、とナギはシラの手を取って自分の胸に当てさせる。
「無駄な肉がなくていいではありませんか」
その間にも自分にもあれこれと上級生の手は回されている。
くすくすと笑いながら、だらんと投げ出された彼女の脚を掴むと、それを大きく広げさせる。
目を覆っている手の隙間に、ほんの少しの光の琴線が見えた。
どうやら携帯用の小電灯を持っているらしい。ほんの少し、その熱が感じられるのは、胸でも顔でもない。脚だった。
ももの内側に、ほんのりとした暖かさが感じられる。
とすると。
悪趣味だ、とシラは思った。
だがその後がさらに悪趣味だ、と思わずにはいられなかった。
わざわざ場所を確認してるんだわ。そうとしか思えなかった。何故なら。
!
いきなり感覚が額まで走った。
相手は的確に、そこを掴んだのだ。
それまでじっとしていたシラの身体が急に動き出す。
止めておけないのだ。軽く背中が反る。あごが軽く上を向く。
くすくすくす。
その場所を、相手はずいぶん念入りにいじりまわす。
慣れている手だった。
何故慣れているか、なんてシラは知らない。
だけど、こんなにしなやかに、強くゆるく、を念入りにするのは、手慣れているに決まっている!
こんなに自分の身体と頭がばらばらになったしまった気がするのは初めてだった。相変わらず、頭はどんどん冷静に、事態を知ろうとする。だけど身体は勝手に感じている。
何を言っているのか自分でも判らない声が喉からあふれる。
ざわり。別の手がその下へ伸びてくる。ひとしきりそちらもいじくりまわしているよう。
くすくすくす。
それまで自由になっていた口を誰がが塞いだ。
そして、シラは次の瞬間、喉の奥で叫んだ。
*
「……痛かった」
「痛かったですか?」
「痛かったわよ」
そう言えばそうかもしれませんね、などと相棒はいけしゃあしゃあと言う。
「あんたねえ……」
「何ですか?」
嵐が過ぎ去って少ししてから、ナギが小さな声で大丈夫か、とシラに問いかけてきた。その答えが先のものである。
「……あんた知ってたの? こういうことが起こるって」
「……聞いただけでしたけれどね」
「聞いたって……」
シラはぴょん、と身体を起こすと、横にくしゃくしゃにされたままの毛布を身体に巻いて立ち上がった。
窓寄りのベッドに上半身を起こした相棒は、さらけ出されたままの胸を隠そうともせずに、ひざに両のひじを立てていた。
「ここへ来る前に付けられていた家庭教師の一人がこういう所の出身の女性だったんで、高等科に中途編入するなら気をつけなさいって言われてましたし」
その割には落ちつきすぎだ、とシラは思う。
「あんた何されたの?」
「まあ…… あなたとそう変わらないんじゃないですか?」
「具体的に言ってよ、何がどうなったか」
彼女は肩をすくめる。
「変な人ですね。そんなこと聞きたがるなんて」
「あんた程じゃないわ。言ってよ」
はいはい、と言ってナギも毛布を巻くと、ベッドから降りた。そして替えられたばかりのジュータンの上にぺたんと腰をおろす。シラもつられて、その場に座り込んだ。
「別に、何てことはないですよ。全身点検されて、突っ込まれただけでしょう。暇ですねえ。まあ他愛ない『裏』新入生歓迎行事でしょうね」
「……他愛ない…… だけってね、あんた……」
「あ、そうですね…… あなたそういうこと今までなかったんですよね……だったら言っておいた方が良かったかな……」
ナギはぱさぱさと目の当たりに落ちてくる髪をかき上げながら、何気なく言う。昼と違って解かれている後ろ側の髪が何処ともなく彼女の身体にまとわりついている。
「あんたはそうじゃないって言うの?」
「あれ、あなた私を何だと思ってたんですか?」
意外そうな声を立てる。
「何って……」
「だってあなた、私が『人形』だって知ってはいたんでしょう?」
それは知っていた。可能性として、父親のものという意味でも。
「知ってたわ」
シラはやや顔をしかめる。
「だったらそういうことが全くないなんてこと、ある訳ないじゃないですか?」
「確かにそうだけど」
何となく、忘れていたのだ。
「何かあんた、そういう感じしないから……」
「見た目じゃあ人なんて判りませんよ」
ぎくり、とシラは心臓が掴まれる気がする。
「現にあなただってそうでしょう? そぉんな可愛らしい外見しておきながら、結構中身は物騒じゃあないですか」
「……あんたに言われたくはないわ」
「どっちを? 可愛い? 物騒?」
くすくす、と笑い声が聞こえる。自分はこいつにからかわれているな、とシラは気付いた。
「どっちもよ!」
ぱっと口が手で塞がれる。手はややひんやりとしていた。どうやら声が大きかったらしい。
ナギはもう片方の手を、もう少しこっちに来て、とシラの首に回した。
確かに近付いた方が、内緒話はしやすい。だが、両手を動かしたせいか、ナギを覆っていた毛布はするりとそのまま床に落ちた。
カーテンの布越しに入り込んでくる月の光のせいで、ナギの身体の線は、あますところなくシラの視界に入ってくる。浴室などでも見慣れたはずなのに、どうしてそういう時とは印象がまるで違うのだろう?
それまで毛布に絡まっていた髪は、そのまま身体にまとわりつく。シラは口を塞いでいる手をゆっくりとはがした。冷たい手だ。
「……あんた寒くないの?」
「あなた寒いですか?」
「あたしが聞いているのよ」
「寒くないですよ」
「嘘」
「嘘じゃないですよ」
「手が冷たいじゃない」
「体温が低いんですよ」
ほら、とナギはシラの手を取って自分の胸に当てさせる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!
虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん><
面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた
立風館幻夢/夜野一海
ファンタジー
世界を研究する「普通」の女子大学院生、「猪飼瑠璃(いかいるり)」、彼女は異世界人と友達になることを夢見て、日々研究に勤しんでいた。
ある日、いつものように大学院に向かっている最中、大地震に巻き込まれる。
……揺れが収まり、辺りを見ると、得体のしれないモンスターと猫獣人が現れた!?
あたふたしているうちに、瑠璃はダンジョンの中へと迷い込んでしまう。
その中で、エルフの少女、吸血鬼の少女、サキュバスの女性、ドワーフの男性と出会い、彼らとパーティを組むことになり……。
※男性キャラも数人登場しますが、主人公及びヒロインに恋愛感情はありません。
※小説家になろう、カクヨムでも更新中
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
ファンタジー
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる