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136 妹、再び帝都来襲⑦
その電話が鳴った。
テンダーが取ると、ホテルの総合受付からだった。
相手はヒドゥンだった。
部屋ではなく下のロビーに降りてきて欲しい、とことだった。
ずいぶん早いな、と思いつつテンダーはアンジーには「そのうち客室メイドが来る」と言って外に出た。
*
「びっくりした…… 凄く早いですね」
「そらまあ、キミが困っている元凶の一人だし、まあ俺としても怪物の姿を見ておきたいなあと」
後半がなかなか酷いな、と思いつつもテンダーは苦笑に留めた。実際自分でもそう思っていたのだ。
「ところでこちらは?」
彼は自分一人だけでなく、何やら荷物を持った者を男女一人ずつ連れていた。
内密な話がしたい、と彼が言うと、こちらへどうぞ、とホテルの総合世話係が小部屋に案内してくれた。
「こっちの一人はうちのスタッフ。それでこっちは、医者」
「自分は劇団で衣装や化粧を担当しているタンダ・バールクです。あ、テンダー嬢の一般向けの服、大好きです!」
「俺は劇団とは腐れ縁のさすらいの医者のイル・ファンだ」
前者はともかく、後者の自己紹介にテンダーはどう返していいか固まった。
ヒドゥンは動じず話を進める。
「伝え聞きで何だけど、ちょっと思うことがあってなあ。キミの妹、キミが出てった時はまだ細かったんだよな?」
「ええ、本当に可愛らしかったんですよ。外見に関しては私から見ても」
「だったら四~五年でもの凄く膨れたってこと?」
「その辺りまでは」
「二人子供が居るんだよな。一人が四つ、一人が二つ。……どう思う?」
彼はイル・ファン医師に問いかけた。
「あー…… 細くて華奢で可愛かったのが、とんでもなく膨れた、それが四年以内、妊娠二回、か。考えつく要素はあるなあ。実際言動を見ないと結論は出せんが推測はできる」
「推測」
「できるだけ早く、膨れた妹氏の経過を知ってそうな人物に話を聞きたい」
分かりました、とテンダーは室内電話から再び総合世話係を呼んだ。
「うちの工房に電報を。二人が訪ねてきたらすぐにこちらに来る様にと」
承りました、と一礼して出ていく係に、ファン医師は感心する。
「すげえなあ、さすがこういうホテルは違うわ」
「先生には無理ですよー」
あはは、とタンダは大口を開けて笑った。
「そうかあ?」
「そーですよ。たまに良いホテルが宿舎になった時でも、何かいつもベッドでなくカウチで寝てるじゃないですかー」
「……」
ファン医師は口を歪めて黙った。
「それで先生、その予想はどぉなの?」
ヒドゥンは問いかける。
「あー…… そうだな、テンダー嬢、確か、自分のガキのおやつを、椅子に縛られたままでも嗅ぎつけて欲しい欲しいとやってたんだよな?」
「あ、はい……」
「そいつぁ病気だ」
「病気?!」
「そう、ここのな」
そう言ってファン医師は頭を人差し指で示した。
「おかしくなったって…… ことですか?」
「ひらたく言や、そういうことだ。まあな、原因が分からんと何とも言えねえが、まずその様子だけでも傍から見ておかしいと思わねえか?」
「思いはしましたが、妹は元々人のものを異様に欲しがる癖がありまして」
「でもそれはあんたに限定されてたんだろ? ところが今回はガキのそれだ。金持ちだってのに、ガキのメシやおやつまで自分が食いたいってのは今までのあんたの知ってた妹と違うだろ? って言うか、あんたはどっか見慣れてしまっていて麻痺してるが、初見でそれだったら――」
確かに。
工房の同僚もポーレすら、さすがにあの様子には唖然としていた。
ポーレはこう叫んでいた。
「そうやって坊ちゃんの普段の食事やおやつも食い尽くしていたんですね!」
母親のすることじゃない、と彼女は甥をかばう様にしながら再び声を荒げていた。
「あと、二人子供を産んでるってのが気になる」
「出産が?」
テンダーが取ると、ホテルの総合受付からだった。
相手はヒドゥンだった。
部屋ではなく下のロビーに降りてきて欲しい、とことだった。
ずいぶん早いな、と思いつつテンダーはアンジーには「そのうち客室メイドが来る」と言って外に出た。
*
「びっくりした…… 凄く早いですね」
「そらまあ、キミが困っている元凶の一人だし、まあ俺としても怪物の姿を見ておきたいなあと」
後半がなかなか酷いな、と思いつつもテンダーは苦笑に留めた。実際自分でもそう思っていたのだ。
「ところでこちらは?」
彼は自分一人だけでなく、何やら荷物を持った者を男女一人ずつ連れていた。
内密な話がしたい、と彼が言うと、こちらへどうぞ、とホテルの総合世話係が小部屋に案内してくれた。
「こっちの一人はうちのスタッフ。それでこっちは、医者」
「自分は劇団で衣装や化粧を担当しているタンダ・バールクです。あ、テンダー嬢の一般向けの服、大好きです!」
「俺は劇団とは腐れ縁のさすらいの医者のイル・ファンだ」
前者はともかく、後者の自己紹介にテンダーはどう返していいか固まった。
ヒドゥンは動じず話を進める。
「伝え聞きで何だけど、ちょっと思うことがあってなあ。キミの妹、キミが出てった時はまだ細かったんだよな?」
「ええ、本当に可愛らしかったんですよ。外見に関しては私から見ても」
「だったら四~五年でもの凄く膨れたってこと?」
「その辺りまでは」
「二人子供が居るんだよな。一人が四つ、一人が二つ。……どう思う?」
彼はイル・ファン医師に問いかけた。
「あー…… 細くて華奢で可愛かったのが、とんでもなく膨れた、それが四年以内、妊娠二回、か。考えつく要素はあるなあ。実際言動を見ないと結論は出せんが推測はできる」
「推測」
「できるだけ早く、膨れた妹氏の経過を知ってそうな人物に話を聞きたい」
分かりました、とテンダーは室内電話から再び総合世話係を呼んだ。
「うちの工房に電報を。二人が訪ねてきたらすぐにこちらに来る様にと」
承りました、と一礼して出ていく係に、ファン医師は感心する。
「すげえなあ、さすがこういうホテルは違うわ」
「先生には無理ですよー」
あはは、とタンダは大口を開けて笑った。
「そうかあ?」
「そーですよ。たまに良いホテルが宿舎になった時でも、何かいつもベッドでなくカウチで寝てるじゃないですかー」
「……」
ファン医師は口を歪めて黙った。
「それで先生、その予想はどぉなの?」
ヒドゥンは問いかける。
「あー…… そうだな、テンダー嬢、確か、自分のガキのおやつを、椅子に縛られたままでも嗅ぎつけて欲しい欲しいとやってたんだよな?」
「あ、はい……」
「そいつぁ病気だ」
「病気?!」
「そう、ここのな」
そう言ってファン医師は頭を人差し指で示した。
「おかしくなったって…… ことですか?」
「ひらたく言や、そういうことだ。まあな、原因が分からんと何とも言えねえが、まずその様子だけでも傍から見ておかしいと思わねえか?」
「思いはしましたが、妹は元々人のものを異様に欲しがる癖がありまして」
「でもそれはあんたに限定されてたんだろ? ところが今回はガキのそれだ。金持ちだってのに、ガキのメシやおやつまで自分が食いたいってのは今までのあんたの知ってた妹と違うだろ? って言うか、あんたはどっか見慣れてしまっていて麻痺してるが、初見でそれだったら――」
確かに。
工房の同僚もポーレすら、さすがにあの様子には唖然としていた。
ポーレはこう叫んでいた。
「そうやって坊ちゃんの普段の食事やおやつも食い尽くしていたんですね!」
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「あと、二人子供を産んでるってのが気になる」
「出産が?」
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※3/6~ プチ改稿中