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169 発表会の準備②場所とモデルを頼もう
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大まかな日程が決まったら、場所の確保。
テンダーはエンジュに電報を打って編集部の方へと向かった。
「どうしたの貴女から!」
「123」で待ち合わせということが殆どな彼女にエンジュは驚いた。
「実はうちの服の新作発表会を来年の三月に『123』でやりたいの。そこで貴女に会場の予約をお願いしたくって」
「貴女の工房の新作発表会? どういうこと?」
さすがにエンジュも問い返し、とりあえず応接室にテンダーを通した。
応接室に――いや、編集部自体に入ることは滅多に無いのだが、壁にはそれまでの地方取材で入手した様々なものが展示されている。
テンダーの目を引いたのはやはり布地だった。
南西辺境領特有の粗い織りの絹や綿に美しい染めがされているもの。
「あら、キリューテリャから送られたりしていない?」
「考えてはいるんだけど、布の存在感が大きくて…… いや、今日はそっちに話を脱線させてはいけないんだわ。そう、服の発表会。舞台で服をただ着て見せるだけの」
「今までも結構着て街中ふらつかせてたわね。つまり、それを見世物という形にするということ? 何故?」
「『123』で確かにお客のお嬢さん方ご婦人方はうちの子達をちらちらは見るけれど、じっくりは見られないじゃない。さすがに」
「まあ確かに、それはちょっと失礼かも」
「だから演劇の舞台の様に一つの娯楽として形を作れば、色んな服をじっくり見て楽しんだり、これと決めて注文もできるんじゃないかと思って」
「舞台ねえ。ふうん。アイデアの出所は、あのひとよね?」
「ええそうよ。でも大概ヒドゥンさんは、私がぼんやり思っていることを何となく捉えて、こうじゃないか、って示してくれるだけよ」
ふうん、とエンジュは両眉を上げた。
「まあいいわ。三月の―― まあ、うちの雑誌を読んでる様な人々が来やすい日、その前後を貸し切りにすればいいのかしら?」
「お茶席はそれはそれで営業すればいいと思うの―― いえ、その日何か注文すれば、展示会が見られる、そのくらいで」
「そうなると、テンダー貴女、かなり持ち出しになるんじゃない? 一日の貸出料はまあそれなりだけど、舞台みたいにするには、機材とかも必要でしょ?」
「ええ。それはそう。でもそれでも一度やっておきたい、と思ったのよ」
服の宣伝に、周囲の人々を使って外を歩かせることはしてきた。
だけどそれでは必ずしも「テンダー嬢の工房」のものであるかどうかは分からないこともある。
「友」や「画報」を見た人が注文することも無くはない。
だが帝都の女性の中の何割がそうなのか? と問われると。
「お茶一杯で見てくれて、もしかしたらそれまで自分でしか作ったことが無いひとが頼んでみたい、と思ってくれたら御の字だわ」
「失敗したら?」
「そこは計算する」
テンダーは言い切る。
ふう、とエンジュは苦笑し。
「成る程。それじゃ、私がするのは『123』を劇団同様の料金で三月のある三日間貸すことと、発表会の記事を特集することかしら?」
「もう一つ」
テンダーは切り出す。
*
「舞台で服を見せるだけ?!」
次に出向いたヘリテージュのサロンで、マリナやリューラといった女優は何のことやら、と首を傾げた。
「活人画みたいなもの?」
何ですかそれは、とテンダーが問うと。
「学校の頃習った演劇史の中に出てきたんだけど、舞台や屋台の上とかで有名な絵の再現とか、背景を付けて何かしらのポーズを取ってじっとしている姿を見せるっていうの、かしら?」
マリナは記憶がややあやふやになっているのか、最後を疑問形で終え、他の女優達に振った。
「まあそんな感じ…… だったかしら……」
「うーん、あれよ。写真撮る時にポーズつけるじゃない。あれにも似た感じ?」
「ああ、それだと微妙に違うかしら。動いては欲しいの」
「動く」
「舞台の花道があるでしょう? そこを堂々と歩いて、服をお客様にじっくり見せつけて欲しいの」
「見せつける、ね」
マリナはふふん、と笑った。
「確かにそれは私達の十八番ね」
テンダーはエンジュに電報を打って編集部の方へと向かった。
「どうしたの貴女から!」
「123」で待ち合わせということが殆どな彼女にエンジュは驚いた。
「実はうちの服の新作発表会を来年の三月に『123』でやりたいの。そこで貴女に会場の予約をお願いしたくって」
「貴女の工房の新作発表会? どういうこと?」
さすがにエンジュも問い返し、とりあえず応接室にテンダーを通した。
応接室に――いや、編集部自体に入ることは滅多に無いのだが、壁にはそれまでの地方取材で入手した様々なものが展示されている。
テンダーの目を引いたのはやはり布地だった。
南西辺境領特有の粗い織りの絹や綿に美しい染めがされているもの。
「あら、キリューテリャから送られたりしていない?」
「考えてはいるんだけど、布の存在感が大きくて…… いや、今日はそっちに話を脱線させてはいけないんだわ。そう、服の発表会。舞台で服をただ着て見せるだけの」
「今までも結構着て街中ふらつかせてたわね。つまり、それを見世物という形にするということ? 何故?」
「『123』で確かにお客のお嬢さん方ご婦人方はうちの子達をちらちらは見るけれど、じっくりは見られないじゃない。さすがに」
「まあ確かに、それはちょっと失礼かも」
「だから演劇の舞台の様に一つの娯楽として形を作れば、色んな服をじっくり見て楽しんだり、これと決めて注文もできるんじゃないかと思って」
「舞台ねえ。ふうん。アイデアの出所は、あのひとよね?」
「ええそうよ。でも大概ヒドゥンさんは、私がぼんやり思っていることを何となく捉えて、こうじゃないか、って示してくれるだけよ」
ふうん、とエンジュは両眉を上げた。
「まあいいわ。三月の―― まあ、うちの雑誌を読んでる様な人々が来やすい日、その前後を貸し切りにすればいいのかしら?」
「お茶席はそれはそれで営業すればいいと思うの―― いえ、その日何か注文すれば、展示会が見られる、そのくらいで」
「そうなると、テンダー貴女、かなり持ち出しになるんじゃない? 一日の貸出料はまあそれなりだけど、舞台みたいにするには、機材とかも必要でしょ?」
「ええ。それはそう。でもそれでも一度やっておきたい、と思ったのよ」
服の宣伝に、周囲の人々を使って外を歩かせることはしてきた。
だけどそれでは必ずしも「テンダー嬢の工房」のものであるかどうかは分からないこともある。
「友」や「画報」を見た人が注文することも無くはない。
だが帝都の女性の中の何割がそうなのか? と問われると。
「お茶一杯で見てくれて、もしかしたらそれまで自分でしか作ったことが無いひとが頼んでみたい、と思ってくれたら御の字だわ」
「失敗したら?」
「そこは計算する」
テンダーは言い切る。
ふう、とエンジュは苦笑し。
「成る程。それじゃ、私がするのは『123』を劇団同様の料金で三月のある三日間貸すことと、発表会の記事を特集することかしら?」
「もう一つ」
テンダーは切り出す。
*
「舞台で服を見せるだけ?!」
次に出向いたヘリテージュのサロンで、マリナやリューラといった女優は何のことやら、と首を傾げた。
「活人画みたいなもの?」
何ですかそれは、とテンダーが問うと。
「学校の頃習った演劇史の中に出てきたんだけど、舞台や屋台の上とかで有名な絵の再現とか、背景を付けて何かしらのポーズを取ってじっとしている姿を見せるっていうの、かしら?」
マリナは記憶がややあやふやになっているのか、最後を疑問形で終え、他の女優達に振った。
「まあそんな感じ…… だったかしら……」
「うーん、あれよ。写真撮る時にポーズつけるじゃない。あれにも似た感じ?」
「ああ、それだと微妙に違うかしら。動いては欲しいの」
「動く」
「舞台の花道があるでしょう? そこを堂々と歩いて、服をお客様にじっくり見せつけて欲しいの」
「見せつける、ね」
マリナはふふん、と笑った。
「確かにそれは私達の十八番ね」
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