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3.「クラブ」の集まりに参加している五人についてのデータ
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その「クラブ」/有閑青年達の集まりに参加している五人についてのデータは、キムに説明された時点で、既にGの手元にあった。そしてカーチバーグに来るまでに、ある程度までは彼も事前に頭に叩き込んでいる。
それによると、彼らは現在休暇中の、名門ヨハン・ジギスムント大学の同期生なのだという。
学部学科は違うが、もともと入学者数がさほど多くないその名門校では、どんな専攻であれ、同期はだいたい互いに把握するものらしい。
自分の居たはずの帝立大学とは大違いだ。
Gは苦笑する。さほど長い期間居た訳ではないが、あの学校の規模は異常な程だった。
だがそれだけに、彼一人姿を消そうと、大して問題にされないという風潮もある。果たしてどちらが良いのやら。
尤も同期生と言っても、彼らはやや年齢は違っているようだった。
どうやらあの中で一番年上なのは、やや皮肉屋を装っているセバスチャンという青年である。少なくともデータはそう説明していた。入学年に、一般的な年齢より二年のギャップがある。他の大学に居たのだろうか、と彼は推測する。
そして一番年下なのは、あの少女めいた雰囲気を持つユーリで、彼は下の学校で飛び級していたらしく、現在まだ二十歳になっていないのだという。確かにあの線の細さも納得できた。
マーティンとマーチャスは、基本の学年の年齢だった。ジョナサンはそれより一つ下らしい。そしてその中のリーダーシップはマーティンが取っているようだった。
そしてこれはあくまでGの第一印象だが―――
たかが五人だが、その中でもなかなかと人間関係は入り乱れているようだった。
まずぱっと見、マーティンとジョナサン、マーチャスとユーリは仲が良い、と彼は感じた。
セバスチャンはそのグループに一応は属してはいながらも、ある程度人と距離を置こうとしているように見える。
そしてその仲の良さでも、やや質が異なっているように彼には思える。
マーティンとジョナサンのそれは、上下関係に近い。Gはそれに対して、将軍と参謀のようだ、と自分自身の考察をつけ加えた。
一方のマーチャスとユーリは、保護者と非保護者の関係に見えた。
まあそれは見た目のせいだけかもしれない。ユーリは少女を思わすようなほっそりとした身体と可愛らしい顔立ちだし、マーチャスは身体も声も大きく、力も強そうである。精神的にどうか、はこれからの観察次第だが。
マーティンは全員に対してある程度のリーダーシップを発揮し、ジョナサンがその参謀、特攻隊長がマーチャスで、後方支援がユーリ、そして外部頭脳がセバスチャン。
そう考えると、実に「バランスの良い五人組」ができ上がるように見える。
本当にそうなのかもしれない。だがそうとは限らない。いや、その中に工作員が隠れている以上、その関係の半分は嘘なのだ。
いずれにせよ、そうであるならそうであるように、そう演じているなら、そう演じている意図は知る必要はある訳である。
そんなことを考えていたら、部屋の中のヴィジホンが鳴った。受信のボタンを押すと、スクリーンには先刻別れた中の一人が居た。やあ、と浮かび上がるマーティンの画像は口を開いた。
「やあ、どうしたんですか」
Gはにこやかな笑みを作って訊ねる。彼はヴィジホンだけでなく、声以外の画像が映る通信機が好きではない。一人で居る時くらいは、気が付くと眉間にしわを寄せてしまうような自分に戻りたくもなるのだ。
だが今回はそうもいかない。あいにく今回の役回りは、「いつもにこにこ穏やかで、少しばかり陰を背負っているかもしれない若きピアニストの卵」なのだ。
キムが聞いたら涙を流して馬鹿笑いしそうな役回りではあるとは思うのだが、伯爵が真顔でそう言ったのだから仕方がない。彼はその役をこなすことに神経を注ぐしかないのだ。
『まだ起きてたねサンド君。良かったらこちらで呑まないか?』
「君と?」
よく見ると、マーティンの顔色はほんのりと赤い。呑まないか、じゃなくて、呑んでるから来ないか、の間違いだろ、とGは内心つぶやく。
『僕じゃあ役不足かい? いやいや僕だけじゃないよ。ここにはジョナサンも居る』
手をひらひらと振って、屈託の無さそうな笑顔が彼を誘った。
『と言うのもだね……』
声と顔が切り替わる。
ジョナサンの顔もまた酔いが入っていた。明らかにテンションの上がった声は、昼間見た時より二度か三度音が上がっている。このままだと、ホーンであろうが何だろうが、延々と喋られてしまいそうな気がしたので、Gはかろうじて笑みを作りながら、待っていてくれ、と返事をした。
通信の内容からして、堅苦しい恰好をすると逆に浮くだろう、とはたやすく予想できたので、Gは普段着の上に軽いジャケットを羽織るだけにして出かけた。
それによると、彼らは現在休暇中の、名門ヨハン・ジギスムント大学の同期生なのだという。
学部学科は違うが、もともと入学者数がさほど多くないその名門校では、どんな専攻であれ、同期はだいたい互いに把握するものらしい。
自分の居たはずの帝立大学とは大違いだ。
Gは苦笑する。さほど長い期間居た訳ではないが、あの学校の規模は異常な程だった。
だがそれだけに、彼一人姿を消そうと、大して問題にされないという風潮もある。果たしてどちらが良いのやら。
尤も同期生と言っても、彼らはやや年齢は違っているようだった。
どうやらあの中で一番年上なのは、やや皮肉屋を装っているセバスチャンという青年である。少なくともデータはそう説明していた。入学年に、一般的な年齢より二年のギャップがある。他の大学に居たのだろうか、と彼は推測する。
そして一番年下なのは、あの少女めいた雰囲気を持つユーリで、彼は下の学校で飛び級していたらしく、現在まだ二十歳になっていないのだという。確かにあの線の細さも納得できた。
マーティンとマーチャスは、基本の学年の年齢だった。ジョナサンはそれより一つ下らしい。そしてその中のリーダーシップはマーティンが取っているようだった。
そしてこれはあくまでGの第一印象だが―――
たかが五人だが、その中でもなかなかと人間関係は入り乱れているようだった。
まずぱっと見、マーティンとジョナサン、マーチャスとユーリは仲が良い、と彼は感じた。
セバスチャンはそのグループに一応は属してはいながらも、ある程度人と距離を置こうとしているように見える。
そしてその仲の良さでも、やや質が異なっているように彼には思える。
マーティンとジョナサンのそれは、上下関係に近い。Gはそれに対して、将軍と参謀のようだ、と自分自身の考察をつけ加えた。
一方のマーチャスとユーリは、保護者と非保護者の関係に見えた。
まあそれは見た目のせいだけかもしれない。ユーリは少女を思わすようなほっそりとした身体と可愛らしい顔立ちだし、マーチャスは身体も声も大きく、力も強そうである。精神的にどうか、はこれからの観察次第だが。
マーティンは全員に対してある程度のリーダーシップを発揮し、ジョナサンがその参謀、特攻隊長がマーチャスで、後方支援がユーリ、そして外部頭脳がセバスチャン。
そう考えると、実に「バランスの良い五人組」ができ上がるように見える。
本当にそうなのかもしれない。だがそうとは限らない。いや、その中に工作員が隠れている以上、その関係の半分は嘘なのだ。
いずれにせよ、そうであるならそうであるように、そう演じているなら、そう演じている意図は知る必要はある訳である。
そんなことを考えていたら、部屋の中のヴィジホンが鳴った。受信のボタンを押すと、スクリーンには先刻別れた中の一人が居た。やあ、と浮かび上がるマーティンの画像は口を開いた。
「やあ、どうしたんですか」
Gはにこやかな笑みを作って訊ねる。彼はヴィジホンだけでなく、声以外の画像が映る通信機が好きではない。一人で居る時くらいは、気が付くと眉間にしわを寄せてしまうような自分に戻りたくもなるのだ。
だが今回はそうもいかない。あいにく今回の役回りは、「いつもにこにこ穏やかで、少しばかり陰を背負っているかもしれない若きピアニストの卵」なのだ。
キムが聞いたら涙を流して馬鹿笑いしそうな役回りではあるとは思うのだが、伯爵が真顔でそう言ったのだから仕方がない。彼はその役をこなすことに神経を注ぐしかないのだ。
『まだ起きてたねサンド君。良かったらこちらで呑まないか?』
「君と?」
よく見ると、マーティンの顔色はほんのりと赤い。呑まないか、じゃなくて、呑んでるから来ないか、の間違いだろ、とGは内心つぶやく。
『僕じゃあ役不足かい? いやいや僕だけじゃないよ。ここにはジョナサンも居る』
手をひらひらと振って、屈託の無さそうな笑顔が彼を誘った。
『と言うのもだね……』
声と顔が切り替わる。
ジョナサンの顔もまた酔いが入っていた。明らかにテンションの上がった声は、昼間見た時より二度か三度音が上がっている。このままだと、ホーンであろうが何だろうが、延々と喋られてしまいそうな気がしたので、Gはかろうじて笑みを作りながら、待っていてくれ、と返事をした。
通信の内容からして、堅苦しい恰好をすると逆に浮くだろう、とはたやすく予想できたので、Gは普段着の上に軽いジャケットを羽織るだけにして出かけた。
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