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十三章
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同じ日、朝比奈は川瀬刑事を伴って名古屋市の西部、長久手市と隣接する名東区にあるDNA情報解析センターを訪れていた。近年、今回のような財産分与に関する親子鑑定は勿論、科学の急速な進歩により巨悪な犯罪の重要な手掛かりになったり、昔では考えられなかった皇族の血縁関係まで解析しようとの意見で盛り上がったりもしている。技術革新により、今は3万円程で親子の鑑定ができると受注も増え新たにこうして専門的な解析センターが設立されたのであった。以前、川瀬刑事も新宮司社長の孫であることを確認する為にこのDNA情報解析センターを訪れた経験があった。
「すみません、予約をしていた朝比奈と申しますが、どちらに伺えばいいでしょう」
受付の女性に声を掛けた。
「朝比奈様ですね。ご案内いたします」
リストを確認した女性が立ち上がると先導して応接室まで2人を案内した。
「阿部と申します。よろしくお願いします」
背が高く面長でメガネを掛けた男性が2人を迎え入れると名刺を差し出した。
「こちらこそ無理を言って申し訳ありません」
朝比奈は名刺を受け取ると頭を下げた。
「朝比奈先生には色々とお世話になっていますが、今日はどのようなお話なのでしょうか」
阿部は2人に席を進めて尋ねた。
「早速ですが、親子鑑定の検査方法について説明していただけないでしょうか。ああっ、全く知識がないものですから、できれば初心者レベルでお願いします」
朝比奈はポケットからノートとボールペンを取り出した。
「分かりました。DNA親子鑑定とは、DNAを構成している塩基の配列パターン、いわゆるDNA型を調べることにより、検査対象の男性と子との間に血縁的な父子関係が存在するかどうかを科学的根拠に基づき分析する方法です」
「実際にはどのように行うのですか」
「まず、DNAは人間の体を形作る細胞の全てに存在し、親から子、子から孫へと受け継がれます。子には生物学上の父と母から必ず2分の1ずつDNAが受け継がれることから、検査対象の男性と子の間に生物学上の父子の関係が存在していなければ、子として検査した検体からはDNAローカスにて父由来と考えられるDNA型が検出されず、対して父子の関係が存在していればDNAが一致するということです。こうして、20ヶ所以上のDNAローカスのDNA型を分析し、人種別データベースに基づく各DNA出現頻度及び統計学的一致度合いを求め、父権肯定確立が算出されます。父子関係肯定の場合、父権肯定確率は99.999%相当にて、否定の場合は0%にて算出されます」
「99.999%か0%ですか」
書き込む手を止めて朝比奈が尋ねた。
「まぁ、突然変異が確認された場合や、父と疑わしい男性同士が近親者である場合でも、それらの可能性を十分に考慮された上で、99%以上または0%の父権肯定確率を保証しています」
「科学の進歩はすごいですね。それでは検査の手順について説明していただけますか」
「先ずはインターネットかお電話にて申し込んでいただきます。15時までのお申し込みでしたら当日、15時以降でしたら翌日に当センターから検体採取キットを配送いたします。ご要望がない限り白犬ヤマタにて配送先住所へお届けとなります」
「検査キットの利用方法はどうなっていますか」
「当然取り扱い等の説明書を同封してありますので、その指示に従って通常は医療用の綿棒で頬の内側を擦るだけの簡単な口腔内粘膜の採取です。その2つの検体と必要書類を封筒に入れて、当センターに返送していただき解析をします」
「解析期間はどれほどでしょう」
「結果は、センターに検体が届いてから約2週間程で郵送か電子メールにて行っています」
「申し訳ありませんが、昭和製薬の神宮司社長の親子鑑定の場合もそのキットで解析されたのでしょうか」
川瀬刑事の顔を見てから朝比奈が尋ねた。
「あの、今日はそのことを調べる為におこしになったのですか」
警戒の表情を浮かべた。
「はい、教えていただければ助かります」
反対に朝比奈の表情からは、全く緊張感が読み取れなかった。
「申し訳ありませんが、例え朝比奈麗子先生からの依頼としても、一応守秘義務がありますので、依頼者の許可なく結果を教えることはできません」
困惑の表情で返した。
「阿部さんは、実際に担当されていらっしゃらないので、ご存じなかったかもしれませんが、こちらの川瀬さんは苗字は違いますが、神宮司社長のお孫さんなのです」
朝比奈がそう言うと、川瀬は胸の内ポケットから一枚の用紙を取り出して広げてみせた。
「家族の方であっても、依頼者ではありませんので申し訳ありませんが、お教えすることはできません」
あくまでも形式に則って模範的な答えであった。
「それでは、もう1つ報告しておきますが、実は川瀬さんは愛知県警捜査一課の刑事なんです。そして、ある殺人事件の捜査をされているのです」
左手で示した。
「えっ、まさか、神宮司社長の親子鑑定が、その事件に関係しているのですか」
今度は驚いて目を大きく開いた。
「はい、連続殺人事件の動機に関わっている可能性が高いと、この川瀬刑事が地道な捜査で突き止めたのです」
横を向き顔を傾け同意を求め、川瀬が少し動揺しながらも頷いた。
「わっ、分かりました。しばらくお待ちください」
阿部はそう言い残して慌てて部屋を出た。そして、しばらくして2人の男性を連れて戻ってきた。
「こちらが、神宮司社長の親子鑑定をした担当者の菅と、センター責任者の岸田です」
阿部の紹介に従ってそれぞれ頭を下げて2人の前に腰を下ろした。
「この度は無理を言って申し訳ありません。早速ですが、持ち込まれた2つの検体の鑑定結果はどうだったのでしょう」
朝比奈は菅に話し掛けた。
「はい、神宮司様の鑑定結果は・・・・・・」
菅は岸田と目を合わせた。
「肯定された。それで、その確率はどうだったのでしょう」
「あっ、はい、99.3%の確率で肯定されました」
鑑定結果の書類を朝比奈に差し出した。
「99.3%ですか・・・・・菅さんが解析されたのですよね。その解析はお1人でされるのですか」
書類に目を通しながら尋ねた。
「解析の全行程を1人で責任をもって行いますが、勿論ダブルチェックいえ当センターではトリプルチェックを行っています」
「それでは、沢山の検体が送られていつしか間違えられたり、この書類を偽造することは99%不可能ということですか」
書類を広げて尋ねた。
「99%ではなく、99.999%ありえません。そもそも、刑事事件では犯人を断定することに利用されますし、親子鑑定では財産分与に関わっていますので、絶対に間違う訳にはいきません」
今度は岸田が大きな声で返答した。
「疑っている訳ではありませんが、山友学園の土地売買で国有地が払い下げた時には、総理大臣が何度もそんなことはありえない。そんなことがあれば、総理大臣も国会議員も辞職すると断言されたのですが、実際は公文書が書き換えられていましたよね。絶対なんて本当にあるのでしょうかね」
「それは・・・・・・」
「あっ、すみません。比較する問題ではなかったですね。それでは、2人の検体は阿部さんが言われたように検査キットで解析されたのですか。他の検査方法もあるのですか」
「いえ、他にも方法はあります。例えば、毛根付きの体毛、爪、へその緒、タバコの吸殻、髭剃りカスなどもあります。そして、神宮司社長のように血液での解析を希望される方も勿論いらっしゃいます」
菅が説明した。
「まぁ、親から受け継いだとはいえ、一代で巨大な製薬会社を作り上げた昭和初期のワンマン社長ですから、血液型を含め厳密に調べあげたいと考えたのでしょうね」
「一応、親子鑑定においては、血液でも検査キットによるものでも解析の確率性に差はないと説明させていただいたのですが、どうもご理解いただけなくて結果的に血液での解析となりました」
「それでは、このセンター内で2人が揃って血液を採取されたのですか」
「神宮司社長には、このセンターのご案内と親子鑑定の説明の後に、血液を採取させていただいたのですが、もう1つの検体はその人が医療関係者とのことで、代理の弁護士が持参されました。まぁ、それも異例のことですので、間違えることは絶対にありえません」
自信を持って答えた。
「代理の弁護士・・・・その弁護士の苗字は、新庄ではありませんか」
「あっ、そうです、新庄弁護士でした」
書類に目を通して答えた。
「その新庄弁護士が先日亡くなりました」
川瀬刑事が付け加えた。
「えっ、まさか、そんな、本当ですか。ニュースではそんな事件は報告されてはいませんよね」
岸田が声を発すると3人とも驚いた表情で川瀬を見た。
「それは、当初は自殺と判断されたのですが、他殺の可能性もあると捜査し直していているところなのです。ですから、詳しい発表を控えているところです」
川瀬がその表情に応えた。
「しかし、その事件に神宮司社長の親子鑑定が関係しているのですか」
3人が顔を合わせた後、今度は菅が尋ねた。
「何しろ数百億の資産家ですので、突然そんな人間の息子だと分かれば、その人や関係者の中には人格も変えてしまう、金の力は恐ろしいですからね。まぁ、中には、そんな金なんて要らないなんていう変人達もいますけどね」
朝比奈は横を向いて川瀬を見た。
「あの、まさか我々が誰かに命じられて、親子鑑定の解析書類を偽造したと疑っていらっしゃるのではないですよね」
少し緊張して岸田が尋ねた。
「いえ、そんなことは99.999%考えていません。ただ、参考として親子鑑定のシステムについて知りたかっただけです。今日は大変参考になりました」
朝比奈は立ち上がって頭を下げると部屋を後にした。
「あの、ちょっと聞いていいですか」
車の助手席に腰を下ろして川瀬が言葉を掛けた。
「何ですか」
シートベルトを閉めるとナビをセットした。
「本当は、親子鑑定の解析の偽造を疑っていたんじゃないですか」
朝比奈の言動や性格やを少しは知っている川瀬の言葉だった。
「分かっちゃいました。ここに来るまでは、それもあるかなと思っていました。でも、姉から聞いていたセンターの人間関係や、解析が1人ではなく2人以上の人間で行われていると聞いて、鑑定書の偽造はされていないと確信しました」
駐車場から出ると東へと向かった。
「確かに、トリプルチェックをしていましたが、絶対に不可能だとは断言できないんじゃないですか」
愛知県警とは逆方向に車を進める朝比奈に言葉を返した。
「もし仮に、犯人が偽装を依頼すれば、1人の口は塞げたとしても3人の口を塞ぐのは相当難しいと思います。」
「確かに、裏切り者が現れる可能性が高くなりますからね」
「もし犯人が逮捕され、解析書の偽装がバレ社員が悪事に加担していたと知れれば、DNA情報解析センターは信用を無くし、存在自体が不可能となるかもしれません。そんな大きなリスクを背負う為には、それに見合うリターンを用意することが必要でしょう。1人なら数億で済みますが、3人となればどこからそんなお金が用意できるのでしょう。昭和製薬の吉川副社長にに聞いたのですが、認知はしても財産分与に関しては、東名医科大学附属病院を辞めて昭和製薬に入社することが条件のようです」
「しかし、いくら条件を出しても、息子として認知さえされれば財産は分与されるのではないですか」
「そう簡単には行かないと思いますよ。戸籍上では別世帯となっていますから、遺留分はあるとしても、遺言状で財産を全て川瀬さんに譲ると残せば、そんなに大きな金額を引き継ぐことは難しくなりますからね。それも、神宮司社長が亡くなった後の遺産ですから、DNA情報解析センターの人間を買収する程のお金があるとは思えません。もしあるとすれば、そもそもこんな事件を起こす必要はないですからね」
「でも、結局確認できたのは、親子鑑定に間違いはなかったということですね」
「まぁ、孫と認知されている川瀬刑事や優子さんのは気になるところでしょうね」
ちらりと横を見た。
「いえ、俺は今の生活で十分満足しています。ただ、妹ができたことは嬉しく思ってはいますけど」
「歳上の変な義理の弟ができて、それも上司ってのも困るよね」
大神の顔を思い浮かべていた。
「いえ、そんなことは・・・・・」
困惑の表情で答えた。
「でも、いくら川瀬さんや優子さんが神宮司社長の云う事を聞かないからって、昭和製薬の跡取りが突然現れて遺産のほとんどを手にするなんて、いくら天使の川瀬さんでも快くは思っていないでしょ。僕なら絶対にとことん調べてみますよ。まずは、DNA情報解析センターでの不正はなかったということですよ」
何故か嬉しそうに微笑んだ。
「DNA情報解析センターでの不正でなければやはり、親子として認められるということですよね」
朝比奈が何を考えているのか分からないでいた。
「川瀬さんも知っているように、僕は根っから疑い深くへそ曲がりな性格ですから、99.999%だと言われれば、残りの0.0001%に関心を持つ方ですからね。まぁ、事件を解決すれば全て分かることですよ」
「証拠も手掛りもないのに事件解決ですか・・・・・ところで、何処へ行くんですか、県警に戻るには反対方向ですよね」
まどの外の景色を見ながら尋ねた。
「付き合わせたお礼にお昼をご馳走しようと思っているんですよ」
「それにしても、ここって瀬戸市ですよね」
「はい、将棋の藤井聡太君で有名なまちです。実は、僕はこの瀬戸市で生まれ育ったんですよ」
そう言うと丘陵地にある大きな駐車場に車を止めた。
「えっ、瀬戸市民公園ですか」
看板に目を移して読み上げた。
「はい、昔は大神と一緒によく利用していました」
車を降りて建物に向かって歩きだした。
「ここで食事ですか」
朝比奈の背中に声を掛けた。
「子供の頃は、小さな喫茶店でしたが、その跡地に信長屋総本家が新しくオープンしたんですよ」
2人は店に入ると窓際の席に腰を下ろした。
「パンを焼くいい匂いがしますね」
川瀬が目を閉じ香りを楽しんでいた。
「店内でパンを焼いていてテイクアウトもできるんですよ。影武者パンと言って見た目は真っ黒なんですが、もちもちでふわふわな食パンがとても有名なんですよ。あっ、それから、お勧めは、味噌カツサンドとふわとろチーズオムレツサンドです。どちらも美味しいですから、1つずつ注文して半分ずつしましょう」
朝比奈は川瀬の意見を聞かずにコーヒーと2つのサンドイッチを注文した。
「ここのモーニングサービスはすごいですよ。飲み物の代金だけでエッグサンドやサラダサンドにホットドックなどのパンが選べ、それにカップスープとゼリーが付くんだ。それはどこの喫茶店でもあるかもしれないけど、この店はきつねうどんや色々なパフェなど17種類もあるんですよ」
朝比奈はメニューを見せながら説明した。
「でも、家からも県警からもちょっと遠いですから・・・・・・」
一応目を通しながら答えた。
「そっ、そうですね」
食事を終え、土産の影武者パンを持って朝比奈が名古屋へ向けてしばらく車を走らせると、東名医科大学付属病院の建物が見えてきた。
「えっ、今度は誰に会うんですか」
何か嫌な予感がしていた。
「土産を持って伺う人物は1人しかいませんよ。連絡もしてあります、さぁ、会いに行きましょう」
朝比奈は大きな紙袋を手に院内へと入り、受付の女性に手を振りいつもの様に澤田優子の待つ部屋へと向かった。
「お邪魔します。まいどー」
優子の姿を見付けて近づいた。
「信長本舗の影武者パンをお持ちしました。真っ黒ですが、これはイカ墨を使っていて、カビている訳ではありませーん」
袋の中を覗き込んだ優子に説明を加えた。
「いつも変わった差し入れを持ってきてくれますね。後で皆んなでいただきます。ありがとうございます」
顔を上げると朝比奈の後ろから川瀬が姿を現した。
「先日は、お世話になりました」
目を合わして川瀬が言葉を掛けた。
「あっ、はい、どうも」
予想していない人物に戸惑っていた。
「えっ、なんか他人行儀ですね。まぁ、仕方ないよね、義弟があの変人上司だから、家に会いに行きづらいよな」
朝比奈は2人の顔を交互に見ながら1人勝手に納得していた。
「崇さんは関係ありません。突然兄が現れて、どう接していいのか戸惑っているだけです」
優子が敢えて反論してみせた。
「ちょっと待ってくださいよ。そんな状態の優子さんが、川瀬さんに何をお世話したのですか」
先程の川瀬の言葉を思い出して尋ねた。
「お世話というか、先日川瀬さんが人間ドックを受けられた時に、丁度私が担当したからです」
優子が右手を左右に振った。
「県警でも暇な部署だから3人揃って受けに来て、たまたま川瀬刑事の担当が優子さんだったのですね」
「あっ、いえ、今年は私1人だけでした」
「他の2人は受けていないのですか」
「これから順次受けるんじゃないですか」
「人間ドック・・・・・・・・・あっ、すみません、ちょっとトイレに行ってきます。優子さん、例の件は先に2人で勧めておいてください」
朝比奈は、2人を残して慌てて部屋を出て行き検査室へと向かう途中で、入院着をまとった神宮司社長の姿に出くわした。朝比奈は写真でその容姿を知っていたが、相手は初対面の為に挨拶を交わすことはなかった。
「すみません、人間ドックの検査についてお聞きしたいのですが、責任者の方をお願いできますか」
朝比奈は事務所の名刺を提出して女性に話し掛けた。
「随分遅かったですね」
戻ってきた朝比奈に、2人だけの気まずさが抜けない川瀬が声を掛けた。
「ちょっと迷ってしまって、それに朝何も食べていないのに、お昼がハードだったから、お腹が痛くなっちゃてね。ああ、そんなことより、話は進んでいるのですか」
話題を変えて尋ねた。
「一応、概要は説明しましたが、これから朝比奈さんを交えて、細部まで詰めようと思っていたところです」
立ったまま腰を下ろさない朝比奈に答えた。
「そうですか。あの、優子さん、依頼していた物は用意していただけましたか」
その話を受けて朝比奈が優子に話を振った。
「ちょっと待ってください」
優子は、立ち上がり自分の机の中から小袋を取り出して朝比奈に差し出した。
「お手数をお掛けしました。早速利用させていただきます。それでは、後はよろしく」
小袋を受け取ると2人に背を向けた。
「えっ、1人で、どこに行くんですか」
川瀬がその背中に問を放った。
「念入りに打合せしてくださいね。大神には言っときますので、打ち合わせ後は久しぶりに兄弟で夕食でもどうですか、まだ決戦までは時間がありそうですから。それじゃ」
振り向かないまま手を振った。
「すみません、予約をしていた朝比奈と申しますが、どちらに伺えばいいでしょう」
受付の女性に声を掛けた。
「朝比奈様ですね。ご案内いたします」
リストを確認した女性が立ち上がると先導して応接室まで2人を案内した。
「阿部と申します。よろしくお願いします」
背が高く面長でメガネを掛けた男性が2人を迎え入れると名刺を差し出した。
「こちらこそ無理を言って申し訳ありません」
朝比奈は名刺を受け取ると頭を下げた。
「朝比奈先生には色々とお世話になっていますが、今日はどのようなお話なのでしょうか」
阿部は2人に席を進めて尋ねた。
「早速ですが、親子鑑定の検査方法について説明していただけないでしょうか。ああっ、全く知識がないものですから、できれば初心者レベルでお願いします」
朝比奈はポケットからノートとボールペンを取り出した。
「分かりました。DNA親子鑑定とは、DNAを構成している塩基の配列パターン、いわゆるDNA型を調べることにより、検査対象の男性と子との間に血縁的な父子関係が存在するかどうかを科学的根拠に基づき分析する方法です」
「実際にはどのように行うのですか」
「まず、DNAは人間の体を形作る細胞の全てに存在し、親から子、子から孫へと受け継がれます。子には生物学上の父と母から必ず2分の1ずつDNAが受け継がれることから、検査対象の男性と子の間に生物学上の父子の関係が存在していなければ、子として検査した検体からはDNAローカスにて父由来と考えられるDNA型が検出されず、対して父子の関係が存在していればDNAが一致するということです。こうして、20ヶ所以上のDNAローカスのDNA型を分析し、人種別データベースに基づく各DNA出現頻度及び統計学的一致度合いを求め、父権肯定確立が算出されます。父子関係肯定の場合、父権肯定確率は99.999%相当にて、否定の場合は0%にて算出されます」
「99.999%か0%ですか」
書き込む手を止めて朝比奈が尋ねた。
「まぁ、突然変異が確認された場合や、父と疑わしい男性同士が近親者である場合でも、それらの可能性を十分に考慮された上で、99%以上または0%の父権肯定確率を保証しています」
「科学の進歩はすごいですね。それでは検査の手順について説明していただけますか」
「先ずはインターネットかお電話にて申し込んでいただきます。15時までのお申し込みでしたら当日、15時以降でしたら翌日に当センターから検体採取キットを配送いたします。ご要望がない限り白犬ヤマタにて配送先住所へお届けとなります」
「検査キットの利用方法はどうなっていますか」
「当然取り扱い等の説明書を同封してありますので、その指示に従って通常は医療用の綿棒で頬の内側を擦るだけの簡単な口腔内粘膜の採取です。その2つの検体と必要書類を封筒に入れて、当センターに返送していただき解析をします」
「解析期間はどれほどでしょう」
「結果は、センターに検体が届いてから約2週間程で郵送か電子メールにて行っています」
「申し訳ありませんが、昭和製薬の神宮司社長の親子鑑定の場合もそのキットで解析されたのでしょうか」
川瀬刑事の顔を見てから朝比奈が尋ねた。
「あの、今日はそのことを調べる為におこしになったのですか」
警戒の表情を浮かべた。
「はい、教えていただければ助かります」
反対に朝比奈の表情からは、全く緊張感が読み取れなかった。
「申し訳ありませんが、例え朝比奈麗子先生からの依頼としても、一応守秘義務がありますので、依頼者の許可なく結果を教えることはできません」
困惑の表情で返した。
「阿部さんは、実際に担当されていらっしゃらないので、ご存じなかったかもしれませんが、こちらの川瀬さんは苗字は違いますが、神宮司社長のお孫さんなのです」
朝比奈がそう言うと、川瀬は胸の内ポケットから一枚の用紙を取り出して広げてみせた。
「家族の方であっても、依頼者ではありませんので申し訳ありませんが、お教えすることはできません」
あくまでも形式に則って模範的な答えであった。
「それでは、もう1つ報告しておきますが、実は川瀬さんは愛知県警捜査一課の刑事なんです。そして、ある殺人事件の捜査をされているのです」
左手で示した。
「えっ、まさか、神宮司社長の親子鑑定が、その事件に関係しているのですか」
今度は驚いて目を大きく開いた。
「はい、連続殺人事件の動機に関わっている可能性が高いと、この川瀬刑事が地道な捜査で突き止めたのです」
横を向き顔を傾け同意を求め、川瀬が少し動揺しながらも頷いた。
「わっ、分かりました。しばらくお待ちください」
阿部はそう言い残して慌てて部屋を出た。そして、しばらくして2人の男性を連れて戻ってきた。
「こちらが、神宮司社長の親子鑑定をした担当者の菅と、センター責任者の岸田です」
阿部の紹介に従ってそれぞれ頭を下げて2人の前に腰を下ろした。
「この度は無理を言って申し訳ありません。早速ですが、持ち込まれた2つの検体の鑑定結果はどうだったのでしょう」
朝比奈は菅に話し掛けた。
「はい、神宮司様の鑑定結果は・・・・・・」
菅は岸田と目を合わせた。
「肯定された。それで、その確率はどうだったのでしょう」
「あっ、はい、99.3%の確率で肯定されました」
鑑定結果の書類を朝比奈に差し出した。
「99.3%ですか・・・・・菅さんが解析されたのですよね。その解析はお1人でされるのですか」
書類に目を通しながら尋ねた。
「解析の全行程を1人で責任をもって行いますが、勿論ダブルチェックいえ当センターではトリプルチェックを行っています」
「それでは、沢山の検体が送られていつしか間違えられたり、この書類を偽造することは99%不可能ということですか」
書類を広げて尋ねた。
「99%ではなく、99.999%ありえません。そもそも、刑事事件では犯人を断定することに利用されますし、親子鑑定では財産分与に関わっていますので、絶対に間違う訳にはいきません」
今度は岸田が大きな声で返答した。
「疑っている訳ではありませんが、山友学園の土地売買で国有地が払い下げた時には、総理大臣が何度もそんなことはありえない。そんなことがあれば、総理大臣も国会議員も辞職すると断言されたのですが、実際は公文書が書き換えられていましたよね。絶対なんて本当にあるのでしょうかね」
「それは・・・・・・」
「あっ、すみません。比較する問題ではなかったですね。それでは、2人の検体は阿部さんが言われたように検査キットで解析されたのですか。他の検査方法もあるのですか」
「いえ、他にも方法はあります。例えば、毛根付きの体毛、爪、へその緒、タバコの吸殻、髭剃りカスなどもあります。そして、神宮司社長のように血液での解析を希望される方も勿論いらっしゃいます」
菅が説明した。
「まぁ、親から受け継いだとはいえ、一代で巨大な製薬会社を作り上げた昭和初期のワンマン社長ですから、血液型を含め厳密に調べあげたいと考えたのでしょうね」
「一応、親子鑑定においては、血液でも検査キットによるものでも解析の確率性に差はないと説明させていただいたのですが、どうもご理解いただけなくて結果的に血液での解析となりました」
「それでは、このセンター内で2人が揃って血液を採取されたのですか」
「神宮司社長には、このセンターのご案内と親子鑑定の説明の後に、血液を採取させていただいたのですが、もう1つの検体はその人が医療関係者とのことで、代理の弁護士が持参されました。まぁ、それも異例のことですので、間違えることは絶対にありえません」
自信を持って答えた。
「代理の弁護士・・・・その弁護士の苗字は、新庄ではありませんか」
「あっ、そうです、新庄弁護士でした」
書類に目を通して答えた。
「その新庄弁護士が先日亡くなりました」
川瀬刑事が付け加えた。
「えっ、まさか、そんな、本当ですか。ニュースではそんな事件は報告されてはいませんよね」
岸田が声を発すると3人とも驚いた表情で川瀬を見た。
「それは、当初は自殺と判断されたのですが、他殺の可能性もあると捜査し直していているところなのです。ですから、詳しい発表を控えているところです」
川瀬がその表情に応えた。
「しかし、その事件に神宮司社長の親子鑑定が関係しているのですか」
3人が顔を合わせた後、今度は菅が尋ねた。
「何しろ数百億の資産家ですので、突然そんな人間の息子だと分かれば、その人や関係者の中には人格も変えてしまう、金の力は恐ろしいですからね。まぁ、中には、そんな金なんて要らないなんていう変人達もいますけどね」
朝比奈は横を向いて川瀬を見た。
「あの、まさか我々が誰かに命じられて、親子鑑定の解析書類を偽造したと疑っていらっしゃるのではないですよね」
少し緊張して岸田が尋ねた。
「いえ、そんなことは99.999%考えていません。ただ、参考として親子鑑定のシステムについて知りたかっただけです。今日は大変参考になりました」
朝比奈は立ち上がって頭を下げると部屋を後にした。
「あの、ちょっと聞いていいですか」
車の助手席に腰を下ろして川瀬が言葉を掛けた。
「何ですか」
シートベルトを閉めるとナビをセットした。
「本当は、親子鑑定の解析の偽造を疑っていたんじゃないですか」
朝比奈の言動や性格やを少しは知っている川瀬の言葉だった。
「分かっちゃいました。ここに来るまでは、それもあるかなと思っていました。でも、姉から聞いていたセンターの人間関係や、解析が1人ではなく2人以上の人間で行われていると聞いて、鑑定書の偽造はされていないと確信しました」
駐車場から出ると東へと向かった。
「確かに、トリプルチェックをしていましたが、絶対に不可能だとは断言できないんじゃないですか」
愛知県警とは逆方向に車を進める朝比奈に言葉を返した。
「もし仮に、犯人が偽装を依頼すれば、1人の口は塞げたとしても3人の口を塞ぐのは相当難しいと思います。」
「確かに、裏切り者が現れる可能性が高くなりますからね」
「もし犯人が逮捕され、解析書の偽装がバレ社員が悪事に加担していたと知れれば、DNA情報解析センターは信用を無くし、存在自体が不可能となるかもしれません。そんな大きなリスクを背負う為には、それに見合うリターンを用意することが必要でしょう。1人なら数億で済みますが、3人となればどこからそんなお金が用意できるのでしょう。昭和製薬の吉川副社長にに聞いたのですが、認知はしても財産分与に関しては、東名医科大学附属病院を辞めて昭和製薬に入社することが条件のようです」
「しかし、いくら条件を出しても、息子として認知さえされれば財産は分与されるのではないですか」
「そう簡単には行かないと思いますよ。戸籍上では別世帯となっていますから、遺留分はあるとしても、遺言状で財産を全て川瀬さんに譲ると残せば、そんなに大きな金額を引き継ぐことは難しくなりますからね。それも、神宮司社長が亡くなった後の遺産ですから、DNA情報解析センターの人間を買収する程のお金があるとは思えません。もしあるとすれば、そもそもこんな事件を起こす必要はないですからね」
「でも、結局確認できたのは、親子鑑定に間違いはなかったということですね」
「まぁ、孫と認知されている川瀬刑事や優子さんのは気になるところでしょうね」
ちらりと横を見た。
「いえ、俺は今の生活で十分満足しています。ただ、妹ができたことは嬉しく思ってはいますけど」
「歳上の変な義理の弟ができて、それも上司ってのも困るよね」
大神の顔を思い浮かべていた。
「いえ、そんなことは・・・・・」
困惑の表情で答えた。
「でも、いくら川瀬さんや優子さんが神宮司社長の云う事を聞かないからって、昭和製薬の跡取りが突然現れて遺産のほとんどを手にするなんて、いくら天使の川瀬さんでも快くは思っていないでしょ。僕なら絶対にとことん調べてみますよ。まずは、DNA情報解析センターでの不正はなかったということですよ」
何故か嬉しそうに微笑んだ。
「DNA情報解析センターでの不正でなければやはり、親子として認められるということですよね」
朝比奈が何を考えているのか分からないでいた。
「川瀬さんも知っているように、僕は根っから疑い深くへそ曲がりな性格ですから、99.999%だと言われれば、残りの0.0001%に関心を持つ方ですからね。まぁ、事件を解決すれば全て分かることですよ」
「証拠も手掛りもないのに事件解決ですか・・・・・ところで、何処へ行くんですか、県警に戻るには反対方向ですよね」
まどの外の景色を見ながら尋ねた。
「付き合わせたお礼にお昼をご馳走しようと思っているんですよ」
「それにしても、ここって瀬戸市ですよね」
「はい、将棋の藤井聡太君で有名なまちです。実は、僕はこの瀬戸市で生まれ育ったんですよ」
そう言うと丘陵地にある大きな駐車場に車を止めた。
「えっ、瀬戸市民公園ですか」
看板に目を移して読み上げた。
「はい、昔は大神と一緒によく利用していました」
車を降りて建物に向かって歩きだした。
「ここで食事ですか」
朝比奈の背中に声を掛けた。
「子供の頃は、小さな喫茶店でしたが、その跡地に信長屋総本家が新しくオープンしたんですよ」
2人は店に入ると窓際の席に腰を下ろした。
「パンを焼くいい匂いがしますね」
川瀬が目を閉じ香りを楽しんでいた。
「店内でパンを焼いていてテイクアウトもできるんですよ。影武者パンと言って見た目は真っ黒なんですが、もちもちでふわふわな食パンがとても有名なんですよ。あっ、それから、お勧めは、味噌カツサンドとふわとろチーズオムレツサンドです。どちらも美味しいですから、1つずつ注文して半分ずつしましょう」
朝比奈は川瀬の意見を聞かずにコーヒーと2つのサンドイッチを注文した。
「ここのモーニングサービスはすごいですよ。飲み物の代金だけでエッグサンドやサラダサンドにホットドックなどのパンが選べ、それにカップスープとゼリーが付くんだ。それはどこの喫茶店でもあるかもしれないけど、この店はきつねうどんや色々なパフェなど17種類もあるんですよ」
朝比奈はメニューを見せながら説明した。
「でも、家からも県警からもちょっと遠いですから・・・・・・」
一応目を通しながら答えた。
「そっ、そうですね」
食事を終え、土産の影武者パンを持って朝比奈が名古屋へ向けてしばらく車を走らせると、東名医科大学付属病院の建物が見えてきた。
「えっ、今度は誰に会うんですか」
何か嫌な予感がしていた。
「土産を持って伺う人物は1人しかいませんよ。連絡もしてあります、さぁ、会いに行きましょう」
朝比奈は大きな紙袋を手に院内へと入り、受付の女性に手を振りいつもの様に澤田優子の待つ部屋へと向かった。
「お邪魔します。まいどー」
優子の姿を見付けて近づいた。
「信長本舗の影武者パンをお持ちしました。真っ黒ですが、これはイカ墨を使っていて、カビている訳ではありませーん」
袋の中を覗き込んだ優子に説明を加えた。
「いつも変わった差し入れを持ってきてくれますね。後で皆んなでいただきます。ありがとうございます」
顔を上げると朝比奈の後ろから川瀬が姿を現した。
「先日は、お世話になりました」
目を合わして川瀬が言葉を掛けた。
「あっ、はい、どうも」
予想していない人物に戸惑っていた。
「えっ、なんか他人行儀ですね。まぁ、仕方ないよね、義弟があの変人上司だから、家に会いに行きづらいよな」
朝比奈は2人の顔を交互に見ながら1人勝手に納得していた。
「崇さんは関係ありません。突然兄が現れて、どう接していいのか戸惑っているだけです」
優子が敢えて反論してみせた。
「ちょっと待ってくださいよ。そんな状態の優子さんが、川瀬さんに何をお世話したのですか」
先程の川瀬の言葉を思い出して尋ねた。
「お世話というか、先日川瀬さんが人間ドックを受けられた時に、丁度私が担当したからです」
優子が右手を左右に振った。
「県警でも暇な部署だから3人揃って受けに来て、たまたま川瀬刑事の担当が優子さんだったのですね」
「あっ、いえ、今年は私1人だけでした」
「他の2人は受けていないのですか」
「これから順次受けるんじゃないですか」
「人間ドック・・・・・・・・・あっ、すみません、ちょっとトイレに行ってきます。優子さん、例の件は先に2人で勧めておいてください」
朝比奈は、2人を残して慌てて部屋を出て行き検査室へと向かう途中で、入院着をまとった神宮司社長の姿に出くわした。朝比奈は写真でその容姿を知っていたが、相手は初対面の為に挨拶を交わすことはなかった。
「すみません、人間ドックの検査についてお聞きしたいのですが、責任者の方をお願いできますか」
朝比奈は事務所の名刺を提出して女性に話し掛けた。
「随分遅かったですね」
戻ってきた朝比奈に、2人だけの気まずさが抜けない川瀬が声を掛けた。
「ちょっと迷ってしまって、それに朝何も食べていないのに、お昼がハードだったから、お腹が痛くなっちゃてね。ああ、そんなことより、話は進んでいるのですか」
話題を変えて尋ねた。
「一応、概要は説明しましたが、これから朝比奈さんを交えて、細部まで詰めようと思っていたところです」
立ったまま腰を下ろさない朝比奈に答えた。
「そうですか。あの、優子さん、依頼していた物は用意していただけましたか」
その話を受けて朝比奈が優子に話を振った。
「ちょっと待ってください」
優子は、立ち上がり自分の机の中から小袋を取り出して朝比奈に差し出した。
「お手数をお掛けしました。早速利用させていただきます。それでは、後はよろしく」
小袋を受け取ると2人に背を向けた。
「えっ、1人で、どこに行くんですか」
川瀬がその背中に問を放った。
「念入りに打合せしてくださいね。大神には言っときますので、打ち合わせ後は久しぶりに兄弟で夕食でもどうですか、まだ決戦までは時間がありそうですから。それじゃ」
振り向かないまま手を振った。
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