マスクドアセッサー

碧 春海

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八章

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 翌日、名古屋地方裁判所では、石川由幸の裁判についての評議会が開かれようとしていた。裁判員には、今回の評議が最終で多数決により結論を出し、判決を下すとの旨が記されていた。部屋には裁判官3人が着席し、続いて裁判員が部屋に入ったが、席が1つ空いていた。月見里恵子は、昨日の麗子からの連絡が現実になり不安が増して行った。
「今日は、朝比奈裁判員が・・・・・・」
 空席を見詰め裁判長が補充裁判員の説明をしようとした時。
「あっ、遅くなってすみません」
 扉を開けて朝比奈が現れ、月見里も驚きの表情をみせた。
「あっ、朝比奈さん、どうして」
 裁判長の顔が引きつっていた。
「いつもは自転車で来るのですが、今日は久しぶりに地下鉄を使ったんです。すると、エスカレーターで盗撮をする大学生を見付けて、現行犯逮捕、あっ、いや、刑事ではないので、正確には現行犯の捕獲を行い、地下鉄の警備員に受け渡したのですが、一応事情を聞きたいと警察官と話をしていて遅くなってしまいました。さぁ、事件について話し合いましょう」
 ショルダーバッグを机に置いた。
「で、では、評議を始めます。先日、朝比奈裁判員の意見もありましたが、裁判官としてはそれに対しては既に解決していると思います。何か他にご意見がありましたら、手を挙げて発言してください」
 裁判長の言葉に挙手をする者は誰もいなかった。
「それでは只今から、多数決により評決したいと思います。今回の評議に関して、弁護人が求める正当防衛に当たると思われる方は、挙手をお願いします」
 裁判長の問い掛けに、男性の会社員の裁判員がゆっくりと手を挙げ、それを見た裁判長は安堵の吐息をついた。
「裁判長、7対2の多数決で、正当防衛を適応するのは拒否されました。どうでしょう、今回の案件に対しては、無罪とするのが妥当だと思います」
 朝比奈の発言に、そんな馬鹿なと慌てて両サイドを見ると、2人の裁判官は手を挙げていなかった。
「それでは、裁判長、法定にて判決をよろしくお願いします」
 朝比奈の言葉にほとんどの人が頷いた。
「分かりました。白川被告人に対して無罪の判決を下します」
 苦々しい顔で両サイドの裁判官を見た。
「裁判長。被害者を殺害してはいなくても、事件には関与していると思われますので、なぜ犯行を認めたのか本人に確認することを忘れないようにお願いします」
 その後、公判が開かれて白井良二の無罪が言い渡された。そして、その判決にがっくりと肩を落とした吉田弁護士が、扉を開けて議場を出たところで朝比奈が待っていた。
「当てが外れてすみません。お察しします」
 あまりにも落ち込んでいる姿に同情していた。
「別に君に言われる筋合いはないけど」
 強がってみせた。
「でも、総帥がこの判決を聞けば、怒り狂うんじゃないでしょうか」
 敢えてねちっこい口調で言い放った。
「ど、どうしてだね。無罪なんだから、きっと喜ばれると思うよ」
 朝比奈の目を見ないで答えた。
「では、どうして、吉田先生はそんなに落ち込んでいらっしゃるのでしょう」
「そっ、それは・・・・・」
「白井良二さんに無罪の判決が出たということは、石川由幸さんを殺害した人物が他にいることになります。これで晴れて堂々と犯人探しができる訳です」
「そういうことになるね。しかし、私にはもう関係ない事件だからね。まぁ、警察には頑張っていただきたいものですね。それでは」
 朝比奈の横を通過し出口へと向かった。
「高名な吉田先生のことですので、警察や検察に圧力を掛けたりするなんてことはないでしょうね。あったとしても、愛知県警にもそんな力に屈しない人間もいますので、どうかご注意ください」
 立ち去ろうとする吉田弁護士の背中に素敵なプレゼントを送った。
「あっ、朝比奈さん、大丈夫だったのですか。お姉さんから、れ、連絡いただいて心配していました」
 その朝比奈の姿を見つけた恵子が駆け寄った。
「あの夜、恵子さんを家まで送った後、2人の男に襲われました。まぁ、殺害目的ではなく、怪我をさせれば良かったのだと思いますけど」
 平気で語る朝比奈の言葉に驚いた。
「に、逃げ切れたのですね」
 現場の状況を想像しながら尋ねた。
「有名なドラマでの主人公の言葉『やられたら、やり返す、倍返しだ』ではありませんが、僕の場合は、やられる前に倍にしてお返しする性分ですので、お2人には僕の代わりに警察病院に入っていただいています。あの夜は、あなたと居る時からずっと付けられていると感じていましたので、失礼だと思いましたが、家まで送らせていただきました。携帯の電源を切り行方不明を装ったのは、僕が怪我をしたと相手に思わせたかったからです。僕が怪我をして、評議に出られなくすることが目的だったので、そうなれば他の裁判員に手を出すことはないでしょうからね」
 いつものコーヒーを手に微笑んだ。
「朝比奈さんは、つ、強いんですね」
 さらりという朝比奈に更に驚いていた。
「その辺を歩いている人に比べれば、少しは強いかもしれません」
 窓から見える人を示して答えた。
「朝比奈さんを、お、襲った人物は分かっているのですか。で、でも、お姉さんから連絡を、い、いただいた時、私たちのことで何かあったと思い、と、とても心配していました。あっ、姉も、もう朝比奈さんには、め、迷惑を掛けたくないと、言っていましたので、い、依頼のことは、忘れてください。で、ですので、会うのも、今日が最後です」
 倍にして返されないのか心配して、朝比奈に向かって深々と頭を下げた。
「誰の指示なのか、予想はついてますのでその点は大丈夫です。ただ、1つ気になることがあるのです。恵子さんは、被告人の白井良二のことを知っていたのですよね。それも憎い相手として、できれば傷害致死でも罰を与えたかったのではありませんか」
 朝比奈は目を閉じ顔を小さく左右に振った。
「えっ」
 朝比奈の思いもよらない言葉にギョッとして、恵子はどう答えていいのか言葉が続かなかった。
「多分、事情聴取はされると思いますが、敏腕弁護士が付いているようですから、直ぐに釈放されるでしょう」
 肩を落とし下を向く恵子に今はそう告げるしかなかった。
「いつも、いつでも、か、金のある人間は、法に守られるのでしょうか。じゃ、弱者は、ただ、悔し涙を流して、な、泣いて、泣いて、耐えるしかないのでしょうか。法って、誰の為にあるのでしょう」
 両手を握り締めた。
「僕も、姉の事件に関わることがあり、法だけでは守れなかった人たちを見てきました。どうでしょう、法が守ってくれないのなら、僕たちで懲らしめてみませんか」
 身を乗り出して尋ねた。
「えっ、わっ、私がですか」
 朝比奈の意図が呑み込めていなかった。
「依頼を受け、少し調べさせていただきました。僕でさえ悔しいのですから、あなたやお姉さんは何倍も、何倍も悔しいはずです。僕はやられる前に倍返しですが、あなたたちはやられてしまったのですから、倍の倍、いや10倍にして返してやりましょう」
 1人納得していた。
「じゅ、10倍ですか・・・・・・でも、わ、私は何をすればいいのですか」
 朝比奈の依頼について行けない恵子だった。
「10倍にして返すのですから、それなりの覚悟が必要です。それと、僕のことを信じてくれないとできません。恵子さん、できますか」
 コーヒーを一気に飲み干した。
「あ、朝比奈さんのことを信じる・・・・・・そ、その前に、今日の評議ですが、どうしてあんな結果になったのでしょう」
 先程の不思議な情景を思い出しながら尋ねた。
「僕やあなたを含め、裁判員のたった1人が正当防衛を認めれば、判決を下せると思ったんでしょうね。何か弱みを握ったのか、金に物を言わせたのかは分かりませんが、実際はその通りになったから世の中恐ろしいですね」
「そ、そういう意味でも、私を守ってくれたのですね。で、でも、2人の裁判官が、さ、賛成しなかったのは、ど、どういう魔法を使ったのですか」
 朝比奈の言葉通りなら、尚更理解できなかった。
「上には上、権力には権力、金には・・・・・正直、金はないですね。方法はいくらでもあるということです。こんな僕ですが、信じて一緒に戦ってみませんか」
 明るく笑う朝比奈になぜか賭けてみたい、そう言う気持ちが湧いて来た。
「じっ、実際に、な、何をすればいいのでしょう」
 決心がついたのか、顔には少し赤みをおび、目には輝きが戻った。
「ちょっと慣れないことをしてもらいますが、協力しますのでよろしくお願いします。それでは早速作戦決行です。僕に付いてきてください」
 朝比奈は立ち上がると『つけといて』との言葉を残し、恵子を連れて芸能プロダクション『オメガシールド』の本社へと向かった。
「あっ、朝比奈君、一体どこで何してたの」
 チーフマネージャーの千賀百合子が、朝比奈を見つけ近づくと大きな声で怒鳴った。
「あれ、事務の方には伝えたのですが、一昨日と今日は国からの要請で裁判員の職務を全うしてまいりました。ただ、昨日は父親に急に呼び出されて東京まで行ってました。これがその時の新幹線の切符の半券です」
 ポケットから出した半券を千賀に見せた。
「言い訳より、謝るのが先でしょ。他人の迷惑ってものを考えないの。そんなフリーターの気分のままでは困るのよ」
 30歳も越してそんなことも分からないのかと、怒りよりも呆れていた。
「あの、お詫びの印ではありませんが、ちょっと可愛い子をスカウトしてきましたので、できれば『オメガシールド』で使っていただけないでしょうか、確か今夜は各界人を迎えるパーティーがあるんですよね」
 朝比奈の後ろに隠れるようにしていた恵子を押し出した。
「この子を・・・・・」
 そう言いながら容姿をチェックしていた。
「糸川美紀、両親の遺産とアルバイトで何とか4年大学の法学部を卒業し、弁護士を目指して頑張っているのですが、現在は無職で生活にとても困っていて、何でもやるとのことで相談を受け連れてきました。できれば、僕と同じようにアルバイトからで結構ですので、どうかよろしくお願いします」
 朝比奈に釣られて恵子も頭を下げた。
「そうね、まぁ、アルバイトってことならいいでしょう。ただ、あなたみたいに、気まぐれで仕事をされては困りますよ。名前と連絡先を事務の武藤さんに教えておいて、早速今日のパーティーに出るように準備してもらいます」
 スケジュールに1名追加と書き込んだ。それから約3時間後、帝王ホテルでは財界や政界の著名人を集めた『オメガシールド』のパーティーが開かれていた。新人のアイドルや女性タレントを紹介するのが目的ではあったが、その招待客の中には銀行の関係者や財務省の課長クラスも含まれ、接待を目的にしていたことは間違いなかった。
「君、新しく入った子だね」
 名古屋第一銀行の融資課長井上隆之がドレスアップした恵子に近づいて来た。
「あっ、はい、きょ、今日から働かせていただいています」
 慣れない仕事にいつもに増して緊張していた。
「初めての仕事なんだね。初々しくて可愛いよ。名前はなんていうんだい」
 そっと手を握り締めた。
「い、糸川美紀です」
 体を硬直させた。
「美紀ちゃんか、いい名前だね」
 体型を下から順に舐めるように見た。
「名前もいいけど、体も素敵だよ。また後でお会いできるといいですね」
 小さく頷く恵子に井上は微笑みながらも各テーブルを回っていた白井社長を手招きし、耳元で囁くとカプセルの入ったケースを受け取った。
「千賀、あの子、何処かで見たような気がするんだけど」
 白井社長がチーフマネージャを呼んで尋ねた。
「あっ、いえ、今日入ったばかりの子ですから会ったことはないと思います。タレント志望のようですが、法学部を出ていますので、ダメなら事務職で使おうと思います」
 名簿などの書類を手に応えた。
「初もの好きの、井上融資課長が御所望なの。いつもの部屋を用意するからお願いね」
 そう言い残すと、他のテーブルへと向かった。1つ溜息を吐いた千賀は、恵子にゆっくりと近づいた。
「糸川さん、悪いんだけど、接待をお願いしたいの。7階のVIPルームへ9時に行って下さい。これは社長からのご指名で、上手く接待できればあなたのタレントへの道も大きく開かれるから頑張ってね」
 頷く恵子の肩を叩いてその場を去って行った。
「失礼します」
 パーティーでの仕事を終え、恵子は言われたとおり9階のVIPルームの扉を叩いた。
「いやー、よく来たね。どうぞ、どうぞ中へ」
 勿論、快く招き入れた。
「あの、わ、私、こういう接待は、は、初めてなので、な、何をすれば良いのでしょう」
 ソファーに腰を下ろしても、緊張は増すばかりだった。
「誰でも最初は緊張するもんだよ。大丈夫だよ、この薬を飲むと落ち着くからね」
 先程、白井社長から手渡された薬の入ったピルケースをカバンから取り出した。
「い、いえ、私は大丈夫です」
 両手で拒絶反応を見せた。
「言う事を聞いてもらわないと、おたくの社長も困ると思うよ。私はね、『オメガシールド』のメインバンクである名古屋第一銀行の融資担当者なんだからね。へそを曲げられたらどんなことになるか、君なら分かるでしょ。さぁ、飲んでごらん、気持ちが楽になるよ」
 強引に迫ってきたその時、扉が突然勢いよく開いて男2人が飛び込んできた。
「だ、誰だ、お前たち」
 驚きの余りソファに倒れ込んだ。
「それはこっちのセリフです。名古屋第一銀行の融資担当のお偉い方のようですが、部屋に女性を連れ込んで一体何をするつもりだったのでしょう」
 大神の言葉に反応して、川瀬はカバンの中から検査キットを取り出し、恵子に無理矢理飲ませようとしたカプセルを割って試薬液の中に溶け込ませた。
「班長、間違いありません」
 綺麗な青色に変化した試薬を見せた。
「合成カンナビ系の危険ドラッグだ。先ずは、麻薬取締法違反。ただ、叩けば埃がたっぷり出そうな気がしますけど、覚悟はしておいてくださいね」
 手錠をするように合図を送った。
「あっ、いや、その薬は彼女が持ってきたものだ。俺は何も悪いことはしていない。勝手に犯人に仕立てようとしているだけなんだろ。証拠、そう証拠を見せてみろ」
 開き直って言い返した。
「そんな言い訳、三文推理小説にも出てきませんよ。ピルケースに付いている指紋を調べれば、直ぐに分かることですからね」
 大神は、手袋をした右手でピルケースを取り上げた。
「それでも納得いただけないようでしたら、この画像はどう説明されるのでしょう。随分と、間抜けな顔が映し出されていますよ」
 大神の後ろから現れた朝比奈がタブレットを差し出すと、先程の井上のエロい顔で語られる画像が映し出された。
「こっ、これは」
 井上は画面から目を背けた。
「このペンダントに小型カメラが仕込んであったのですよ。技術の進歩はすごいですね、こんなに鮮明でクリアな情報を送ってくれるのですから」
 恵子の首に掛けられているペンダントを指差した。
「てめえ、嵌めやがったな」
 大きい声で怒鳴った。
「あなたに、てめえと呼ばれる筋合いはありません。それに、彼女を嵌めようとしたのはあなたの方ですよね。償いはしっかり取ってくださいね」
 朝比奈が睨み返すと、井上は観念したのか神妙な面持ちになり、大神と川瀬に連れられていった。
「恵子さん、怖い思いをさせてすみませんでした」
 3人の姿を見送った後で、声を掛けた。
「あ、朝比奈さんが、い、居るから全然大丈夫でした」
 大きく顔を振った。
「でも、恵子さんの勇気ある行動で、倍とは言いませんがあなた達ご家族の悔しさを、少しは晴らせたと思います」
 恵子の正面に腰を下ろした。
「えっ、か、家族のですか」
 朝比奈の言葉の意味が分からなかった。
「1つは、恵子さんに指示したことでも分かるように、『オメガシールド』の代表者が新人社員やタレントの女性に薬物を使い、錯乱状態して売春をさせた売春防止法違反と、その薬物が合成カンナビ系の危険ドラッグという麻薬だったことで、麻薬取締法違反で逮捕されることになれば、会社の存在自体が危うくなる。そして、もう1つは、先程逮捕された名古屋第一銀行の井上融資課長は、15年前はあなたのお父さんが経営していた会社の融資担当だったのです」
 左の顳かみを叩いた。
「あっ、そうだ、お、思い出しました。会社が好調の時は、借りてくれと頭を下げてくるのに、いっ、一旦業績が悪化すると、父が銀行に通い何度も何度も頭を下げて融資を頼んでも、首を縦には降ってくれなかったと、おっ、怒っていました。ぎ、銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日には取り上げる、そ、そこには人情が全く無いと悔しい思いをしていたのでしょうね」
 当時の寂しそうな父の顔が浮かんでは消えた。
「そんな銀行ばかりではないと思いたいですね」
 流石に、今まで銀行の仕事に携わったことがなかったので、否定も肯定もできなかった。
「でも、あ、朝比奈さんは父の会社のことまで調べたのですか、そ、それにあの男が父の会社の融資担当ということまで。えっ、まさか、あの融資課長を嵌めたのも、す、全て朝比奈さんの計画だったのですか」
 興奮して、横を向いても恵子の視点は定まらなかった。
「これでも一応、朝比奈麗子の左腕と呼ばれている名探偵ですので」
 右手で左の腕を叩いた。
「そっ、それは、右腕と言うのではな、ないですか」
 頭を傾げた。
「ちょっとそれは、流石におこがましいので、そんなこと姉に話したら大変なことになります。あっ、そうだ、大変といえば、今頃吉田鋼鉄弁護士の自宅には警察が捜査に入っていると思います。それに関して、『オメガシールド』やその基である帝王グループに、名古屋地検特捜部の一斉捜査が入り、徹底的に調査することになるのでしょう。面白くなってきたんじゃないですか」
 両手で顔を叩いた。
「あっ、あの、なってきたって、後は、け、警察と検察が調べるのですよね。あ、朝比奈さんには、私たち家族の恨みも、は、晴らしていただきました。もう、十分です。き、危険なことはしないでください」
 朝比奈のことを本当に心配していた。
「えっ、危険な目に合わせたのは僕の方ですよね。それに、あなたと約束の半分も解明できていないと思っています。あなたのお父さんが、自殺を選ばなければならなかったのか。白井良二も今のままでは無罪となり、何の罪にも問われなくなってしまいます。そんなことは、絶対に許されませんよね」
「そっ、それは・・・・・・」
「事件のことの報告を兼ねて、お姉さんと3人でお会いしたいのですが、連絡を取って頂けませんか」
「あっ、姉は、今はロケで家を離れていますので、わ、私の方から話しておきます。あっ、朝比奈さん、今までありがとうございました。姉も、報告を聞けば、な、納得し、警察や検察に任せた法が良いと思うはずです。本当に、ありがとうございました」
 恵子は立ち上がり朝比奈に深く頭を下げると出口へと向かった。
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