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邪魔するツンデレクラスメイト2

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 アパートに着くと、今見が玄関前に座っていた。
 「何やってんの?」
 声をかけると彼女は立ち上がり、ご機嫌ナナメな様子で近づいてきた。
 「いつまで待たせるのよ」
 「今日は予定の日じゃないでしょうが」
 「ところで相坂さんは?」
 「帰ったよ」
 「あっそ」
 俺は相坂さんに与えられた課題を思い出した。
 「今見」
 「なに?」
 「さっきは悪かった」
 「なんの話?」
 目の前の女子はキョトンとしていた。
 「今見が悪かったとはいえ、きつい言い方してたから…」
 「べつにいいし。アタシも悪かったんだから」
 まあ、そうなんだけどな。でもこれで、相坂さんとの約束は果たしたぞ。
 「今見もあとで相坂さんに謝っとけよ」
 気を遣ってくれたんだから、原因である今見も謝るべきだ。
 「わかってる。明日ちゃんと謝る」
 思ったよりも素直だな。まあ、根は良いやつなんだろうけど。
 「で、今日は何の用だ?」
 「恋愛相談しに来たの」
 「アポ無しで来ないでくれ」
 「別に良いじゃん、嬉しいでしょ?」
 心なしか機嫌が良くなったな。
 「仕方ない。入りなよ」

 「おじゃましまーす」
 彼女は適当に靴を脱ぎ、部屋のソファへと一直線に向かうと、横になってスマホをいじり始めた。
 「まったく、自分の家みたいにくつろぎやがるな」
 「住んであげても良いけど?」
 彼女は足を組んで得意げに言った。
 そんな恰好で横になるなよ…エロいな。
 「誰も頼んでないけど」
 「なにそれひどくない?」
 「別に、悪気はないけど」
 「そんな言い方しなくていいじゃん」
 「はいはい、悪かったよ」
 「……」
 さっきまで機嫌が良いと思ってたのに機嫌が悪くなったな...女心難しい。
 「ねえ、飲み物ないの? のど渇いたんだけど」
 「コーラでいい?」
 「うん」
 コーラと一緒に、俺のコップを渡す。 
 すると、相変わらず俺のコップであることを一切気にせずにコップに並々注いで飲んだ。
 俺が気にしすぎなだけなのかな...。

 「ねえ」
 しばらくすると、今見がスマホをいじりながら話しかけてきた。
 「なに?」
 「なんで明日の昼休みだめなの?」
 「それは……」
 相坂さんと一緒に過ごすことになるかもしれないからだ。
 「また相坂さんと食べる予定なの?」
 「多分……」
 「たぶんなら、まだわかんないってことじゃないの?」
 まあ、たしかにそうだけど。
 「思ったんだけどさ、なんでお前は俺を昼休みに誘ってきてるんだ?」
 そもそもの質問をしてみた。
 「それは…...別に誰と一緒に食べようがアタシの勝手じゃない」
 「たしかにそうだけど……今見が俺と昼メシ食べたいなんて言い出すとは思わなかった」
 「べつにいいじゃん。たまには」
 「まあ、いいや。お前が誰と昼を過ごそうがお前の勝手だもんな」
 「分かればいいのよ」
 彼女はぼそっとつぶやいた。
 ていうか、恋愛相談しに来たとか言ってたわりには寝ながらスマホいじってるだけだな。
 「あのさ、恋愛相談しに来たんじゃなかったっけ?」
 「うん」
 彼女は俺に言われてもなお、スマホをいじり続けている。
 「……なあ、今見」
 「なに?」
 「今見ってさ、結局誰が好きなの?」
 俺はずっとこいつの好きな人が気になっている。こんなわがままで口の悪い女子がどんなやつを好きになったのかが気になって仕方ないのだ。
 「……」
 彼女は黙り始めた。
 「同じ学校のやつ?」
 俺はイエス・ノー形式で質問を始めた。
 「うん」

 「学年は同じ?」
 「うん」

 「クラスは?」
 「……」

 クラスを聞いたところでまた黙り始めた。
 クラス分からないと全然絞れない……。

 「どんなやつ?」
 今度は特徴を聞くことにした。
 「……ばか」

 バカが好きなのか? ていうか、どんなつか聞いて最初に出てくる言葉が「ばか」ってヤバくね?

 「顔は?」
 「……すき」
 その回答は、俺が特徴を知るのに全く参考にならない......。
 イケメンで人気のあるやつを振っただけに、こいつがどんな顔を好きなのかもわからない。
 「ねえ……本当に分からないの?」
 今までに出てきたヒントだけで分かるほうがすごいと思う。さすがに今言われた特徴だけでは指名手配できないレベル。
 「他にヒントくれよ」
 「もう教えない」
 「教えてくれたらさらに今見に彼氏ができる手伝いできるからさ」
 俺に恋のキューピットになれるほどの力があるかは分からないが。
 「……石口はそれで良いわけ?」
 「それで良いって、何が?」
 「アタシと誰かが付き合っても良いのかって言ってるのー」
 彼女はそう言い、ほっぺを膨らませた。
 そうでもしないと、俺はいつになっても相坂さんと付き合うことができない。
 「うーん…お前に好きなやつがいるんだから仕方ないんじゃない?」
 「…仕方ないってなに?」
 彼女はむすっとしながら聞いてきた。
 言葉通りの意味だから説明するにもできない。
 「じゃあ聞くけどさ、なんで俺にそんな質問をしてくるのさ?」
 「それは……その……」
 彼女は突然もじもじし始めた。今見のこんなとこなかなか見れないぞ。くやしいことに、可愛い。
 「アタシのこと、どう思ってるか気になるからに決まってるじゃん」
 「なんだよそれ」
 なんだかドキドキし始めた。まるで間接的に好きかどうか聞かれてるみたいだ。
 「だって石口ってさ、アタシがいくらキツく言っても私のこと嫌いにならないじゃん?」
 「うん」
 「だから、私のこと好きなのかなって」
 今見のその言い分に対して俺から言わせてもらいたいことは、今見のことが好きというのももちろんあるが、今見の態度がコロコロ変わるのが面白いから話しかけたりしているというのが、今見と仲良くしている理由である。
 てなわけで、今見の反応を楽しみたいので、それっぽいことを言ってみよう。
 「まあ、たしかにそうかもしれないけどさ……」
 「……え?」
 それに対し、今見は目を丸くしていた。
 予想通りのリアクションである。
 普段ツンツンしているけど、実は純粋で単純な子なのだ。
 「てことはさ、アタシのこと……好きなの?」
 本気にしたのか? うーん、この後なんて答えよう…。
 「けどさ、いまさらそういう風にはならないだろ?」
 「……なんでよ」
 「え?」
 「なんでそう思うの?」
 「だって、お前は俺をそういう感じでは見てないだろ?」
 「……わかんないじゃん」
 え? わかんないってどういうこと? 今見は俺を恋愛対象として見ているのか?
 でも、こいつには好きな人がいるんだった。危ない危ない、危うく勘違いするとこだった。
 まぎらわしいやつだな~。
 「まあ、お前の恋が成就するように応援するから、何かあったら相談しろよ」
 「なんでそうやって優しくするの?」
 「なんでって言われても、友達だからとしか言いようがないな」
 本当は相坂さんと付き合うために恋愛成就してもらおうっていう理由だけど。
 「……わかった。もしなにかあったらいつでも相談するから」
 「おう、そうしてくれ」
 「そういえばさ、相坂さんに告白するのはどうなったの?」
 「ああ、それなんだけどさ……」
 俺は相坂さんに俺らの約束がバレていたことを伝えることにした。
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