完璧なまでの美しい僕は僕であり、あの世界の僕ではなかった。

あしやおでこ。

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第二章。

魔法は魔法でも、ゲームの魔法ではない。

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ロイの作った朝食を済ませて後片付けをしていると、何やらガサゴソとしている。
洗い物をちゃちゃっとすませ覗き込んだ。

手首から巻かれたシルバーチェーンが、手の甲を通り指先からするりと流れ、先端には鋭いほどに美しくカットされた淡いブルーの水晶がゆらゆらと揺れている。

「ペンデュラム?」
「知ってるのか?」
「僕のいた世界にもある。身近なものではないけど」

ロイは1枚の古びた地図を出した。
何より不思議なのは、地図は何の支えもなしにひらりと靡くこともなく浮いているのだ。

「浮いてる…」

マジックを披露する時に「種も仕掛けもございません」と、浮いている物体の上下に腕を通す動作がある。
僕も思わず同じことをしていた。

「種も仕掛けもないな…」
「何をやってる…」
「気にするな、続けろ」

ロイは古びた地図の上にペンデュラムをかざした、

「まぁ、見てろよ」

こくこくと頷いて、言われるままに黙って眺めた。
乗り物の揺れとは明らかに違い、何かに引かれるように水晶はピタリと動きを止めると淡く灯った。
最初に指したのは何もない砂漠、次に水色で描かれた小さくて歪な楕円を指している。

「ここが現在地で、ここが最初に訪れるオアシスだ。2日くらいはかかるか…」
「いや…そんなことより、…それは魔法なのか?」
「そうだが?」

そういえばロイも魔術師だったなと、あれほど魔術師魔術師と呼んでいたのにすっかり忘れていた。

それにしても不思議だ。
僕が使えるのは、攻撃か回復か補助、ステータス上昇下降など要はゲームで使う様々な魔法だ。
試したことはないけれど、生活に使おうとすれば火と氷くらいは使えるだろう。

でも、ロイの使う魔法はそれらのどれとも違う、この世界で生活をするために必要な魔法なのかもしれない。
ゲームとは違う本物の魔法、僕の目にはそう映る。

「他にどんな魔法が使えるんだ?」
「アキラに比べれば些細なものだ」

些細なものと言うけれど、今見た魔法を僕が使うことはきっとできない。
僕が使えるのは、クリエイター達によって作られたものだけだ。
他にどんな魔法があるのか気になってくる。

「そんな目で見るなよ…」
「へ?」
「瞳が宝石みたいに輝いて見える」

それはきっと興味津々で見つめていたということだろう。
でも僕からすると…。

「ロイの琥珀色の瞳のが、キラキラって輝いて見えて綺麗だけど?」

フードをぺろりと剥がせば、見惚れるほど綺麗な琥珀色の瞳が露わになる。
キラキラと瞬くような虹彩から目が離せなかった。

「ほら…、すごく綺麗じゃん」
「それは…口説いてるのか?誘ってるのか?」
「は…?」

ペンデュラムを浮かぶ地図の上に乗せて、じりじりと距離を詰めてくる。

「ロイ、待て!」
「待たない」

そうだ、こいつはそういうやつだ。
隙あらば僕を組敷いてひんむいて、濃ゆいおセックスに持ち込むヤツだった!

「違うぞ、違うからな!おいこら、人の話を聞け!」

時すでに遅し。
ロイの美しい琥珀色の瞳は爛々と輝いていた。

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