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第3章:妖狐の嫁
27.披露宴
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女中猫又’sが、テキパキと大皿を並べていく。ゲストが多いからか、テーブルは出さずに畳の上に直置きだ。列席者のみんなは自ずと左右に分かれる形に。一部縁側に出たりと、さっきよりもカジュアルな感じで座り出した。
お料理はお刺身、焼き魚、天ぷら、煮物、お蕎麦、赤飯……と、数えるのも億劫になるぐらい、たくさんの種類がある。
「退くニャ!」
「危ないニャっ!!」
巨大な大皿が到着した。猫又4人がかりで運ばれてきたその大皿の上には、堆く積み上げられた『いなり寿司』が。油揚げと言えば狐。まっ、まさか!!!
「いなり、お好きなんですか?」
「大好き♡」
「はぅあっっっっ♡♡♡」
「?」
ド定番! なんだけど、無性に萌えた! はっ、早く見たい。リカさんがおいなりさんを食べているところを!!!
「結婚おめでとー!」
「おめでとうございます!」
黒猫又の椿ちゃんと、キジトラ猫又の皐月ちゃんが、それぞれ1枚ずつ大皿を持って来てくれた。服装の関係で動きにくい俺達のために、料理を取り分けてきてくれたみたいだ。
「ありがとう。うわぁ~、美味しそう」
「当たり前ニャ! 椿が腕によりをかけて作ったんニャからニャ!」
「ふふっ、椿ちゃんは摘まみ食いでお忙しそうでしたが?」
「ニャニャ!? んんんっ、そんなことないニャ! 椿だって酢飯を扇いだり、扇いだり、とにかく頑張ったニャ!」
「「はいはい」」
「ムニャーーー!!!」
盛り上がる俺達を他所に、リカさんは いなり寿司 をパクり。小さい口に無理矢理に押し込むようにして頬張った。さぞ美味しかったのでしょう。きゅっと目を瞑って肩を竦ませております。
あ、また一口で。唇をぺろりと舐めて、また一口で。いやいや、もういなりしか見えてないじゃん。いなりに夢中じゃん。尻尾までパタパタさせちゃって――あぁ゛!!! ワイの旦那、可愛過ぎるんやが……。
「にしてもあれだニャ~、椿は言うなれば2人の『仲人』だニャ」
「んぇ?」
「あの『命令ごっこ』をきっかけに、2人はイイ感じになったんニャろ?」
そうだったかな? 厳密に言えばその夜。リカさんが梅さんに嫉妬して『本当はね、(私の尻尾は)4本なんだ』って、俺を誘惑(←)してきた時からなんじゃ?
「何ニャ!? 異論でもあるニャ!?」
「っ!? いやいや! 椿様の仰る通りでございます! 貴方様のアシストがなければ、俺は常盤 優太にはなれませんでした!」
「ふふっ、常盤 優太は良かったなぁ~」
「えっ? リカさんの苗字って『常盤』じゃないんですか?」
「それは私の古い名でね。出奔してるから家名はないんだ」
「出奔!?」
「優太様、ご存知なかったのですか……?」
「あっ、あい……」
「ふっふっふ! 聞いて驚くニャ? 六花様は元は妖狐の国・雨司の王太子。つまりは次期国王だったんだニャー!」
「い゛え゛ぇええ゛え!!!??」
上流階級出身だろうとは思ってたけど、まさかプリンス様だったとは!!! みんなが萎縮するわけだ。平屋で同居なんて以ての外だよな。
「古い話だよ。今ではもう弟が代わりを務めてくれているから」
なっ、なるほど。なら実家に連れ戻されることもないし、結婚相手が人間の俺でも問題ないってことなのかな?
「私はもうただの六花だよ」
ぶっちゃけ色々気になるけど……リカさん本人が『古い話』って言ってるんだ。俺の方からは踏み込まないようにしよう。
「そんなごとよ゛り、……ひぐっ! 六花様ァ! お子は? 今晩からお作りになるのですかぁ~?」
絡んできたのは進行役を務めてくれた唐笠小僧の吉兵衛さんだ。これは相当酔ってるな。まだ会が始まって間もないのに。
「ど~~なんですかっ!?」
「あの……すみません。俺はこの通り男なんで子供は――」
「天狐サマならば~、ひっく! ニンゲンの性別を変えるなど~、朝飯前にございましょ~?」
「まっ!?」
「「「ニャにぃ!?」」」
俺とみんなの視線がリカさんに集中する。
「…………」
「「「…………」」」
「…………っ」
リカさんはいなりを咥えたまま、つーっと目を逸らした。これはガチだ。ガチなんだ……!
「やったーー!! 子狐ニャー!」
女子を中心にはしゃぎ出す。そうか。そうだよな。この里には子供がいないから。
「……っ」
正直抵抗がないと言えば嘘になる。でも、頑張りたい。容易に想像がついたからだ。賑やかで楽しい毎日が。この里でならきっとその子を幸せに出来るはずだ。
「っ、あのリカさん――」
「ごめんね。今はまだ子供は……。優太と2人で過ごす時間を大切にしたいんだ」
「えっ?」
「「「ニャビーーン!!?」」」
「聞いたかい? やっぱ色男は違うねぇ~」
「面ァ関係ねぇだろが!!」
リカさんはぎこちなく笑いながら、みんなに向かってもう一度「ごめんね」と言って頭を下げた。
実際のところどうなんだろう? リカさんは俺との子供を望んでる? それとも望んでない? 気になるけど、今ここで聞くのは野暮だよな。折を見て2人きりの時にでも聞いてみるとしよう。
お料理はお刺身、焼き魚、天ぷら、煮物、お蕎麦、赤飯……と、数えるのも億劫になるぐらい、たくさんの種類がある。
「退くニャ!」
「危ないニャっ!!」
巨大な大皿が到着した。猫又4人がかりで運ばれてきたその大皿の上には、堆く積み上げられた『いなり寿司』が。油揚げと言えば狐。まっ、まさか!!!
「いなり、お好きなんですか?」
「大好き♡」
「はぅあっっっっ♡♡♡」
「?」
ド定番! なんだけど、無性に萌えた! はっ、早く見たい。リカさんがおいなりさんを食べているところを!!!
「結婚おめでとー!」
「おめでとうございます!」
黒猫又の椿ちゃんと、キジトラ猫又の皐月ちゃんが、それぞれ1枚ずつ大皿を持って来てくれた。服装の関係で動きにくい俺達のために、料理を取り分けてきてくれたみたいだ。
「ありがとう。うわぁ~、美味しそう」
「当たり前ニャ! 椿が腕によりをかけて作ったんニャからニャ!」
「ふふっ、椿ちゃんは摘まみ食いでお忙しそうでしたが?」
「ニャニャ!? んんんっ、そんなことないニャ! 椿だって酢飯を扇いだり、扇いだり、とにかく頑張ったニャ!」
「「はいはい」」
「ムニャーーー!!!」
盛り上がる俺達を他所に、リカさんは いなり寿司 をパクり。小さい口に無理矢理に押し込むようにして頬張った。さぞ美味しかったのでしょう。きゅっと目を瞑って肩を竦ませております。
あ、また一口で。唇をぺろりと舐めて、また一口で。いやいや、もういなりしか見えてないじゃん。いなりに夢中じゃん。尻尾までパタパタさせちゃって――あぁ゛!!! ワイの旦那、可愛過ぎるんやが……。
「にしてもあれだニャ~、椿は言うなれば2人の『仲人』だニャ」
「んぇ?」
「あの『命令ごっこ』をきっかけに、2人はイイ感じになったんニャろ?」
そうだったかな? 厳密に言えばその夜。リカさんが梅さんに嫉妬して『本当はね、(私の尻尾は)4本なんだ』って、俺を誘惑(←)してきた時からなんじゃ?
「何ニャ!? 異論でもあるニャ!?」
「っ!? いやいや! 椿様の仰る通りでございます! 貴方様のアシストがなければ、俺は常盤 優太にはなれませんでした!」
「ふふっ、常盤 優太は良かったなぁ~」
「えっ? リカさんの苗字って『常盤』じゃないんですか?」
「それは私の古い名でね。出奔してるから家名はないんだ」
「出奔!?」
「優太様、ご存知なかったのですか……?」
「あっ、あい……」
「ふっふっふ! 聞いて驚くニャ? 六花様は元は妖狐の国・雨司の王太子。つまりは次期国王だったんだニャー!」
「い゛え゛ぇええ゛え!!!??」
上流階級出身だろうとは思ってたけど、まさかプリンス様だったとは!!! みんなが萎縮するわけだ。平屋で同居なんて以ての外だよな。
「古い話だよ。今ではもう弟が代わりを務めてくれているから」
なっ、なるほど。なら実家に連れ戻されることもないし、結婚相手が人間の俺でも問題ないってことなのかな?
「私はもうただの六花だよ」
ぶっちゃけ色々気になるけど……リカさん本人が『古い話』って言ってるんだ。俺の方からは踏み込まないようにしよう。
「そんなごとよ゛り、……ひぐっ! 六花様ァ! お子は? 今晩からお作りになるのですかぁ~?」
絡んできたのは進行役を務めてくれた唐笠小僧の吉兵衛さんだ。これは相当酔ってるな。まだ会が始まって間もないのに。
「ど~~なんですかっ!?」
「あの……すみません。俺はこの通り男なんで子供は――」
「天狐サマならば~、ひっく! ニンゲンの性別を変えるなど~、朝飯前にございましょ~?」
「まっ!?」
「「「ニャにぃ!?」」」
俺とみんなの視線がリカさんに集中する。
「…………」
「「「…………」」」
「…………っ」
リカさんはいなりを咥えたまま、つーっと目を逸らした。これはガチだ。ガチなんだ……!
「やったーー!! 子狐ニャー!」
女子を中心にはしゃぎ出す。そうか。そうだよな。この里には子供がいないから。
「……っ」
正直抵抗がないと言えば嘘になる。でも、頑張りたい。容易に想像がついたからだ。賑やかで楽しい毎日が。この里でならきっとその子を幸せに出来るはずだ。
「っ、あのリカさん――」
「ごめんね。今はまだ子供は……。優太と2人で過ごす時間を大切にしたいんだ」
「えっ?」
「「「ニャビーーン!!?」」」
「聞いたかい? やっぱ色男は違うねぇ~」
「面ァ関係ねぇだろが!!」
リカさんはぎこちなく笑いながら、みんなに向かってもう一度「ごめんね」と言って頭を下げた。
実際のところどうなんだろう? リカさんは俺との子供を望んでる? それとも望んでない? 気になるけど、今ここで聞くのは野暮だよな。折を見て2人きりの時にでも聞いてみるとしよう。
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