自殺志願者と生存志願者

きよ

文字の大きさ
15 / 20

運命の日③

しおりを挟む
*       *       *
学校からかえってきて家の扉を開ける時なにか嫌な感じがした。 嫌な予感をふりきるよう扉をあけた。

「ただいま」

静かだった。いつもなら間髪入れずおじいちゃんが「おかえり」か「いいところに帰ってきた」というはずである。いよいよ不安は最高潮につのった。玄関に靴をつぎ急ぐように部屋に入った。その瞬間心臓を握りつぶされる様な感じだった。
おじいちゃんが倒れていたのだ。
僕は冷静な判断能力を失っていた。何をしたらいいか分からない、どうしたらいいかわからない、何がどうなっているんだ。足はたっている力を失くし、その場に崩れ落ちた。理解が全く及ばなかった。どうなっているんだ、どうなっているんだ、どうなっているんだ。

「う、う、うわーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

なにも分からないまま僕は叫び出した。ただただ叫んだ。異常に気づいた隣の部屋の人が様子を見に来た

「雪下さーん、どうしたんですか~?入りますよ~?」

足音が近ずいてきた

「寿紀くん?どうしたの叫び声なんてあげ...」

そこで初めておじいちゃんの姿に気づいたようだった。

「元気さん、元気さん大丈夫ですか」

おじいちゃんの体を必死にゆすっていた。反応はない。

「はやく、救急車を呼ばなきゃ」

その人は素早く携帯を取り出し、病院に電話した。

「人が倒れてます来てください。場所は......」

その人の言葉は僕の耳にはもう入っていなかった。数分して救急隊員が部屋に入ってきた。部屋の外には人だかりができていた。周囲は救急車のけたたましい音で満たされていた。絵に書いたような緊急事態だった。目まぐるしく変わる状況の中で僕一人だけが何も出来ず取り残されているようだった。

救急隊員が静かに首を振った。なにも言わずともそれが意味することくらいはわかった。意識が遠のいていくのがわかる。この後の記憶はほとんどない。


*      *       *
10月1日

僕は驚くことにまる3日くらい目を覚まさなかったらしい。目を覚ました時には葬式はすでにおこなわれていた。おじいちゃんが葬式をすでに依頼していたらしい。あの日の言動を思い出すとおじいちゃんは死ぬのが分かっていたのだろう。家に帰ると大量の香典が積まれていた、それがおじいちゃんの葬式の大きさを物語っていた。もとから従兄弟などはいなく小さい頃に両親とおばあちゃんをなくし、いまおじいちゃんをなくした僕は完全に一人となってしまった。ひきとられるあてなのどなく、おじいちゃんが相当いい生命保険に入っていてそれが落ちてきているので生活には困らないとうことで僕は1人で暮らすことが決定した。


それから数日はおじいちゃんの知り合いがたずねてきたりしたり、隣人が世話をやいたりしてくれた。



そして、さらに数日がたつと僕は一人になった。なにもやることがなくなった。今まで家にいると、何だかんだおじいちゃんがなにかしようと提案してくれていたのだ。僕ひとりでは自分の暇を潰すことすらできない...とてもとても無力さをかんじた。

「ああ、今までのものは全て与えられてきたものだったのか...自分ではなにひとつできないなんて..」

消えそうな声でそう呟いた。
その時生前のおじいちゃんの姿がよみがえった。記憶の中のおじいちゃんは何かを書いていたような気がする。もしかしたらあれは遺書ではないのか。なきおじいちゃんの言葉を求め遺書を探し始めた。机の引き出しから封筒が一つでてきた。急いで封をきり中を確認した。そこには二つの紙が入っていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...