支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

文字の大きさ
31 / 102
冷たい牢獄

ソリトの一日

しおりを挟む

 目が覚めるといつも通りファルセイダーが話しかけてくる。

『おはよう、ソルト!!』

 朝は、いつもソリトの陽気な声で目が覚める。
 ファルセイダーの存在は、広く冷たい牢屋を明るくしてくれる。藁を敷き詰めただけの寝床も、ファルがいれば素敵な場所に思えた。

「おはよう、ファル。今日も朝から元気だね」

 ファルセイダー・キノスは、ソリトと同い年の少年で、お日様みたいなくりんとした亜麻色の髪の毛に、好奇心旺盛なエメラルドグリーンの瞳をしている。

 いろんなところを旅してきて、寝る前に物語を聞かせてくれる。

 明るく陽気な性格をしていて、二人の少女の魂が入れ替わった話や、恋人を奪われて自殺した男の話、美少年が誘拐される話……そんな話を面白おかしく語ってくれる。

『ソリトは、今日はどんな話が聞きたい?昨日の夜寝る前に語ったカリロスの話なんかどう?』

「うん。聞かせて」

『どこまで話したっけ?』

「古代竜カタストロが、カリロスから欲しいものを聞かれて“イヴ・クルージン”と答えたところまでだよ」

 ファルセイダーが、おもしろいところで止めるから続きが気になって仕方がなかった。

『ああ、そうだった。イヴ・クルージンはロタンのお姫様だった。通常だったら、一生、王族として優雅な暮らしが保証されていたはずだった。世界のために死ぬなんて、受け入れがたいことだった』

「そうだろうな。周囲の人間は彼女を監禁して自由を奪ったのか」

『イヴは、自分の人生を満喫することばかり考えていた。カリロスのことも門前払いして、顔を見ようとさえしなかった。だけど、彼女にはシルヴィエストとの子供アドリアが生まれて考えが変わった。人間と魔族との戦いを終わらせて、世界を平和にするために死を選んだ。子供のために、平和な世界をプレゼントしようと思ったんだ』

「それで……」

『ああ。カリロスは、イヴの親族から責められた。彼は、心労によるストレスのためか早死にした……』

 カリロス・オルトロス。歴史を学んだものなら、全員が知っている有名な人物である。魔族との戦争に勝利して人間が中心となる世界を作り上げたが、彼が犠牲にしたものも多かった。

 誰かが階段を上ってくる音がする。そして、覆面を被っている人間は、僕のいる牢屋の前に到達すると、カレーみたいなスープと、パン、水を鉄格子の向こう側に置いた。そして、任務は、終了したと言わんばかりに、その人は足早に帰りだした。

「待ってくれ!!聞きたいことがあるんだ」

 そう必死に話しかけるが、いつもみたいに止まってくれない。
 すぐにその人の背中は見えなくなり、靴音すらも聞こえなくなった。

『今日も、あいつ、ソリトのことを無視したの?』

「……うん」

『今日はカレーなの?いい匂いだね』

「……うん」

『大丈夫。俺がいるから』

 そう言って、ファルセイダーが僕を慰めるように手を伸ばしたが、その手が僕に触れることはなかった。
 
 だって、ファルセイダー・キノスなんて実在しないから。


 ファルセイダーは、孤独な僕が作り上げた幻想だ。
 カリロス・オルトロスの物語も、昔、読んだ小説の内容だ。
 わかっている。ファルセイダーなんてどこにもいない。
 彼に関する全ては、僕の心が見せた幻影だ。


 もう幽閉されて5年以上経過した。
 あまりにも孤独すぎる。
 死にたい。
 いつまで呼吸は続いていくのだろう。
 いっそのこと自殺しようかと何度も思った。だけど、どうせ生きたなら誰かの心に何かを残したい。孤独死なんてしたら、自分が何のために生まれたのか、わからなくなる気がした。

「嫌われても、疎まれても、死んでしまえなんて思われたって構わない。このまま死にたくない。僕を一人にしないで……。一人にするくらいなら、殺して……」

 広い牢屋でうずくまったまま、少年は誰かに殺されることを願い続けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

ボスルートがあるなんて聞いてない!

BL
夜寝て、朝起きたらサブ垢の姿でゲームの世界に!? キャラメイクを終え、明日から早速遊ぼうとベッドに入ったはず。 それがどうして外に!?しかも森!?ここどこだよ! ゲームとは違う動きをするも、なんだかんだゲーム通りに進んでしまい....? あれ?お前ボスキャラじゃなかったっけ? 不器用イケメン×楽観的イケメン(中身モブ) ※更新遅め

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

処理中です...