支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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ファントムアイランド

絶体絶命

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「バルドル。ここは、私に任せて」

「姫様っ!!!」

「さあ、二人ともしっかりと船につかまって。スノーとクロも持っていてね」

 俺はクロ、バルドルはスノーを持って船のヘリをしっかり掴んだ。

「さあ、行くわよ。水の女神アイリス様。私に力を貸してください」

 次の瞬間、すぐ近くで7つの水柱が派手に上がった。近くにいたケルピーは吹き飛ばされていく。そして、波がなかったはずなのに、船が拘束で動き出した。

「うわあああああああああ」

 水中を、風を切るような猛スピードで動いていく。大量のケルピーも追いかけるが、水の渦や、水柱に吹き飛ばされていく。

 これが、ネプトの魔力!!王家の血筋を引いているだけあって強い。

「危ないっ」

 バルドルが銃弾みたいな小さな火を放って、近づいてきたケルピーを倒した。それだけじゃない。バルドルは、剣を使って船にしがみついてきた化け物も切り付ける。

 自分だけ何もできないことが悔しかった。
 
 周囲のケルピーを振り切った後、ネプトは一人の人魚を見つけた。

「見て!人魚が一人いるわ」

 緑の髪をした人魚は、青ざめた顔で震えながら俺たちを見ていた。

「ねぇ、あなた。ファントムアイランドまで案内してくれない?」

 ネプトは、怯える人魚ににっこりと笑いかけながら、話しかける。

「……」

「断ったらどうなると思う?」

 人魚から声にならない悲鳴が漏れた。

     *                 *

 ファントムアイランドについたら、カタストロと出会って仲間にする。
 そんな夢物語を信じていた時期がありました。

「グルるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるっ!!!」

「人間だ!!!」

「殺せっ!!!!協定通りなら殺しても大丈夫だ!!!!!」

「うううううううううううううううう!!!!」

「ガルルルルるるるるる」

「シャーシャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 結界の外では、大量の魔獣が俺たちを囲んでいる。きっと、俺の命日は今日だろう。
 ベリアル・カラドボルグは、心の底から確信していた。

 命からがらファントムアイランドに着くなり、大量の魔物に襲われた俺らは命がけのランニングを試みたが力尽きて、最終的にネプトが魔力を振り絞って結界を張った。何とか命だけは助かったが、死ぬのは時間の問題だ。
 結界にも魔獣の爪によって、ひびが入っている。

「何がカリロスの再来だ。全部、こいつのせいじゃないか」

 バルドルはイライラとした様子で舌打ちをしてきた。

「何だと!」

「違うわ」

 ぴしゃりとネプトが否定をした。

「全部、私の責任よ。幼い頃、カリロスの物語に夢中になったの。どうしてだろう。あなたの姿がカリロスの姿に重なったの。もしかしたら、あなたなら、カリロスと同じような道をたどれるんじゃないかって……。古代竜を意のままに動かし、ルキフェルを倒して、オルトロス家の栄光を取り戻す。そんな夢を見たの」

「勝手に期待して勝手に裏切られて……バカじゃないのか」

「黙れ!!姫様を侮辱するな」

「逆にお前はよく侮辱できないな。洗脳でもされているんじゃないのか」

「ふざけるなっ!!」

 そんな言葉をともに殴られた。

「このくそ野郎っ!!」

 反射的に殴り返した。

「やめて!!二人ともこんな時にケンカなんてしないで」

「「……」」

「二人には申し訳ないことをしたと思っているわ。でも、最後まで戦って欲しい。命ある限り諦めたくない。そんなことをしたら、祖先に顔向けできないわ」

「当然だ。俺の剣は、とっくの昔に姫様に捧げた」

 こんなときも、バルドルは迷いがない。
 自分はまっすぐとしたバルドルとは、正反対だ。気高く、まっすぐで、紳士で、すべてを捨てる覚悟を持っている……穢れのない騎士であるバルドルが羨ましかった。
 その時、ミシリという大きな音が聞こえた。
 やばい……。結界が壊される。
 どうしよう。
 3人とも無言で、壊れかかった結界を祈るように見つめる。
 入口を塞いでいた結界が壊され、大量の魔物が我先にと雪崩混んでくる。千以上、ひょっとしたら、一万は超えるかもしれない。

「俺が前方からの魔物を狩る。お前らは後方の魔物を殺せ」

 バルドルは、こんなときもヒーローみたいにネプトの前に立ち次々と魔物を殺していく。
 俺も慣れない手つきで剣を握り何とか魔物を倒し続けるが、バルドルみたいに華麗な剣技はできない。
 いつの間にか、空はすっかり灰色に染まり雨が降り始めていた。きっと、ここが俺たちの墓場になるだろう。
 こんなことなら、ネプトについてこない方がよかったかもしれない。
 いや、どっちみち、あの場所は地獄だった。自分の心も終わっていた。

 積み重なる嫉妬と劣等感。
 誰にも言えない孤独。
 幸せそうな人間が憎かった。誰かに必要とされている人間をどん底に突き落としたかった。誰かに愛されている人間を呪いたかった。不幸な人間を見下したかった。

 明るいもの、輝いているもの、愛されているもの……全てが憎しみの対象だった。
 どんなに罵られても、こんな言葉は慣れている。もうこの程度の言葉じゃ傷つかないなんて心で繰り返しながら、悪口に耐えてきた。

 そして……そんな風に歪んでいた人間だったから、安い言葉にそそのかされてここまで来た。
 だけど、もう終わりだ。
 俺なんかに期待してバカじゃないのか。
 ずっと前から痛いほどわかっていたんだ。

 自分が失敗作であることを……。
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