支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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ルジア

アイゼアVSエリュシオン

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 扉が閉まる音が合図になったかのように、アイゼアは銃弾のように素早くエリュシオンに突進した。

 剣先は、まっすぐエリュシオンの心臓めがけて進んでいく。それをエリュシオンは、紙一重で交わして反撃した。
アイゼアは、それを顔色変えずに打ち返し、自分のペースにしようと剣の軌道を捻じ曲げようとしたが、抑え込まれる。

「どうしてテロリストの味方になった?」

 打ち合いながら、エリュシオンが話しかけてきた。

「お前に関係ないだろう」

「ずっと考えていた。どうしてあんたが父さんを裏切ったのかと」

「理由なんて説明して何になる?」

「ああ、そうだな……」

「ただこれだけは言っておく。お前が嫌いだ。俺が欲しかったものを手にして大事にしないお前が嫌いだ」

「僕も君が嫌いだよ。何も知らないくせに不幸そうな面をしているお前が嫌いだった」

 そして、目が嫌いだった。
 自分を妬むように見てくる飢えた狼みたいに貪欲なアメジストの目が気持ち悪かった。

「不幸そうな面?」

「自分が世界で一番不幸とでもいいたげな顔だったじゃないか」

「そんな顔していない」

「どうかな」

「じゃあ、俺が勝ったら認めろよ」

「お前こそ言葉を取り消せ」

「ああ。だけど、死者と会話する趣味はないな」

「同感だ」

 エリュシオンに向けて剣を打ち込む。
 すると、彼も撃ち返してくる。
 それが、ひどく心地いい。
 会話なんかよりも、殺し合いの方がずっといい……。
思えば、小さい頃から会話というものが苦手だった。自分の言葉を上手く伝えられない。考えすぎて言葉が出てこない。そんなことが、昔からよくあった。

 だから、自分という人間を誰にも理解してもらえない気がしていた。
 人と話すよりも剣を振るうことが得意だった。

 シオン・リジルに対するコンプレックスの塊だった父さんは、僕が小さい頃から剣を教えた。『将来はシオン・リジルみたいな男になれ』が父さんの口癖だった。

 母親の命を奪って生まれた自分にできる唯一の償いである気がして剣を振るい続けてきた。



 自分が強すぎると、スリルなんてものはなくなってしまった。何もかも簡単に思えた。自分がしている行為も弱いものいじめにすら思えた。

 そんな中、ユリアに出会った。
 彼女を見た瞬間、自分が求めていたものはこれだと確信した。
 全てを捨てて、彼女の騎士となった。裏切り者だと思われても、嫌われたって構わなかった。ただ、彼女を守るためだけに剣を捧げたかった。
 いつしか、彼女が黒色の夢を描いていることに気がついてしまった。
 それでも、自分は彼女を守ることしかできなかった。

 一体、いつまで打ち合い続けていただろうか。

 まるで永遠のように打ち合い続けていたけれど、彼との決着はいつまでもつかなかった。

 こっちはもう神経すり減らして、体力も使い果たして疲れ果てているのに、彼はいつまでも変わらない速度とスピードで剣を振るい続けていた。
 悔しいが、彼は一流の剣士だ。骸骨みたいな少年は、こんなに立派に成長をしていた。認めないわけにはいかない。

「俺は……ずっとお前が羨ましかった。そして、憧れていた。本当はあんたと別の関係を築きたかった。兄弟みたいになりたかった。いっぱい戦って、お互い高めあって、酒飲んで、飯食って、愚痴言いあって……。友達みたいになりたかった」
 
 エリュシオンは、急に変なことを言い出した。

「それでもわかってしまうんだ。……殺し方が」

 なんでだろうか。嫌な胸騒ぎがする。

「だから、お前に礼を言っておく。楽しかった。ありがとう」

 エリュシオンが近づいてくる。
 不意に時が止まったかのような感覚に襲われた。

 何だ……。
 ただの攻撃じゃないか。力を横に流すが、更に攻撃を重ねられる。

 しかし、違和感が消えないことに気がついた。

 いや、彼の速度が上がっていく。どんどん上がって、自分の腕が追いつかない。

「えっ……」

 逃げる暇もなかった。
 気がついたときには、喉に穴が開いていた。

「がはっ」

 口から血を吐き出した。そして、身体が動かせなくなりその場に倒れ落ちた。
 ああ、そうだ。これは、僕が使用していた師匠の『ギロチン』という技だ。

「残念。……もうお別れだ」

 何であんなに早くなったんだ?
 あのロタンからの短時間で、あいつは急速に進化したのか……。
 何ていう才能だ。恐ろしい……。
 僕は、負けたのか。
 生まれて初めて負けたのか。
 また、次があればよかったな。
 そしたら、もっとエリュシオンを驚かせてやれたかもしれない。だけど、もう全てが終わっていく。死が隣り合わせだった時はいくらでもあったのに、こんなにあっけなく死ぬなんて思っていなかった。

 まるで白く気高い花のように美しい彼女のことを思い出す。

 あの日、死にかけた彼女に出会ってしまった。
 ユリアは、肩から真紅の血を流していた。今にも泣き出しそうな強い意志のある目で俺を睨んでいた。
 それまで誰にも興味を持てなかった。正義か悪かわからないまま、淡々と人殺しだけを続けていた。だけど、その美しさに全て奪われた。衝動的に全て捨てて彼女に捧げてしまった。彼女のためだけに人殺しを続けたいと願ってしまった。

 彼女の騎士になって、彼女の敵全てを殺してやりたかった。
 だけど、もう僕は剣を握れない。

「たの、む……。ユリアをころさ、ないで……」

「俺は、そんな約束できない」

 冷たいアメジストの瞳で見下ろされる。

 ユリア、ごめん……。
 僕は、君の騎士にはふさわしくなかった。
 どうか、逃げてくれ……。
 君だけが僕の唯一の光なんだ……。
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