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終着点
決断
しおりを挟むヨーランのもとで剣の指導を受けながら、数日を過ごした。ギャレットには、自分の居場所を教えてハデスに関して何か分かれば教えてくれと伝えた。
どうせ、数か月は音沙汰ないだろうと思っていたが、ギャレットは思っていたようも早くやってきた。
ノックの音もせずに、見慣れたピンク頭が飛び込んできた。
「エリュシオン!!大変だ。ハデスが殺される!」
その言葉を聞いてすぐに剣を持って立ち上がった。
「世話になった。早くいかないと」
ヨーランは、エリュシオンの腕にすがりついてきた。
「行くな。嫌な予感がする」
「離してください」
「ダメだ。きっと殺される」
男の両腕はブルブルと震えていた。そして、その顔は死体みたいに青ざめている。
「大丈夫です」
「どうしてお前たちは、そんな愚かな選択肢ばかりする!」
お前たち?一体誰と一緒にされているのだろうか。
「行ったら、お前は死ぬ。わしには、それがわかる。冷たくなったお前が、民衆から石を投げられている未来が見えるっ!!美しい髪には泥がつき、しわ一つなかった服は踏みつけられ、憎悪に飲み込まれながら死んでいくんだ!!!」
かわいそうに……。
きっとこの人は、かつて俺の父親がそんな風になった光景を見たのだろう。
「俺は死にません」
「いや、わかる。わしには、わかる。行ったら、みんな死ぬ」
男の腕を無理やり振りほどいて突き飛ばす。
「だけど、行かないとダメなんだ」
ギャレットの跡を追って走っていく。もう足の弱いヨーランは追いつけないだろう。
ヨーランは、俺の父親以上に父親らしかった。まるで俺を家族みたいに扱ってくれた。だけど、ここは、俺の生きる場所ではない。こんな生温いところでは、息が詰まりそうだ。
本当はずっとジキルの傍にいたかった。だけど、心の奥底でジキルをもう一度殺してしまうのが怖くて怯えていた。
何年も過ぎたはずなのに、ジキルを殺した時の手の感触は覚えていた。ある日、またジギルを殺してしまう気がして、怖くてたまらなかった。自分の人間離れした強さも、いつか暴走してしまう気がしていた。だから、ジキルに消えろと言われたときに逃げ出した。
だけど、今は彼に会いたくてたまらない。彼のために全て捧げたい。
彼を助けたい。それしかない。
「行くな!!行かないでくれ!!わしに、3度も息子を失う思いをさせないでくれ!!!もうたくさんだ」
背後から、ヨーランの泣き叫ぶ声が聞こえる。
いつだったか、ヨーランは息子を亡くした話を俺にした。そして、彼は、息子同然であったシオンを失った。今度は、俺の番だと思っているのだろう。
だけど、死ぬのを恐れたら、何もできない。
俺は、どうしてもジキルのもとへ行かないといけない。
今度こそジキルを守りたい。それ以外のことなんて気にしている余裕はない。
エリュシオンは、振り返ることなく馬を走らせ続けた。
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