支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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「すごい……」

「どうも」

 ベリアルは、僕の感嘆のため息に右手をふって返事をすると、先へと進みだした。

「バラキエルは、広間かもしれない」

 そうベリアルが案内するところを歩き続けると、壮大な雰囲気があるドアが現れた。
きしんだドアを開けると、王座に座っている悪魔みたいに美しい男が、人間の生首をボールのようにもてあそんでいた。艶のある長髪に、アメジストの瞳をした男で、ルキフェルに感じた以上の強者のオーラを感じる。黒いコートのような服には、少量の血がこびりついていた。

 彼が操る生首は黒髪に赤い瞳をした男で、死んでからまだ時間があまり経っていないのか腐敗はしていない。紅い瞳は、人間の血を吸い込んだ悪魔のように毒々しく美しい。周囲には、激しい戦闘が起きたのか、氷の魔術らしき痕跡が残っている。

「バラキエル!!!!お前を殺してやる!」

 ベリアルが殺気を込めて怒鳴りつける。

「おや、これは驚いた。光の魔術師を見つけたのか。それだけじゃない。隣には、ハデスもいる。この短時間で頑張ったな。ハデスには、ずっと会いたかったんだ。お前の働きぶりには感謝するよ」

「あんたのためじゃない」 

「お前がバラキエルか。どうしてイテミスを魔物に襲わせた?」

 そう尋ねると、バラキエルは生首をポーンと天井に向かって放り投げた。投げられた生首は、床に落ちてぐしゃりとトマトみたいに一部が潰れた。

「何でって……人間が嫌いだからだ。人間のせいで、アリシアも、リリアも死んだ。父も、母も、兄も、殺された。リリアの死に様なんて、本当にむごい。魔族だからという理由で火あぶりにされた。リリアは、誰も殺したことなんてなかったのに!!アリシアも純粋で優しい子だった。それなのに、お前の父親がアリシアを魔族だからという理由で捨てたんだ。あの子は、あいつを心から愛していたのに!!……ああ、本当に忌々しい生き物たちだ」

「だからといって、度が過ぎている」

「そもそも、世界は魔族のものだった。魔族には、世界を思い通りにする権利がある」

「そんなの古代の話だろう」

「だけど、確かに世界は魔族が支配していた。けれども、魔族はカルロスにより辺境の地に追いやられた」

 支配の王冠を創り上げ、ドラゴンを操れたカルロス・オルトロスが4大魔族を討伐して世界を人間のものにした。そして、生き残った魔族たちはモスコールという辺境の地でレイク山を超えないようにという契約で討伐されなかった。

「モスコールという地域を知っているか」

「当然知っている」

「人間たちに滅ぼされた魔族の土地だ。かつて人間たちは、レイク山より向こう側に行かないと約束したにも関わらず破った」

「それは、魔族が協定を破ってレイク山を超えたからだろう」

「あれは、首領キルラと一部の奴らの暴走だった。レイク山を超えた魔族は、滅ぼされて当然かもしれない。だけ
ど、魔族は全て危険なものと見なされ、モスコールでは魔族の大量虐殺が行われた」

 人間の大量虐殺を目的として、キルラが大量の魔物を率いてレイク山を超えてレイカードに降下した。キルラは討伐されたが、その後、人間たちは、レイク山を超えてモスコールの魔族を大量虐殺した。

「魔族を多く殺した人間こそが正義であり、英雄とされ、逃げる魔族を次々と殺していった。両親、妹、友達、故郷……私は全てを奪われた」

 思い出しただけでも辛いのか、苦し気にうめく声が彼の口から漏れた。

「魔族は、悪だ。殺されるべき存在だ。敵だ……。そんな風に魔族というだけで虐げられたものは多くいる。人間を傷つけたことが一度もない奴らはたくさんいた」

「だけど、お前が殺したかった奴らは、死んだだろう。今のも昔の話だ」

「確かに一番殺したかった奴は死んだ。だけど、その血をひくものは平和に生きている。私が味わった憎しみは、どこにやればいい?世界中の人々は、過去の自分たちがしてきた仕打ちを忘れて平然と生きていく。自分は悪くない、関係ない、誰も殺していないと思いながらのうのうと生きている。それが許せない」

 ようやくわかった。 
 バラキエルは、過去の歴史が生み出した化物だ。

「全ての人類に復讐したい。できるだけ多くの人間に、私と同じ苦しみを味わせてやりたい!!」

 憎しみは、憎しみを産み続ける。家族を殺された人間は復讐すると、新たな憎しみを産んでいく。誰かが憎しみを背負ったまま死なない限り亡くならない。

 結局、何度も歴史は、同じ過ちを繰り返すだろう。この先、世界では、戦争の規模は、大きくなり続け、年老いた人間はかつて手にしていた国を自分のものだと主張し続ける。
 奪われた痛みは、何年も消えることなく、くすぶり続ける。

「そんなのくそったれだ!!!!!」

 ベリアルが殴りつけるように、激しく叫んだ。

「てめぇの過去の恨みなんか知るか!そんなの地獄でほざいていろ!ネプトやバルドルを返せ!!!あいつらは、あんたなんかよりも何倍も素敵な夢を見ていたんだ!!年寄りの戯言なんかに付き合ってやれるか!!」

「このガキが!!」

 バラキエルがベリアルに向かって、黒魔術をぶつける。それを、ベリアルが雷の魔術で対抗する。

 ベリアルとバラキエルの魔力が激しくぶつかり合う。それを見て僕もすぐに加勢した。しかし、バラキエルの魔力は圧倒的ですぐに押されて、吹き飛んだ。
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