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終着点
手遅れ
しおりを挟むバラキエルは、静寂の中、自分を殺した男の目をまっすぐに見つめていた。
体温が急激に下がって、心臓の音がゆっくりになっていくのを感じる。
築きあげたものが一瞬で壊れていく音がする。
それでも、心の中で幼かった頃の自分が叫んでいる。「復讐してやる」「人間を絶滅させてやる!!」と……。
人間を滅ぼして魔物だけの国を作る。
それが、死んだ奴らに顔を合わすために、生き残ってしまった免罪符である気がしていた。
遠い昔、リリアは声を弾ませていた。
『人間は素敵な生き物よ』
何バカなことを言っているんだよ、リリア……。
人間が素敵な生き物だったら、お前があんな風に死ぬわけがないだろう。
リリアは、十字架にくくりつけられ炎で焼かれて、無残に死んだ。そして、娘のアリシアも精神が追い詰められ衰弱死した。
最後にエリュシオンを見つめると、そこには最愛の娘、アリシアの面影があった。
「エリュシオン……。わが孫よ……。お前は、アリシアと同じ目をしているな……」
驚いたようにエリュシオンの瞳が揺れる。
ずっと彼のことが憎かった。
アリシアを奪ったシオンや、エリュシオンが憎くてたまらなかった。けれども、近くで見るとエリュシオンの瞳はあの子によく似ていて、まるでアリシアが『私の息子なの』と語りかけてくる幻想すら浮かんでしまう。
「大きく……なったな……」
遠い昔、幼いエリュシオンを遠くから見たことがある。シオンに似ていると思いその全てを嫌悪した。そして、エリュシオンが処刑されると噂を聞いた時も、助けようともしなかった。
もしも、彼にシオンの血が入っていなければ心から愛せただろうか。復讐なんて忘れて、小さな幸せを求められただろうか……。彼の成長を隣で見守れたら、アリシアを育てたような喜びを感じられただろうか……。
「……お前を……愛したかった……」
アリシアを愛したように、エリュシオンも大切にできたらどんな人生が待っていただろうか。この子の全てを愛せる人間になれたら、どれほどよかっただろうか。
ああ……。そんなことを考えても、全部手遅れだ。
ずっと憎しみで心を燃やし続けていた。
復習を遂げたら、最後に蜜のように甘美な最高の思い出を手にできると信じていた。
だけど、最後に残ったのは灰になったような心だけだった。
どうかお前は、復讐に取りつかれた私みたいにならないで明るい道を歩いてほしい。私の代わりに彼を愛してくれる人が現れますように………。どうか私が愛せなかったぶんまで………………。
どさりとバラキエルは血だまりに崩れ落ちた。
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