支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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余命一週間 過去編

無気力な少年

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「君がエリュシオン・リジルだね」

「……」

「僕の名前は、ジギル。君のご飯係に任命されたんだ」

「……」

 少年は、僕の言葉なんて聞こえないとでもいうようにぼんやりと座ったまま銅像みたいにピクリともしなかった。
 父親が殺されたばかりでショックを受けているのだろう。今の彼に何の言葉をかけたらいいかわからなかった。

「ご飯、置いておくから食べろよ」

「……」

「父親の仇をうちたいなら、ちゃんと生きないと」

「……」

 少年は、少しも動かない。ああ、くそっ。こんな時に、どんな対応をするのが正解なのかわからない。とりあえず持ってきたご飯を鉄格子の中におく。きっとお腹がすいたら、食べるだろう。


 次の日も、午後の実戦練習が終わると、少年がお腹を空かせているかもしれないと急いでミソロギアに駆けつける。

「ご飯はここに置いておくから」

「……」

「お前……食べていないじゃないか」

「うるさいな。どうせ死ぬのに食べるのに意味なんかあるの?」

 少年は、ようやく口を開いた。心底、全てがどうでもいいとでもいうようなつまらなさそうな声だった。

「まだ死刑だと決まったわけじゃない」

「死刑だ」

「大丈夫だ。お前はまだ子供だろう。死刑なんかになったりしないよ」

「……」

「もしも……お前がもっと生きられたら何がしたい?」

「……したいことなんてない」

「子供だからもっと欲張りになれよ。そうだ。お前、焼き鳥って知っているか。すっごく美味しいんだ」

「興味ない」

「じゃあ、何になら興味があるんだ?」

「……もう叶わない」

「そんなことない。君は才能がありそうだし、すごく綺麗だ。きっとどんなものも手に入れられるはずだ。どんな願いも叶うはずだ」

 そう励ますようにいうが、彼は、全てを否定するように首を振って黙り込んだ。


 それからエリュシオンのもとを訪れるるたびにいろんな話をした。革命事件後の政権の変化、町の変化なども話した。しかし、彼が何かに興味を持つことはなかった。

「お前、ロタン祭って知っているか。僕も15歳になった時に初めて行ったんだけど、普段食べられないような美味しい食べ物がたくさんあるんだ。イカの串焼き、唐揚げ、コロコロボールに、仔牛の丸焼き……そして、祭りの終わりにはでっかい花火が打ち上げられる」

「ふーん……」

「……そんな態度をとるなよ。僕だって、お前の気持ちが少しくらいわかるんだよ」

「……」

「そんな顔をしないでくれ。僕も、辛い時間は長かった。母親が疫病で死んでから、誰も助けてくれる人間なんかいなくて、モリス様に拾われるまで死体を漁りながら生きていた。泥水をすするような毎日だった。生活が苦しいと、心まで醜くなっていった。裕福そうな人間を見かける度に、早く死体になってくれとばかり願っていた」

 毎日、死体がありますようにと祈りながら、ヴォルクの崖を訪れていた。そして、自殺した人間を見つけたら、喜びのあまり歪んだ笑みを浮かべてハイエナみたいに必死で洋服を漁っていた。

 生きるのに精一杯で、誰かに優しくする余裕なんてなかった。

「大丈夫。きっとまたやり直せる。生きる目標なんて復讐でもいい。生きていれば、いいことだってある。だから、いい加減食べてくれないか」

「……あんたは、どうして俺を生かしたいんだ?」

「君みたいな奴は、昔の自分を見ているみたいで放っておけないんだ」

「……俺は、あんたとは違う」

 そう否定しながらも、エリュシオンは、初めて僕が届けたパンをかじった。まるで石でも咀嚼するようにまずそうに食べていたが、それで十分だった。

「エリュシオン!!!ありがとう!!」

 鉄格子で遮られていなかったら、喜びのあまり抱きしめていたかもしれない。

「別にあんたのために食べているわけじゃない」

 銀髪の少年は、相変わらず真冬の朝みたいに僕に冷たかった。
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