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余命一週間 過去編
悪魔の囁き
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呼び出されたモールスは、時間通り11時にハデスのもとへ行った。彼は、首を絞められて死んだ男を見て、眉をひそめた。
「また殺したのか」
「いいだろう。自分で買った奴隷なんだから」
「そういう問題じゃないだろう。はあ、お前に何を言っても無駄か」
ハデスにとって、人を殺すことは娯楽だ。
自分が誰かの運命を変える瞬間は、ゾクゾクとしてしまう。モールスもその喜びを知ればいいのに……。
「そういえば、ルキフェルとシェリーの結婚式の日にちが決まったみたいだな」
そう話しかけると、モールスは分かりやすく不機嫌な顔になった。
「……そうだな。それで話って何だ?」
「わかっているんじゃないか」
「……いや、わからない」
そう答えながらも、彼の緑の瞳は恐怖で少し揺れていた。
「僕たちで、ルキフェルを殺さないか」
やっぱり彼は、わかっていたみたいだ。僕の提案に少しも動揺していない。代わりに、呆れたようにため息をつかれた。
「……何を言っているんだ?」
そう言いながらも、彼の声は微かに震えている。
「このままだとルキフェルが皇帝になるぞ。そんなの悔しいだろう。俺たち3人で頑張ったはずなのに、世間では偉大なる魔術師ルキフェル一人の力みたいに言われている」
「ソリトを王座に就かせる予定だろう。オルトロス家の血をひいていないルキフェルが皇帝になったら、民衆から反感をかうぞ」
「妹を殺された男が、オルトロス家の血筋をひく人間なんて認めるわけない」
今回の血の革命事件は、妹を殺されたルキフェルの復讐みたいなものだ。そこに、狂王イフリートに恨みがあるものが集まり、革命を成し遂げられた。主な目的は、戦争を好み、逆らうものを次々と殺すイフリートを消すことだ。
血族や、しきたりを重んじるモールスは、今後は、正当な後継者であるソリトを王に就かせようとしているが、あのルキフェルが許すはずないだろう。
ルキフェルは、庶民出身だし、力づくで皇帝になったら多くの人間の反感をかうに違いない。
「僕たちがルキフェルを殺せば、僕とお前でソリトを操り実験を握れる」
「……お前、本当に性格が悪いよな。やっぱり本当は弟を殺しただろう」
以前は、弟を殺すなんてとんでもないなどと言いながら否定したが、こいつはもう僕の本性をわかっているはずだ。
「それがどうかした?ダインスレイブ家の跡取りは、僕一人で十分だ」
確かにヴィリバルトは、僕が7歳の時に殺した。父親と母親が弟ばかりに構ったのが許せなかったからだ。邪魔な弟を殺したことに少しも後悔はない。
「ハデスは、何が目的なんだ?」
「大した理由はない。こんな世界が嫌いだから、滅茶苦茶にしてやるたいんだ」
「ルキフェルは、俺の親友だぞ。俺がお前のことを告げ口してルキフェルと一緒に殺すなんて思わないのか」
「思わない。だって、お前にはルキフェルを殺す十分な動機があるだろう」
「……」
こっちは、お前のことくらいわかっている。必要なのは、背中を押す人間だけだ。
「それに学生時代の親友が、裏切り殺そうとする展開なんて、最高の展開だと思わないか。ルキフェルは、どんな風に絶望するんだろうか。ああ、絶望……。大好きだな」
人が希望を失う瞬間は、この世のどんなお菓子よりも甘く、とろけるデザートのようなものに思える。その時が来るのを想像しただけで、喜びで胸がはち切れそうになった。
それだけじゃない。絵に描いたような優等生であったモールスのことは、ずっと気に食わなかった。いつか彼が自分側につく瞬間を見てみたかった。学生時代、彼に小言を言われるたびに清廉潔白な彼をどうすれば悪に染められるか考えたものだ。彼が闇に落ちる瞬間は、どれほど美しいだろうか。
「お前、シェリーのことが好きだろう。このままルキフェルに取られてしまっていいのか」
甘くとろけるはちみつみたいな声で、そっと囁く。
モールスは、大事なおもちゃを取られた子供みたいに泣きそうな顔をした。
「また殺したのか」
「いいだろう。自分で買った奴隷なんだから」
「そういう問題じゃないだろう。はあ、お前に何を言っても無駄か」
ハデスにとって、人を殺すことは娯楽だ。
自分が誰かの運命を変える瞬間は、ゾクゾクとしてしまう。モールスもその喜びを知ればいいのに……。
「そういえば、ルキフェルとシェリーの結婚式の日にちが決まったみたいだな」
そう話しかけると、モールスは分かりやすく不機嫌な顔になった。
「……そうだな。それで話って何だ?」
「わかっているんじゃないか」
「……いや、わからない」
そう答えながらも、彼の緑の瞳は恐怖で少し揺れていた。
「僕たちで、ルキフェルを殺さないか」
やっぱり彼は、わかっていたみたいだ。僕の提案に少しも動揺していない。代わりに、呆れたようにため息をつかれた。
「……何を言っているんだ?」
そう言いながらも、彼の声は微かに震えている。
「このままだとルキフェルが皇帝になるぞ。そんなの悔しいだろう。俺たち3人で頑張ったはずなのに、世間では偉大なる魔術師ルキフェル一人の力みたいに言われている」
「ソリトを王座に就かせる予定だろう。オルトロス家の血をひいていないルキフェルが皇帝になったら、民衆から反感をかうぞ」
「妹を殺された男が、オルトロス家の血筋をひく人間なんて認めるわけない」
今回の血の革命事件は、妹を殺されたルキフェルの復讐みたいなものだ。そこに、狂王イフリートに恨みがあるものが集まり、革命を成し遂げられた。主な目的は、戦争を好み、逆らうものを次々と殺すイフリートを消すことだ。
血族や、しきたりを重んじるモールスは、今後は、正当な後継者であるソリトを王に就かせようとしているが、あのルキフェルが許すはずないだろう。
ルキフェルは、庶民出身だし、力づくで皇帝になったら多くの人間の反感をかうに違いない。
「僕たちがルキフェルを殺せば、僕とお前でソリトを操り実験を握れる」
「……お前、本当に性格が悪いよな。やっぱり本当は弟を殺しただろう」
以前は、弟を殺すなんてとんでもないなどと言いながら否定したが、こいつはもう僕の本性をわかっているはずだ。
「それがどうかした?ダインスレイブ家の跡取りは、僕一人で十分だ」
確かにヴィリバルトは、僕が7歳の時に殺した。父親と母親が弟ばかりに構ったのが許せなかったからだ。邪魔な弟を殺したことに少しも後悔はない。
「ハデスは、何が目的なんだ?」
「大した理由はない。こんな世界が嫌いだから、滅茶苦茶にしてやるたいんだ」
「ルキフェルは、俺の親友だぞ。俺がお前のことを告げ口してルキフェルと一緒に殺すなんて思わないのか」
「思わない。だって、お前にはルキフェルを殺す十分な動機があるだろう」
「……」
こっちは、お前のことくらいわかっている。必要なのは、背中を押す人間だけだ。
「それに学生時代の親友が、裏切り殺そうとする展開なんて、最高の展開だと思わないか。ルキフェルは、どんな風に絶望するんだろうか。ああ、絶望……。大好きだな」
人が希望を失う瞬間は、この世のどんなお菓子よりも甘く、とろけるデザートのようなものに思える。その時が来るのを想像しただけで、喜びで胸がはち切れそうになった。
それだけじゃない。絵に描いたような優等生であったモールスのことは、ずっと気に食わなかった。いつか彼が自分側につく瞬間を見てみたかった。学生時代、彼に小言を言われるたびに清廉潔白な彼をどうすれば悪に染められるか考えたものだ。彼が闇に落ちる瞬間は、どれほど美しいだろうか。
「お前、シェリーのことが好きだろう。このままルキフェルに取られてしまっていいのか」
甘くとろけるはちみつみたいな声で、そっと囁く。
モールスは、大事なおもちゃを取られた子供みたいに泣きそうな顔をした。
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