支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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余命一週間 過去編

死刑判決

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 エリュシオンと出会ったから、5日が過ぎた。相変わらずエリュシオンは、僕に対する態度が冷たいが、ご飯は食べてくれるようになった。だけど、僕がうるさいから食べるとでもいうように、彼からは少しも生きたいという意思が感じられなかった。それでも、そのうち、そんな彼を変えてみせると毎日、意気込んでいた。

「ジギル……。ちょっと来い。煙草に付き合え」

 午前の模擬練習が終わった後、突然、騎士団長であるバートから話しかけられた。
 嫌な予感がする。エリュシオンに関することだろうか。
 モリスは、煙草に火をつけると、長い息を吐いた。灰色の煙が辺りを埋め尽くしていく。

「……王都でちょっと事件が起きたらしい。詳細については極秘になっているが、その結果、王の代理人が正式にルキフェルに決まった」

 降り始めた雨みたいに、彼は、ポツリと漏らした。
 ルキフェル・ダナトラス。血の革命事件で最も活躍した史上最強の闇の魔術師。死鬼を操る無敵の男……。そうなることは、予想していた。

「やっぱりそうですか……」

「ルキフェルは、シオン・リジルと死闘を繰り広げ殺した人間だ。エリュシオンの強さを恐れている」

 ドクリ、ドクリ、ドクリ……。心臓が早鐘みたいに鳴り響く。頭が金槌で殴られたみたいに痛くなる。指先が冷たくなっていく。

「エリュシオン・リジルの死刑が決まった」

 バートは、慰めるように僕の肩を叩いた。

「お前には辛い役目だったかもな。ご苦労。今日は、あいつには飯は届けなくてもいい。エリュシオンのことは忘れろ」

 煙草を吸い終えたバートは去っていったが、まるで足が縫い留められたように動けなかった。


 その日は、ミソロギアに寄らずに、のろのろとした足取りで、まっすぐに家に帰宅した。
 生きろとあれだけ希望を持たせて、処刑させる。
 ああ。自分は何て残酷なことをしてしまったのだろうか……。エリュシオンに合わせる顔がない。 

 食欲がわかず何もする気になれないまま、暗い部屋で無気力に座り込む。

 また同じことを繰り返す。

 助けたい人間を助けられない。ナサニエルの時は選択肢なんてなかった。僕が弱かったから、奪われただけだ。今度は、黙ってエリュシオンが死ぬのを見送るしかない。

 どうせ出会ってから一週間も経っていない。同情でもしているのか。死体なんて山ほど見てきただろう。

 もしも、エリュシオンを助けようとしたら、僕が殺されるかもしれない。ようやく手に入れた平和な生活すべてを失うのだ。ノーチともお別れになるし、騎士団も辞めて、世界中から追われる羽目になる。あの死体漁りをしていた生活以下になるかもしれない。

 そうだ。あんなクソガキの一人くらい見捨てればいい。どうせ彼が死ぬのは、僕のせいじゃない。
 だけど……僕は、ナサニエルも助けられず、エリュシオンも見捨てて、一体何のために生きているのだろうか。この先、誰かを助けられるような人間になれるのだろうか。

 騎士団に残って何になる?モリス様には、感謝している。自分の人生をモリス様に捧げたいと思っている。

 昔は、お腹いっぱいご飯を食べることが夢だった。その夢が叶うと、ナサニエルを守ることが夢になった。そして、今はナサニエルを見つけて助けることが夢だけど、何の手がかりも得られない。夢は夢のまま終わるだろう。
 いつだったかナサニエルは、ヘラヘラと笑いながら、こんなことを言っていた。

『ジギル……。俺が捕まったら見捨てて欲しい』

 そんな悲しいことを言わないでくれと怒ったことを昨日のことみたいに覚えている。
 あいつは、全然、ナサニエルと違うのに……。ぶっきらぼうで、愛想笑い一つもできないクソガキなのに……。だけど、どうしてこんなにも助けたいと思ってしまうんだろう……。
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