15 / 36
15 ない袖は振れぬ
しおりを挟む
やりました!
足長おじさんのような、オーナー様が、冒険者ギルドの危なっかしい冒険者たちの為に、アパートメントを貸してくれる。
第一回目は、落選したが、二回目は大当たりしたのです。
しかしノアはまたもや外れた。
だから、一緒に住む事を提案しました。
パーティーメンバーを組んだしね。
第一回目に入居した人も、一人部屋に、複数人で住んでいるらしい。
それでも、馬小屋や、野宿、安宿よりは雲泥の差だとか。
ダンクの宿屋には、お世話になって、お礼は沢山の胡桃と、ビッグハニーの蜜袋。
ノアが、看板娘のカリンが焼く胡桃パンを、非常に気に入り、パンだけでも売ってもらえる交渉をしていた。
ノアの射撃は凄かった。
一度に何本もの矢を放ち、胡桃を落とす。
それが、動く標的に出来れば凄腕ハンターだよ。
何故、当たらないのだろう。
ノアが言うには、急所が見えるのに、動くとそれが流れた線のように見えるからだそうだ。
カメラを早送りした時の夜空の星って感じかな?
でもさ。
急所がわかるって凄い。
『心眼』と言うスキルらしい。
カッコいいです。
ノアは『鷹の目』と言うスキルが欲しいと言っていた。
彼女のお兄さんが持っているらしく、狙った獲物を確実にとらえるらしい。
『心眼』と『鷹の目』があったら、鬼に金棒だろう。
ギルドから手渡された地図を見ながら、目的地に行くと、白い高級リゾートホテルのような三階建ての建物が続く。
道路に面したバルコニー付きで、それぞれの部屋に入るホール的な入口。
吹き抜けは天井から陽光が差し込むドーム型の天窓。
「このホール内だけで、充分に泊まれるわ。」
「噴水っているの?」
「ホールにオシャレなカウチがあるくらいだから。床なんて大理石よ! 王宮? 行ったことないけど王宮よ」
「そうなんだ~」
どっかのホテルのロビーを思い出させる。
まだ自分の部屋に入る前の段階で、ノアは異常に興奮し、私も呆けるしかない。
あばら家とかを想像していたからね。
木のギシギシした階段ではなく、石造りの広い階段。
真ん中には、綺麗な青の絨毯が敷かれている。
ホテルだよ~。
柱や扉も細工が凝っている。
すごいとしか言えません。
「私達の部屋は三階の端だよ」
三階には三部屋しかない。
他はワンフロワーに四つの扉が、あった。
東側の端にある青い扉に、鍵を入れて回す。
「うわぁ~」
「何? この広さ」
白を基調に、差し色は甘くないペールブルーの大きなリビング、ダイニング。
対面キッチンって・・・。
お風呂とトイレに、主寝室と二つの部屋。
主寝室には天蓋付きの大きなキングサイズのベッドが、ど~んとあり、備え付けのクローゼットに、綺麗な猫足のドレッサー。
残り二つの部屋にはシングルベットと備え付けのクローゼット。
リビングには、白い革張りの大きなソファーと、六人掛けのダイニングテーブル。
暖炉まであった。
魔石もふんだんに使われていて、お湯やら水やら灯りやら。
「ねぇ・・。これってお貴族様の部屋よ。いえ、お姫様?」
「住んでいいのかな?」
「聞きたいのは私だよーーーぉ。他の部屋も見てくるわ」
そう言うとノアはダッシュで、出ていった。
他の人の部屋も同じならば、間違いない。
きっとここは、もとお貴族様のお屋敷をリフォーム工事したのだと、納得できる。
部屋の裏手は小さな森。
その奥にある赤い屋根の建物。
いくつも煙突があり、煙が出ている。
ガチャとドアが開くと、ノアがゼイゼイ言いながら飛び込んできました。
「み、見せてもらったわ・・。」
クッションの良いソファーに座る。
私がその横に座ると、一気に話し出した。
「ここが一番広いわ! 一人部屋はこのリビングとダイニングを合わせたくらいの広さで、バストイレ完備は一緒。複数部屋は、このリビング、ダイニングの広さプラス、部屋一つ分多いわ。」
「それで、部屋の様子は?」
どんな感じなのかが気になる。
「部屋の壁紙や、塗装は、なんとみな違う。ベットの感じも、それぞれにインテリアが違うわ。シンプルだったり、カントリー風だったり、色々。その部屋のイメージっていうか・・私達のこの部屋で言うならスィートロイヤル! そうお姫様の部屋。」
それだけ見て回るだけで、楽しいらしい。
一人部屋で、三人組でも余裕で、足らずのベットは、お金が出来たら買うそうだ。
今は床に寝袋。
だけど、それでも大満足だって。
小さいがキッチンがあり、自炊もでき、毎日お風呂に入れ、水洗の清潔なトイレ。
文句などないと言う。
だろうな。
外観もセレブな感じで、部屋にも、お高い魔石がたくさん。
「私達の部屋は、見せてはダメよ。」
「なんで?」
「カーラ! この部屋は、ロイヤルスイートなの。こんなに広くて、キングサイズのベットよ」
「うん」
「複数部屋でも、ダブルベット。わかる? キング!やっかみが怖いじゃない」
「はい!」
ノアの顔が怖かったわ。
ノアと一緒に住むことにして良かったです。
一人でこの部屋は・・・流石に心苦しいです。
「私達も、今は二人だけど、信頼できる仲間が増えるかも知れない。そうしたら一緒に住む為の部屋と思う事にしましょう。」
「わかったです。言いません」
その後、ロイ爺さんが、持たせてくれた調理器具を一応キッチンに並べた。
だが、私もだが、ノアも料理は出来ない。
なんでも、ノアの兄が、やってくれてたらしく、彼女は、洗い物係だったとか。
私?
前世でも、レンジでチン。
またはお湯を入れるだけですかね。
ごめんよ・・ロイ爺さん。
せっかくのロイ印は、ただのインテリアです。
でも、このキッチンにはバッチリ似合う。
寝るのはキングサイズのベットで二人で寝ます。
ノアは、個室で良いと言ったが、私が広すぎる寝室が寂しいのだ。
さて、目覚めもバッチリ。
カリンちゃんのパンを食べにダンクの宿屋へ向かう。
「きっと今日は胡桃パンよ~。」
「たくさん渡したものね。今日はどんなクエストがあるかな~」
「生活用品が欲しいし、部屋着も欲しい。あぁーー頑張らないと」
目指すダンクの宿屋。
ヴァイオレットさんの実家なら、ノアに似合う服がある。
布地とかも売っていたし、下手ながらも自作するのも良いよな。
裁縫道具もちゃんとあるのだから、せめてそれくらい使おう・・よ。
「ノア、お世話になったヴァイオレットさんって商人さんが、いてね。彼女の実家が服屋さんなんだ。ちょっと覗いていかない?」
「いいよ。買う服の下見もしたい」
って事で、朝食をダンクの宿屋で食べてから、ヴァイオレットさんの実家のお店に行った。
「元気そうね。」
「はい。その節はありがとうございました。」
「良かったわ! 私も来週にはフォレスタの街に戻るから。油断大敵よ。」
「はい」
ヴァイオレットさんの娘リリィちゃんは、すやすやと眠っている。
ロイ爺さん手作りのオムツを愛用しています。
「やっぱりお値段が・・」
ノアが見る服は、私達にとって高い。
私は布地を見せてもらう。
コットンや、リネンにシルクまである。
ウールなども、寒くなるならいるかな?
「こっちの端切れは?」
「売っているわよ。小物作りにも使えるでしょう」
頭に閃いたのはパッチワーク。
うん!
基本の布地と、端切れで、作れば可愛いし、安くできるかも。
アイボリーのコットンの布地と、色々な端切れを購入した。
あと、糸も。
「ありがとう。フォレスタの街に来たら、マリオンのお店に顔を出してね。」
「はい。気を付けて帰ってください」
良かった。
里帰りって言っていたもん。
フォレスタの街に行くような、冒険者になれたら、会いに行こうと思う。
きっとその頃には、リリィちゃんは大きくなっているだろうな。
冒険者ギルドへ向かう。
しっかり稼がないと、布地代が赤字になる。
「さっさと歩け!」
じゃじゃらと鎖の音。
それは、洞窟でのシグルーンを思い出させる。
繋がれて歩くのは、人です。
獣耳の獣人達もいた。
中には私よりも幼い子供まで。
空虚な目をした子供と一瞬目が合った。
黒い髪に小さな黒い耳。
獣人だろう。
金色の瞳には光がないが、一瞬その子の瞳が大きく開いたようにも見えた。
「奴隷ね」
「奴隷って・・・」
はっきり言ってショックだ。
人が人を売り買いする。
「ノア・・奴隷って何で? 悪いことをしたから?」
犯罪をし、奴隷として辛い仕事に就くとか?
「そうね。犯罪奴隷もいるし、お金に困り子供や妻を売る人もいる。あと、攫われたりして売られたりね」
なんて恐ろしい。
どの世界でも・・。
嫌だな。
助けたい。
だけどない袖は振れません。
私にはお金も力もない。
それに一人を助けても・・・。
ぎゅっと下唇を噛む。
自分の両手の鎖の武器。
かつてフェンリルを縛っていた呪いの鎖だ。
今は自分を守り、獲物を狩る大切な武器。
「私は・・奴隷制度は嫌です。」
「私もよ。犯罪者は、別としても、売られたり、攫われたり・・悲しすぎる」
何とも重い気持ちのままギルドに向かう。
その日のクエストは、森狼の討伐だったが、私がダメダメで、達成ならず。
身体の疲れは、お湯にゆっくりとつかると、ヴェルジュの血のおかげか・・回復するが、精神的な疲れは残っている。
偽善だけど、幼い子供達が奴隷なんてのはやっぱり・・嫌だよ。
お風呂から上がって、ロイ爺さんに持たせてもらった裁縫道具を、使っていない部屋で広げる。
ノアもまた、空き部屋で、矢を作っていた。
「はぁ~。何も考えないで集中。」
アイボリーの布地を広げる。
ええっと型紙はっと!
裁縫道具の底に型紙が数枚。
私のサイズだから、ノアだともう少し身長もあるからっと!
待ち針をうち、下描きの線を引く。
ハサミで、切る。
「足らずはパッチワークで、何とかなるっしょ!」
ぱちこーんと、頭を叩かれると思い、咄嗟に庇う。
あはぁ・・。
ロイ爺さんはいませんでした。
ちまちまちまちまちまーーーーーーーちま
ちまちまちまちまちまーーーーーーーちま
それは深夜まで続く。
気が付いたのは朝だった。
何も考える事なく寝ていました。
今日はダメダメではなくお仕事頑張るぞーぉ!
足長おじさんのような、オーナー様が、冒険者ギルドの危なっかしい冒険者たちの為に、アパートメントを貸してくれる。
第一回目は、落選したが、二回目は大当たりしたのです。
しかしノアはまたもや外れた。
だから、一緒に住む事を提案しました。
パーティーメンバーを組んだしね。
第一回目に入居した人も、一人部屋に、複数人で住んでいるらしい。
それでも、馬小屋や、野宿、安宿よりは雲泥の差だとか。
ダンクの宿屋には、お世話になって、お礼は沢山の胡桃と、ビッグハニーの蜜袋。
ノアが、看板娘のカリンが焼く胡桃パンを、非常に気に入り、パンだけでも売ってもらえる交渉をしていた。
ノアの射撃は凄かった。
一度に何本もの矢を放ち、胡桃を落とす。
それが、動く標的に出来れば凄腕ハンターだよ。
何故、当たらないのだろう。
ノアが言うには、急所が見えるのに、動くとそれが流れた線のように見えるからだそうだ。
カメラを早送りした時の夜空の星って感じかな?
でもさ。
急所がわかるって凄い。
『心眼』と言うスキルらしい。
カッコいいです。
ノアは『鷹の目』と言うスキルが欲しいと言っていた。
彼女のお兄さんが持っているらしく、狙った獲物を確実にとらえるらしい。
『心眼』と『鷹の目』があったら、鬼に金棒だろう。
ギルドから手渡された地図を見ながら、目的地に行くと、白い高級リゾートホテルのような三階建ての建物が続く。
道路に面したバルコニー付きで、それぞれの部屋に入るホール的な入口。
吹き抜けは天井から陽光が差し込むドーム型の天窓。
「このホール内だけで、充分に泊まれるわ。」
「噴水っているの?」
「ホールにオシャレなカウチがあるくらいだから。床なんて大理石よ! 王宮? 行ったことないけど王宮よ」
「そうなんだ~」
どっかのホテルのロビーを思い出させる。
まだ自分の部屋に入る前の段階で、ノアは異常に興奮し、私も呆けるしかない。
あばら家とかを想像していたからね。
木のギシギシした階段ではなく、石造りの広い階段。
真ん中には、綺麗な青の絨毯が敷かれている。
ホテルだよ~。
柱や扉も細工が凝っている。
すごいとしか言えません。
「私達の部屋は三階の端だよ」
三階には三部屋しかない。
他はワンフロワーに四つの扉が、あった。
東側の端にある青い扉に、鍵を入れて回す。
「うわぁ~」
「何? この広さ」
白を基調に、差し色は甘くないペールブルーの大きなリビング、ダイニング。
対面キッチンって・・・。
お風呂とトイレに、主寝室と二つの部屋。
主寝室には天蓋付きの大きなキングサイズのベッドが、ど~んとあり、備え付けのクローゼットに、綺麗な猫足のドレッサー。
残り二つの部屋にはシングルベットと備え付けのクローゼット。
リビングには、白い革張りの大きなソファーと、六人掛けのダイニングテーブル。
暖炉まであった。
魔石もふんだんに使われていて、お湯やら水やら灯りやら。
「ねぇ・・。これってお貴族様の部屋よ。いえ、お姫様?」
「住んでいいのかな?」
「聞きたいのは私だよーーーぉ。他の部屋も見てくるわ」
そう言うとノアはダッシュで、出ていった。
他の人の部屋も同じならば、間違いない。
きっとここは、もとお貴族様のお屋敷をリフォーム工事したのだと、納得できる。
部屋の裏手は小さな森。
その奥にある赤い屋根の建物。
いくつも煙突があり、煙が出ている。
ガチャとドアが開くと、ノアがゼイゼイ言いながら飛び込んできました。
「み、見せてもらったわ・・。」
クッションの良いソファーに座る。
私がその横に座ると、一気に話し出した。
「ここが一番広いわ! 一人部屋はこのリビングとダイニングを合わせたくらいの広さで、バストイレ完備は一緒。複数部屋は、このリビング、ダイニングの広さプラス、部屋一つ分多いわ。」
「それで、部屋の様子は?」
どんな感じなのかが気になる。
「部屋の壁紙や、塗装は、なんとみな違う。ベットの感じも、それぞれにインテリアが違うわ。シンプルだったり、カントリー風だったり、色々。その部屋のイメージっていうか・・私達のこの部屋で言うならスィートロイヤル! そうお姫様の部屋。」
それだけ見て回るだけで、楽しいらしい。
一人部屋で、三人組でも余裕で、足らずのベットは、お金が出来たら買うそうだ。
今は床に寝袋。
だけど、それでも大満足だって。
小さいがキッチンがあり、自炊もでき、毎日お風呂に入れ、水洗の清潔なトイレ。
文句などないと言う。
だろうな。
外観もセレブな感じで、部屋にも、お高い魔石がたくさん。
「私達の部屋は、見せてはダメよ。」
「なんで?」
「カーラ! この部屋は、ロイヤルスイートなの。こんなに広くて、キングサイズのベットよ」
「うん」
「複数部屋でも、ダブルベット。わかる? キング!やっかみが怖いじゃない」
「はい!」
ノアの顔が怖かったわ。
ノアと一緒に住むことにして良かったです。
一人でこの部屋は・・・流石に心苦しいです。
「私達も、今は二人だけど、信頼できる仲間が増えるかも知れない。そうしたら一緒に住む為の部屋と思う事にしましょう。」
「わかったです。言いません」
その後、ロイ爺さんが、持たせてくれた調理器具を一応キッチンに並べた。
だが、私もだが、ノアも料理は出来ない。
なんでも、ノアの兄が、やってくれてたらしく、彼女は、洗い物係だったとか。
私?
前世でも、レンジでチン。
またはお湯を入れるだけですかね。
ごめんよ・・ロイ爺さん。
せっかくのロイ印は、ただのインテリアです。
でも、このキッチンにはバッチリ似合う。
寝るのはキングサイズのベットで二人で寝ます。
ノアは、個室で良いと言ったが、私が広すぎる寝室が寂しいのだ。
さて、目覚めもバッチリ。
カリンちゃんのパンを食べにダンクの宿屋へ向かう。
「きっと今日は胡桃パンよ~。」
「たくさん渡したものね。今日はどんなクエストがあるかな~」
「生活用品が欲しいし、部屋着も欲しい。あぁーー頑張らないと」
目指すダンクの宿屋。
ヴァイオレットさんの実家なら、ノアに似合う服がある。
布地とかも売っていたし、下手ながらも自作するのも良いよな。
裁縫道具もちゃんとあるのだから、せめてそれくらい使おう・・よ。
「ノア、お世話になったヴァイオレットさんって商人さんが、いてね。彼女の実家が服屋さんなんだ。ちょっと覗いていかない?」
「いいよ。買う服の下見もしたい」
って事で、朝食をダンクの宿屋で食べてから、ヴァイオレットさんの実家のお店に行った。
「元気そうね。」
「はい。その節はありがとうございました。」
「良かったわ! 私も来週にはフォレスタの街に戻るから。油断大敵よ。」
「はい」
ヴァイオレットさんの娘リリィちゃんは、すやすやと眠っている。
ロイ爺さん手作りのオムツを愛用しています。
「やっぱりお値段が・・」
ノアが見る服は、私達にとって高い。
私は布地を見せてもらう。
コットンや、リネンにシルクまである。
ウールなども、寒くなるならいるかな?
「こっちの端切れは?」
「売っているわよ。小物作りにも使えるでしょう」
頭に閃いたのはパッチワーク。
うん!
基本の布地と、端切れで、作れば可愛いし、安くできるかも。
アイボリーのコットンの布地と、色々な端切れを購入した。
あと、糸も。
「ありがとう。フォレスタの街に来たら、マリオンのお店に顔を出してね。」
「はい。気を付けて帰ってください」
良かった。
里帰りって言っていたもん。
フォレスタの街に行くような、冒険者になれたら、会いに行こうと思う。
きっとその頃には、リリィちゃんは大きくなっているだろうな。
冒険者ギルドへ向かう。
しっかり稼がないと、布地代が赤字になる。
「さっさと歩け!」
じゃじゃらと鎖の音。
それは、洞窟でのシグルーンを思い出させる。
繋がれて歩くのは、人です。
獣耳の獣人達もいた。
中には私よりも幼い子供まで。
空虚な目をした子供と一瞬目が合った。
黒い髪に小さな黒い耳。
獣人だろう。
金色の瞳には光がないが、一瞬その子の瞳が大きく開いたようにも見えた。
「奴隷ね」
「奴隷って・・・」
はっきり言ってショックだ。
人が人を売り買いする。
「ノア・・奴隷って何で? 悪いことをしたから?」
犯罪をし、奴隷として辛い仕事に就くとか?
「そうね。犯罪奴隷もいるし、お金に困り子供や妻を売る人もいる。あと、攫われたりして売られたりね」
なんて恐ろしい。
どの世界でも・・。
嫌だな。
助けたい。
だけどない袖は振れません。
私にはお金も力もない。
それに一人を助けても・・・。
ぎゅっと下唇を噛む。
自分の両手の鎖の武器。
かつてフェンリルを縛っていた呪いの鎖だ。
今は自分を守り、獲物を狩る大切な武器。
「私は・・奴隷制度は嫌です。」
「私もよ。犯罪者は、別としても、売られたり、攫われたり・・悲しすぎる」
何とも重い気持ちのままギルドに向かう。
その日のクエストは、森狼の討伐だったが、私がダメダメで、達成ならず。
身体の疲れは、お湯にゆっくりとつかると、ヴェルジュの血のおかげか・・回復するが、精神的な疲れは残っている。
偽善だけど、幼い子供達が奴隷なんてのはやっぱり・・嫌だよ。
お風呂から上がって、ロイ爺さんに持たせてもらった裁縫道具を、使っていない部屋で広げる。
ノアもまた、空き部屋で、矢を作っていた。
「はぁ~。何も考えないで集中。」
アイボリーの布地を広げる。
ええっと型紙はっと!
裁縫道具の底に型紙が数枚。
私のサイズだから、ノアだともう少し身長もあるからっと!
待ち針をうち、下描きの線を引く。
ハサミで、切る。
「足らずはパッチワークで、何とかなるっしょ!」
ぱちこーんと、頭を叩かれると思い、咄嗟に庇う。
あはぁ・・。
ロイ爺さんはいませんでした。
ちまちまちまちまちまーーーーーーーちま
ちまちまちまちまちまーーーーーーーちま
それは深夜まで続く。
気が付いたのは朝だった。
何も考える事なく寝ていました。
今日はダメダメではなくお仕事頑張るぞーぉ!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
334
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる