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21 長い物には巻かれろ
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ルリジオン神国、北の国境を守るグラディウス辺境伯の一族は、サングリーズルにより、無残な程に破壊されたワースティアの地を巡る。
厄災のサングリーズルは遥か昔、神王により封印されていた。
封印が弱まったのか、それとも悪意ある者により解かれたのかは、これから調べていかなければわからない。
幸いなことは、この国のS級冒険者が、A級冒険者とA級プリーストと共に、サングリーズルを打ち取った。
どちらもプラトーの街の者だ。
もっとも優先しなければならない事は、人命救助とワースティアの地の復興だろう。
ワースティアの地は、隣国セラスとの国境を守る要の地でもある。
グラディウス辺境伯は王都へ被害報告と、復興支援の嘆願書を出す。
=================
まるで幼い頃のような・・。
私はヴェルジュの腕の中で目覚めた。
「ずっとヴェルジュが、抱っこしてくれてたんだぁ」
「あなたは無茶しましたからね」
「ヴェルジュが、無茶したからだよ」
「そうですね」
火傷は跡形もなく消えていて、自然に笑みがこぼれた。
「さて~。カーラにはお仕置きが必要です。」
「・・なんでぇぇぇ!」
微笑んだままのヴェルジュだが、怒っているのがわかります。
「魔力の使い過ぎは命の危険があることは、教えましたよね」
「・・はい。」
人間世界で生きるために、幼い頃から魔法の本で、英才教育されましたから。
「自分を大切にしない人は嫌いですよ」
「だって・・」
「だってじゃありません! 私を、救おうと頑張ってくれたカーラの思いは嬉しいです。ですが、それであなたを失ったら、私は、悲しく絶望しかのこりませんよ。」
ひっくひっくと私は、泣いた。
ヴェルジュの私への気持ちがとても嬉しいから。
私は、ヴェルジュに愛されている。
そう、私が思う気持ちとヴェルジュが私を、思う気持ちは同じだと。
「な~に朝から泣いてやがる。 寝小便でもしてヴェルジュにどやされたか?」
「ちがうよ! シグルーン」
大きなあくびをし、フェンリルの姿で、のそのそと部屋に入ってくる。
「朝餉はまだかえ?」
「お前いつの間に! おりろーっ!」
ぶるぶるとシグルーンが、体を震わすが、白いフェンリルの毛に埋もれる幼女は喜ぶだけだ。
「あの子はサングリーズルです」
「・・・・・!!」
サングリーズルと言えば、厄災モンスターで、ウール様ことウールヴヘジン(本名)で、狂戦士のA級冒険者が退治しに行ったやつですよ。
「まぁ、それは朝食を食べながらじゃな。支度はできとるから早く来い。フェンリルはお使いも出来ぬか」
ぶちぶちとロイ爺が、エプロン姿で、顔を出す。
私は、なんだか氷の世界の洞窟での暮らしを思い出して、とても心地良い。
=================
ノアとサクが私を、迎えに来てくれた。
そこまでは良かった。
いや良くない。
「のう~。わらわはスパイシーケルウスが食べたいのじゃ」
「はい。わかっています。ですが、あれはそうそういませんから」
「リズさん、私達のメンバーになったのだから、自分で歩きなさい」
幼女姿のサングリーズルを、私が肩車している状態です。
そしてノアが、甘やかしてはいけないとリズに注意する。
「うるさい小娘よの~。動く的に当てれぬと、ジイの弓が泣いておるぞ~ぉ」
「ぐはぁ!」
ノアはリズの言葉のパンチで、胸を押さえた。
そう・・。
どうしてこの三人組で、スパイシーケルウスを探しているかと言うと、今朝の朝食の時に、ロイ爺が、爆弾発言をしたからだ。
私は、全てを聞いた。
ウール様のパートナーである聖職ギルドから派遣されていたプリーストはヴェルジュであった事。
サングリーズルの首をはねたのは、S級冒険者ヘルヴォル・アルヴィトル。
しかしサングリーズルは首をはねたくらいでは死なないで、幼女の姿で、リズと名乗り現在に至る。
ヴェルジュのように、人世界で生活してゆく予定だが、スパイシーケルウスをいたく気に入り、その食料を自分で賄いさせたいから、冒険者ギルドに登録させ、私達のチームに入れて、人世界の事を教えろと!
「これは依頼じゃ! ノアはワシと契約はすんでおるでな。カーラも鍛え直しが必要じゃが、お前のチームはワシ専属じゃ!」
何が何だかと、混乱している所に、ノアとサクが来て、ロイ爺が、飛んでいる鳥を、新たなる弓で打ち抜けと言った。
もちろんノアは見事に外しました。
そしたらロイ爺が、優れものロイ印の弓を返せと言うと、ノアは必死で拒否。
続いてサクがシグルーンに弟子入りしたいと、言い出した。
「オレ・・男だから。今のオレ・・大事な者を守れないし・・。生きるのは残酷だった・・だけど貪欲にオレは生きたいって・・今は思う」
そうシグルーンとヴェルジュを見て言ったのでです。
それもまた私には意味不明だったが、必死に弓を守り抜いたノアが、私が意識を失っている時の事を教えてくれた。
「カーラ、ノアよ。リズの面倒を見ること。ワシの依頼じゃ!永久あの部屋を使ってよし!」
それはアパートメントのオーナー様に合格を言い渡された瞬間だったが、嬉しさ半分です。
要は、サングリーズルのリズを丸投げされたようなって言うかされたのだ。
彼女は今は魔力も力も非常に弱っているから、安心だとロイ爺さんはいうけれど、サングリーズルという、とても残酷なる者なんだよ。
フェンリルと竜はよくってサングリーズルはダメって・・・う~ん・・。
長い物には巻かれろか・・。
目上の者や勢力のある者には、従った方が得策と言う事
なんだかね~。
森狼の気配が濃くなる。
「スパイシーケルウスじゃないけど森狼が結構います」
「ほほ~ぉ。養い子は中々使えるではないかぇ~」
俺様シグルーンとは違う上様リズだよ。
「私はカーラ。ノアの事もノアって呼んでください」
「ほんに人世界はの~。このわらわが人の子の名をよばねばならないとは・・やれやれじゃ」
億劫そうにリズは言う。
「カーラ!」
「ドローシショック!」
ノアの合図で右手から五つの鎖を出して、森狼を拘束し、ついでに放電で麻痺状態にした。
「任せて!」
しゅんしゅんとノアの矢が物凄い速さで、森狼の急所を射抜いた。
「ほほ~う! 見事じゃ。 それで動く的に当たればわらわの護衛も務まるじゃろの~」
「グサッ。一応褒めてくれたんだよね」
ノアはまたまた胸を押さえた。
「ねぇ、ノア。燻製器ってないの?」
二人で森狼を解体しながら聞いてみる。
スパイシーケルウスなんて稀だから、それの代用まではいかなくても、他の素材で燻製させたらどうかな~と。
「桜のチップとかで、モクモクっとさ」
「鍋とかでできるんじゃない?」
だったら、使っていないピカピカのお鍋やフライパンはある。
街で、燻製用のチップや香辛料を買ったら出来るではありませんか。
「リズさん、この森狼のお肉を燻製にしてみましょう」
「わらわはスパイシーケルウスが良いのじゃがな」
わがままを言わないでくださいよ。
いないものはいないのですから。
冒険者ギルドで、森狼の毛皮や牙や魔石を換金し、街で、必要な物を買う。
アパートメントに帰り、ピカピカの寸胴鍋を出した。
やっと使える日が来たんだよ。
フライパンはまた今度ね。
いざ、材料をぶち込む。
「ちょっと待って! 燻製って煙で燻すんだから、外でしよう。このスィートロイヤルな部屋が、汚れるのだけは嫌よ」
「そうだよね~」
ノアの意見に同意です。
では、あそこならばと、ロイ爺さんの邸宅に向かった。
お庭は広く、煙くらい何とも苦にならないだろう。
石を積み、焚き木した。
その上に材料をぶち込んだ寸胴鍋を乗せる。
「これでよし!」
「だね~。」
良い仕事をしたとばかりに、出来上がるまで中に入れてもらおうと、外からリビングの方へと行く。
「まだまだーーーっ!」
「威勢だけはましだが、手! 足! わきが甘いわーーーぁ」
それはサクとシグルーンだ。
サクは肩で息をし、膝はがくがくと震えている。
「めちゃくちゃじゃない! 止めないと」
「ノア、あんなのはシグルーンのほんの払いのけだから。あれくらいじゃ、人間世界ではダメダメ最下位レベルだからね」
シグルーンの第一号弟子として言わせていただきます。
「ほう~! カーラも言うの。坊主はお前さんの大事じゃないのかぇ?」
「坊主じゃなくてサクです。」
「サクだな。」
「はい」
私に肩車されているリズです。
重くはない。
なんかフードを被った状態ですね。
ギルドカードには私と同じ年齢が記入されていましたが、小人族扱いでした。
虎の人族と妖精族のハーフとか自分で言っていましたが、偽作自演の偽装工作ですよね。
だって何百年も生きる魔獣のサングリーズルですから。
「シグルーン、私とも久々に訓練をしてください」
「おう! いいぜ。ボコボコにしてやるぜ」
ノアにサクを任せます。
休憩が必要だからね。
そう言う私もすぐに休憩時間となりました。
もうズタボロの助だったよ。
やっぱりシグルーンは強いです。
「あららぁ~。全く」
ヴェルジュが来て、サクと私の傷を治してくれた。
どどどーっと音が聞こえた。
ばしぁーんと扉があいた。
「カーラぁぁぁ!」
それはロイ爺さんが鬼の形相で、真っ黒になった寸胴鍋を持って来たのだ。
「ワシのスィート・キャンディーシリーズがぁぁぁぁーっ!」
キッチン調理グッズには名前があったみたいです。
「燻製作りに失敗しちゃったね」
「得体の知れない黒い炭になっているわ」
「こんなのはわらわは食いとうないぞ」
「「ですよね~」」
ノアと二人でリズの意見には賛成です。
「じゃ、今度はフライパンでやってみよう!」
「そうだね~」
ぼかっぼかっーっ!
ロイ爺さんの怒りの拳骨が、私とノアの天辺に落ちた。
涙を浮辺て頭を抱える。
「燻製作りがしたければ、燻製器でするがいいーーーっ! 納屋に転がっておるから、スィート・キャンディーシリーズは、普通に料理をする道具として使うのじゃ!」
「「はい!」」
ひれ伏し謝りました。
「坊主! お前さんは調理師ギルドに入り、サブ職を取得せい。今後いっさい、この二人に、スィート・キャンディーシリーズを触らしてはいかん。」
「・・う、うん」
鬼の形相のロイ爺さんには誰一人逆らえません。
自身の魂を込めた作品に対するロイ爺さんの執念が怖いですから。
厄災のサングリーズルは遥か昔、神王により封印されていた。
封印が弱まったのか、それとも悪意ある者により解かれたのかは、これから調べていかなければわからない。
幸いなことは、この国のS級冒険者が、A級冒険者とA級プリーストと共に、サングリーズルを打ち取った。
どちらもプラトーの街の者だ。
もっとも優先しなければならない事は、人命救助とワースティアの地の復興だろう。
ワースティアの地は、隣国セラスとの国境を守る要の地でもある。
グラディウス辺境伯は王都へ被害報告と、復興支援の嘆願書を出す。
=================
まるで幼い頃のような・・。
私はヴェルジュの腕の中で目覚めた。
「ずっとヴェルジュが、抱っこしてくれてたんだぁ」
「あなたは無茶しましたからね」
「ヴェルジュが、無茶したからだよ」
「そうですね」
火傷は跡形もなく消えていて、自然に笑みがこぼれた。
「さて~。カーラにはお仕置きが必要です。」
「・・なんでぇぇぇ!」
微笑んだままのヴェルジュだが、怒っているのがわかります。
「魔力の使い過ぎは命の危険があることは、教えましたよね」
「・・はい。」
人間世界で生きるために、幼い頃から魔法の本で、英才教育されましたから。
「自分を大切にしない人は嫌いですよ」
「だって・・」
「だってじゃありません! 私を、救おうと頑張ってくれたカーラの思いは嬉しいです。ですが、それであなたを失ったら、私は、悲しく絶望しかのこりませんよ。」
ひっくひっくと私は、泣いた。
ヴェルジュの私への気持ちがとても嬉しいから。
私は、ヴェルジュに愛されている。
そう、私が思う気持ちとヴェルジュが私を、思う気持ちは同じだと。
「な~に朝から泣いてやがる。 寝小便でもしてヴェルジュにどやされたか?」
「ちがうよ! シグルーン」
大きなあくびをし、フェンリルの姿で、のそのそと部屋に入ってくる。
「朝餉はまだかえ?」
「お前いつの間に! おりろーっ!」
ぶるぶるとシグルーンが、体を震わすが、白いフェンリルの毛に埋もれる幼女は喜ぶだけだ。
「あの子はサングリーズルです」
「・・・・・!!」
サングリーズルと言えば、厄災モンスターで、ウール様ことウールヴヘジン(本名)で、狂戦士のA級冒険者が退治しに行ったやつですよ。
「まぁ、それは朝食を食べながらじゃな。支度はできとるから早く来い。フェンリルはお使いも出来ぬか」
ぶちぶちとロイ爺が、エプロン姿で、顔を出す。
私は、なんだか氷の世界の洞窟での暮らしを思い出して、とても心地良い。
=================
ノアとサクが私を、迎えに来てくれた。
そこまでは良かった。
いや良くない。
「のう~。わらわはスパイシーケルウスが食べたいのじゃ」
「はい。わかっています。ですが、あれはそうそういませんから」
「リズさん、私達のメンバーになったのだから、自分で歩きなさい」
幼女姿のサングリーズルを、私が肩車している状態です。
そしてノアが、甘やかしてはいけないとリズに注意する。
「うるさい小娘よの~。動く的に当てれぬと、ジイの弓が泣いておるぞ~ぉ」
「ぐはぁ!」
ノアはリズの言葉のパンチで、胸を押さえた。
そう・・。
どうしてこの三人組で、スパイシーケルウスを探しているかと言うと、今朝の朝食の時に、ロイ爺が、爆弾発言をしたからだ。
私は、全てを聞いた。
ウール様のパートナーである聖職ギルドから派遣されていたプリーストはヴェルジュであった事。
サングリーズルの首をはねたのは、S級冒険者ヘルヴォル・アルヴィトル。
しかしサングリーズルは首をはねたくらいでは死なないで、幼女の姿で、リズと名乗り現在に至る。
ヴェルジュのように、人世界で生活してゆく予定だが、スパイシーケルウスをいたく気に入り、その食料を自分で賄いさせたいから、冒険者ギルドに登録させ、私達のチームに入れて、人世界の事を教えろと!
「これは依頼じゃ! ノアはワシと契約はすんでおるでな。カーラも鍛え直しが必要じゃが、お前のチームはワシ専属じゃ!」
何が何だかと、混乱している所に、ノアとサクが来て、ロイ爺が、飛んでいる鳥を、新たなる弓で打ち抜けと言った。
もちろんノアは見事に外しました。
そしたらロイ爺が、優れものロイ印の弓を返せと言うと、ノアは必死で拒否。
続いてサクがシグルーンに弟子入りしたいと、言い出した。
「オレ・・男だから。今のオレ・・大事な者を守れないし・・。生きるのは残酷だった・・だけど貪欲にオレは生きたいって・・今は思う」
そうシグルーンとヴェルジュを見て言ったのでです。
それもまた私には意味不明だったが、必死に弓を守り抜いたノアが、私が意識を失っている時の事を教えてくれた。
「カーラ、ノアよ。リズの面倒を見ること。ワシの依頼じゃ!永久あの部屋を使ってよし!」
それはアパートメントのオーナー様に合格を言い渡された瞬間だったが、嬉しさ半分です。
要は、サングリーズルのリズを丸投げされたようなって言うかされたのだ。
彼女は今は魔力も力も非常に弱っているから、安心だとロイ爺さんはいうけれど、サングリーズルという、とても残酷なる者なんだよ。
フェンリルと竜はよくってサングリーズルはダメって・・・う~ん・・。
長い物には巻かれろか・・。
目上の者や勢力のある者には、従った方が得策と言う事
なんだかね~。
森狼の気配が濃くなる。
「スパイシーケルウスじゃないけど森狼が結構います」
「ほほ~ぉ。養い子は中々使えるではないかぇ~」
俺様シグルーンとは違う上様リズだよ。
「私はカーラ。ノアの事もノアって呼んでください」
「ほんに人世界はの~。このわらわが人の子の名をよばねばならないとは・・やれやれじゃ」
億劫そうにリズは言う。
「カーラ!」
「ドローシショック!」
ノアの合図で右手から五つの鎖を出して、森狼を拘束し、ついでに放電で麻痺状態にした。
「任せて!」
しゅんしゅんとノアの矢が物凄い速さで、森狼の急所を射抜いた。
「ほほ~う! 見事じゃ。 それで動く的に当たればわらわの護衛も務まるじゃろの~」
「グサッ。一応褒めてくれたんだよね」
ノアはまたまた胸を押さえた。
「ねぇ、ノア。燻製器ってないの?」
二人で森狼を解体しながら聞いてみる。
スパイシーケルウスなんて稀だから、それの代用まではいかなくても、他の素材で燻製させたらどうかな~と。
「桜のチップとかで、モクモクっとさ」
「鍋とかでできるんじゃない?」
だったら、使っていないピカピカのお鍋やフライパンはある。
街で、燻製用のチップや香辛料を買ったら出来るではありませんか。
「リズさん、この森狼のお肉を燻製にしてみましょう」
「わらわはスパイシーケルウスが良いのじゃがな」
わがままを言わないでくださいよ。
いないものはいないのですから。
冒険者ギルドで、森狼の毛皮や牙や魔石を換金し、街で、必要な物を買う。
アパートメントに帰り、ピカピカの寸胴鍋を出した。
やっと使える日が来たんだよ。
フライパンはまた今度ね。
いざ、材料をぶち込む。
「ちょっと待って! 燻製って煙で燻すんだから、外でしよう。このスィートロイヤルな部屋が、汚れるのだけは嫌よ」
「そうだよね~」
ノアの意見に同意です。
では、あそこならばと、ロイ爺さんの邸宅に向かった。
お庭は広く、煙くらい何とも苦にならないだろう。
石を積み、焚き木した。
その上に材料をぶち込んだ寸胴鍋を乗せる。
「これでよし!」
「だね~。」
良い仕事をしたとばかりに、出来上がるまで中に入れてもらおうと、外からリビングの方へと行く。
「まだまだーーーっ!」
「威勢だけはましだが、手! 足! わきが甘いわーーーぁ」
それはサクとシグルーンだ。
サクは肩で息をし、膝はがくがくと震えている。
「めちゃくちゃじゃない! 止めないと」
「ノア、あんなのはシグルーンのほんの払いのけだから。あれくらいじゃ、人間世界ではダメダメ最下位レベルだからね」
シグルーンの第一号弟子として言わせていただきます。
「ほう~! カーラも言うの。坊主はお前さんの大事じゃないのかぇ?」
「坊主じゃなくてサクです。」
「サクだな。」
「はい」
私に肩車されているリズです。
重くはない。
なんかフードを被った状態ですね。
ギルドカードには私と同じ年齢が記入されていましたが、小人族扱いでした。
虎の人族と妖精族のハーフとか自分で言っていましたが、偽作自演の偽装工作ですよね。
だって何百年も生きる魔獣のサングリーズルですから。
「シグルーン、私とも久々に訓練をしてください」
「おう! いいぜ。ボコボコにしてやるぜ」
ノアにサクを任せます。
休憩が必要だからね。
そう言う私もすぐに休憩時間となりました。
もうズタボロの助だったよ。
やっぱりシグルーンは強いです。
「あららぁ~。全く」
ヴェルジュが来て、サクと私の傷を治してくれた。
どどどーっと音が聞こえた。
ばしぁーんと扉があいた。
「カーラぁぁぁ!」
それはロイ爺さんが鬼の形相で、真っ黒になった寸胴鍋を持って来たのだ。
「ワシのスィート・キャンディーシリーズがぁぁぁぁーっ!」
キッチン調理グッズには名前があったみたいです。
「燻製作りに失敗しちゃったね」
「得体の知れない黒い炭になっているわ」
「こんなのはわらわは食いとうないぞ」
「「ですよね~」」
ノアと二人でリズの意見には賛成です。
「じゃ、今度はフライパンでやってみよう!」
「そうだね~」
ぼかっぼかっーっ!
ロイ爺さんの怒りの拳骨が、私とノアの天辺に落ちた。
涙を浮辺て頭を抱える。
「燻製作りがしたければ、燻製器でするがいいーーーっ! 納屋に転がっておるから、スィート・キャンディーシリーズは、普通に料理をする道具として使うのじゃ!」
「「はい!」」
ひれ伏し謝りました。
「坊主! お前さんは調理師ギルドに入り、サブ職を取得せい。今後いっさい、この二人に、スィート・キャンディーシリーズを触らしてはいかん。」
「・・う、うん」
鬼の形相のロイ爺さんには誰一人逆らえません。
自身の魂を込めた作品に対するロイ爺さんの執念が怖いですから。
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