トンネルを抜けると異世界だった~荒れ狂うと言う名を持つ乙女~

ゆき

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20 出る杭は打たれる

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 なんと!
 私はノアと一緒のブロンズカードへ昇格しました。
 プラトーダンジョンの地下で、大暴れしたのが、認められたらしいが・・。
 怖かったです。
 ハチミツ大好きなクマさんじゃなく、熊の獣人であるギルドマスターの怒りの説教がね。
 めちゃ怒られ、土下座して泣いて謝りました。

 それとカードに記録されている職業の項目がなぁ・・。
 ノアはハンター。
 これはわかる。
 私は暗殺者が良かったんだぁ。
 だったら気配を消すスキルが取得されるとばかり。
 なのに『リトル・ベルセルク』だった。
 ウール様と同じで、嬉しいよ。
 でもさ、リトルって小さいじゃないの!?
 まぁいいけどさ。
 サブ職は聖職ギルドにでも行って、得意を伸ばそうかと思います。




 冒険者ギルドの受付カウンターに来ている。

「サク様は八歳ですか。獣人は人族と違い身体能力が発達しています。冒険者登録には六千ジオンいただきますね」
「倍です。」
「はい。倍かかります。そのかわりに、十歳まで青銅のカードは有効ですから、決して無理はしないでコツコツと出来る依頼や、先に進む道を考えてください」

 にっこりと、受付嬢のマリアンヌさんは言う。
 獣人は八歳くらいから登録し、証明書は発行してくれる。
 しかし、いくら身体能力が高くても子供は子供。
 他のギルドのように見習いのようなものらしい。

「サク、これで君は奴隷じゃない冒険者のサクだから」

 出来上がったサクの青銅のカード。
 サクは、小さな黒い耳をぴくぴくさせ、長い黒い尾をふる。
 そう、チーム光の竜から譲られた奴隷だった男の子です。
 名前はと聞くと39番と答えた。
 だから、3と9でサクと名前を付けました。
 前世の漢字だと朔ですかね。

「じゃ、私達とパーティーメンバーってことで!」

 ノアがサクのカードに自分のカードを重ね、私も重ねる。
 すると、淡いひかりを発した。

「私達も三人組のパーティーだわ。弓と鎖と・・。サクの武器とかは?」
「・・・・・。」

 サクは、丸腰だ。
 装備も揃えなくては街の外には行けません。
 荷物運びなどさせるつもりもない。

「サクは、どんな冒険者を目指したいですか?」

 聞いてみる。
 彼は無口な男の子だ。
 名前と「ありがとう」って言葉しか聞いていません。

「わからない」

 そう言って下唇を噛む。
 こんな時はロイ爺さんがいてくれたのならと思う。
 武器や防具にはエキスパートだ。
 そう考えたら、一つある。
 ゴソゴソと、ロイ印のウエストポーチを漁ります。

「じゃじゃ~ン! 自分の武器が見つかるまでこれを使ってください」
「ちょっと、これって」
「うん。ナイフとホルダーだよ」
「わかってるわよ!言いたいのはそこじゃないの」

 ノアがぎゃぎゃうるさいが、スルーして細いサクの腰にベルトを巻いた。
 そこにはロイ印の優れものナイフを入れて完了だ。

「とても切れ味抜群だから気を付けてくださいよ」
「・・うん」

 頬を紅潮させるサクを見て、こちらまで嬉しいです。

「それってキッチンに置いてあるナイフと同じじゃない。」
「そうだよ。使ってないよね。」
「そうね」

 キッチンは今だ未使用です。
 一応掃除はしていますが、ロイ印のフライパンなどは完全にインテリア化していて、とても寂しそう。

「サク! このナイフとホルダーは大事にして。もしも、もし~もお金に困ったら、よ~く、考えて信頼ある店に持っていくのよ。決してぼったくられないように!」
「おいおいノアさんや~い」

 サクの顔が引きつっているではありませんか。

「じゃ、サクの防具を見に行ってから、今日は湿地に行こう」

 ノアが歩き出す。
 その後ろをサクの手をつないで私は歩く。

「邪魔よ!」
「みすぼらしい奴隷上がりのガキがうろつくな!」
「入って日も浅いのにブロンズカードって、どんなズルい事をしたのやら」

 出る杭は打たれる
 前世の祖母が口癖のように言うことわざを思い出す。
 人よりも優れていると、他からねたまれたり、邪魔されたりするってこと。
 今まさに悪口を言われています。
 まぁ、陰での陰湿なイジメよりは、ずっと良いことですよね。
 本人を目の前に、顔がわかりますし。

「サクは豹の獣人です。人攫いにあって、奴隷商人達に勝手に売り買いされただけ。今に凄い冒険者になります!ブロンズカードに即日昇格したいなら、プラトーダンジョンの地下で、アンデット退治をすれば一発で上がれます。ホネ助親分さんを倒すと良いですから。情報は公開しましたので。今後サクの事を奴隷呼ばわりしたら決闘を申し込みますから」

 一礼してギルドをでた。
 決闘して勝てる保証はないけど、ここはちゃんとしたいのです。
 好きで奴隷になったのではないのに、奴隷奴隷って蔑む言葉は大嫌い。

「カーラって言う時は、言うよね」
「うん。大切な仲間の悪口は嫌いです。」

 するとサクとつなぐ手が、強く握られた。

「・・ありがとう」

 それだけ言うと、下をむく。
 なんて言うか~ぁ。
 胸キュンとはこのことだ。
 弟。
 そう弟がいたらこんなかんじなのかな?
 ヴェルジュやシグルーンやロイ爺さんに会わせたいよ。


 街の防具屋さんに行くと、店主が、私に張り付いて離れない。
 もう、少女を見る目がヤバいのなんのって。
 私を、見ているのではなく、ロイ印の装備品を穴のあくほど見ているし。

「ロイ様の作品を全身にと! いったい貴方は何者ですか?」
「ブロンズカードの冒険者です」
「この街にロイ様がお帰りになられたが、そこでオーダーしたのかい?」
「へっ?」

 店主の話を詳しく聞くと、自分達が住んでいる超豪華なアパートメントの裏にロイ爺さんの工房兼お屋敷がある。
 それって赤い屋根で、煙突がたくさんある大きな家だ。
 
「あの一帯はロイ様の敷地だ。何でも冒険者ギルドのアパートメントを立てたと。それも、ドワーフ仲間の技術と感性を詰め込んだって噂だ。外観だけでも貴族のお屋敷も真っ青な代物だ」

 その通りです。

「だから、全ての部屋が、違うんだ。納得したわ。ドワーフ仲間のそれぞれの感性が現れている。なるほどね」

 ノアが、探偵さんのように推理し、一人納得しています。

「この子に合う防具を」
「とんでもない! ロイ様の顧客を俺ごときが奪うなどもってのほかだ」

 売ってくれません。
 こうなれば、ロイ様こと、ロイ爺さんに交渉しなければならない。

「ノア。」
「会いに行きたいんでしょ?」
「はい。湿地にも行かなくちゃいけないし」
「サクの防具が先。だけど予算内で。」
「はい!」

 まだまだ駆け出し冒険者の私達は、お財布の中身は厳しい。
 今回は、プラトーダンジョンの地下で魔石を拾い換金したけど、それはノアが、気絶する前にせっせと集めていただけ。
 あのホネ助親分の魔石は回収ならずだった。
 それがあれば、もう少し、サクの防具の予算に回せたのにな。
 ギルドマスターの話では、私達はベテラン冒険者のミィーシャさんに助けられたそう。
 意識のない私や、ノアを連れ出して運んでくれたんだって。
 会ったらちゃんとお礼を言わなきゃと思います。

 

 アパートメントの奥にある森を抜ける。
 赤い屋根の大きなお屋敷だ。
 カンカンと鍛冶をする音がした。

「ロイ爺さんに会えます」

 とても胸が高鳴る。
 コンコンと格調ある扉を叩くとしばらくして扉があいた。

「誰じゃ」

 顔を出す可愛らしい幼女。

「私はカーラと言います。ロイ爺さんに会いたいのです」
「ジイにか?」
「はい」

 ロイ爺さんの本当のお孫さんなのだろうか?
 ちょっと胸が痛くなる。
 きっとこれはヤキモチかもしれません。
 私は、ロイ爺さんに育ててもらったが、本当の孫ではないから。

「ふふ~ん! しばしまつのじゃ」

 そう言って幼女は室内に入って行った。
 だが、一向に戻って来ない。

「ねぇ、留守なんじゃない?」
「そうなのかな? 会いたくないとか・・」

 そう考えると、苦しくなった。
 ガチャっと扉があいた。

「・・・・!」
「・・・・!」

 お互い声が出ない。
 それは会いたいとずっと思っていたシグルーンだったのだ。
 もう言葉よりも早くに体が動く。
 ぎゅっとシグルーンの硬い腰に抱きついていた。

「いててぇ、カーラ痛いぞ」
「シグルーン、ケガしてるの?」
「ちょっとな。まぁ上がれ。カーラの仲間もな」

 家の中はとても広くて、私達のロイヤルスィートも霞んでしまう。
 それは見事な剣や槍や防具が、美術館のように飾られているのだ。
 ノアなんて、クロスボウの前でガラスに張り付いています。

「シグルーンはお婿さん探しの旅から帰ってきたんだね」
「・・あぁ、まぁな。」

 その様子だと良きお相手はいなかったみたいです。

「しばらくいるの?」
「いや、また旅に出る」
「そうなんだ・・・」

 折角会えたのに寂しさがこみ上げてくる。

「ヴェルジュもここにいるの?」
「あぁ、今は寝ている」
「寝坊かな」
「・・・まぁな」

 おかしいです。
 シグルーンの様子がおかしい!
 歯切れが悪いと言うべきだろう。

「はっきり言えばよいのじゃ。あ奴は今は回復中じゃ! わらわが強すぎての」
「だまれ! しょんべん小娘」
「誰が小娘じゃ! 大年増め」

 にらみ合う幼女とシグルーンだ。
 しかし幼女の言葉がひっかかる。

「カーラか。ばれてしまったの。まぁ、こっちに来て寛げ。別で説明してやるからの」

 ノアとサクが一緒だから、言えない事情があると、ロイ爺さんが、耳元で囁く。

 
 とても広いリビングに、ノアとサクが案内され、私は、ロイ爺さんの後を歩いた。

「今日は、どうした?」
「サクの防具をと。防具屋さんに行ったら、売ってくれなかったんだ。」

 その時の事をロイ爺さんに話すと、ロイ爺さんは大笑いした。

「ここにヴェルジュがいる」

 奥の部屋の扉を開けるとヴェルジュはベットの上で眠っている。
 ひどい火傷をしていて、回復魔法を行っているが、治りが遅い。

「どうして? こんなことに?」
「話せば長くなる。それは今夜にでもここに来たら話そう。カーラよ。お前さんの治癒魔法で助けてやれるか?」
「・・・・やる!」

 できるかどうかはわからない。
 ヴェルジュでも自身を治し切れていない。

「ワシは坊主の装備を見繕うてやろう」

 そう言ってロイ爺さんは部屋を出ていった。

「ヴェルジュ・・ヴェルジュ・・」

 体温も高くて。
 綺麗な肌がただれています。

「ヒール!」

 だけど焼け石に水。
 もっと集中し、イメージしなければ。
 ヴェルジュの綺麗な肌。
 こんなただれた肌じゃない。
 私の魔力を全てあげるから・・
 だから目を開けて!

 火傷の治療って・・。
 確か冷やす!
 そう、まずは冷やす。
 冷たい氷のうを思い浮かべる。
 水魔法なんて知らないけど、魔法はイメージと集中力。
 自分の癒す魔力の温度を下げる感じ。
 いくつもの圧縮した癒しの魔法を患部に乗せる。
 少しでも気を抜くと魔力が分散しそう。
 ヴェルジュが低く唸った。
 私の魔力も魔法もそして私を、成形しているものはヴェルジュとシグルーンが与えてくれた。
 きっと大丈夫です。

「湿潤療法って・・火傷には、そう! 乾かすんじゃなくて潤い」

 それは前世の知識。
 ちょっとした火傷を、した時にスマホで調べた事がある。
 祖母はアロエを塗ればと持ってきてくれたけどね。
 冷やした魔力を今度は潤うイメージ。
 モイストローションです。
 本当はワセリン軟膏とかだけど・・成分とか知らない。
 ヴェルジュも自己回復している。
 外と中からだ。

 どどどーっと体から魔力がヴェルジュに流れる。
 それはめまいに動悸息切れと言ったひどい症状が私を、襲った。
 膝をつきながらも、ヴェルジュの火傷が綺麗な皮膚になっていくのが見える。

「よし!」

 あともう少しです。
 だけど・・
 何だか酷く寒いで・す・・。
 そこで私の意識はなくなってしまった。






===============

 ロイ邸の広いリビングで、ノアとサクは緊張しながらカーラを待っている。

「これでも飲め!」

 ドンと置かれたのは大ジョッキーに入るミルクだ。
 お酒ではないが、大ジョッキーにミルクって・・とノアは、引きつるが、サクは、ぺこりと頭を下げ、飲む。

 この子って大物だわ~とノアも真似をして飲んだ。
 お腹がちゃぷちゃぷしている二人だ。

「坊主! お前さんはどんな武器を扱うのじゃ? ・・それはカーラに渡した解体ナイフか」
「はい。ロイ様。今朝、サクは、冒険者登録し、カーラがこの子にと」

 ノアがサクの代わりに説明すると、ロイ爺は、自分のロイ印第一号袋をゴソゴソと漁った。
 それはカーラが、していた仕草そっくりで、ノアの目じりが下がっていた。

「まだ幼いが黒ヒョウの獣人ならば、素早い身のこなしで密林のハンターだろう。そのナイフは今の坊主には丁度良い長さだが、二刀流の方がな」
「それならキッチンにまっさらなナイフがあります」
「はぁ? 予備のナイフか」
「はい。調理器具として」
「ほほぅ、カーラも料理をしておるのか」
「全くしていません」

 嬉しそうにロイ爺は、言うが、ノアの一言で、その顔はとても暗くなった。
 上げて突き落としたノアだ。
 
 ロイ爺は、ホルダーを一つに、黒竜のウロコから作った脚絆と手甲と胸当てをサクの前に出した。
 後はタンポポ綿で出来た下着に、フェンリルの毛で織ったシャツとズボンだ。
 ロイ爺の自分用と作ったシャツとズボンは、サクにちょうどいい。
 色は落ち着いた薄墨色に染めたから、若者にはどうかと思うが、サクの黒髪と合う。

「黒竜のウロコなど、何処で手に入れた?」
「たまたま落としていきよったんじゃ。」
「はん! 勝負したんじゃないのかよ」
「死ぬわ!」

 シグルーンは、つまんねーと大きなカウチに寝ころんだ。

 本当に自由な女性だとノアは思う。
 ウール様とは違うカッコ良さだと。

「坊主、その脚絆や手甲には隠し武器が仕込める。お前はアサシンやシーフがあっているかもな」
「暗殺者や盗賊ですか。それならカーラが喜ぶかも。潜伏や隠密のスキルが欲しいって言っていたけど、リトル・ベルセルクって記録されていたから。複雑そうな顔をしていました。」

 ノアの言葉でシグルーンはむくっと起き上がった。

「ほぅ~小さな狂戦士か!」
「はい。ウール様って言う一日でA級冒険者になった伝説のお方と同じなのですよ。颯爽と歩く凛々しいお姿で、カッコよく優しいのです。」
「誰がじゃ?」
「ロイ様、ウール様です。」

 ほわほわ~とノアは憧れのウールについて語る。
 ロイ爺がシグルーンを見れば、当然と言いたげな顔だ。

「娘さんはハンターじゃな。どれ、武器を見せてみろ。」
「えっ! ロイ様に見せれるような・・でも父が作ってくれたもので」

 おずおずとソファーに立てかけていた弓矢を渡した。
 ロイ爺は、その弓矢を見る。

「ニレの弓か。一般的だな。お前さんを思い作った父親のこだわりがある。見てみろ」

 ロイ爺が示す弓の握りの部分に、極々だが、そこに指を当てるとぶれにくいように、細工してあるのだ。

「全く気付かなかった・・」

 ノアは意識してその部分に触れる。

「ちょいと。外の木の実を打ってみろ」

 外に出て大きなテラス窓をロイ爺は指さす。
 ノアは緊張しながらも、外に出た。
 ちゃんと父親が細工してくれた部分に指を当てる。
 今まで気付かなかったが、言われてみてその位置が一番綺麗な構え方になる。
 赤い木の実。
 それはノアの得意とする静止状態だ。

 しゅんーーーっ!

 ノアの放つ矢は、木の実のど真ん中をぶち抜き落とした。
 続けて、三本の矢を構える。
 今度は、木の実を傷つけないように落とした。

「すごいの。お前さんはこれからもカーラと共に、おるのか?」
「そのつもりです。彼女と私は名コンビなんですよ。彼女が捉え、私が急所を貫く。」
「ほう~!合格じゃ」

 何が?とノアは思うが、ロイ爺は屋敷の中へ入っていった。
 そして、サクにさっさと着替えろと言うと、怪我をしているシグルーンに、サクの相手をさせるのだ。

「なんじゃ? そのへっぴり腰!カーラを思い出すぜ! 」

 ドカッとサクの尻を蹴飛ばす。
 
「そのナイフでかかってこい! 大事な者や自身をまもらなきゃ雄じゃないんだぜ!俺様は雌だが、次こそは負けねー」

 何を言っているのかとノアは首をかしげる。

「あ奴はわらわにこてんぱにされたのじゃ」

 スパイシーケルウスの干し肉を食べる幼女が、クスクス笑いながらノアの横にいた。

 幼女の言う意味はわからないけど、いつの間?である。

 どれだけ時間が過ぎたのだろう。
 サクはシグルーンのしごきで、リビングのソファーで、ぐったりとしている。
 ノアはロイ爺が、持って来たロイ印の弓を手にしている。

「これは契約じゃ。そなたの腕はまだまだ伸びる。これからワシらにも大いにかかわるが、これは内密じゃからの。たがえるな。坊主もじゃ」

 ぞくぞくっとノアは身震いした。
 伝説のブラックスミスと呼ばれるロイが怖い。
 でもロイ印の弓も手ばなせないと、ノアは葛藤したが、弓を選んでしまう。

 がちゃりとリビングの扉があいた。

「カーラ!どうしたの?」
「カーラ」

 ノアとサクが駆け寄ろうとしたが、カーラを抱き上げたヴェルジュが、人差し指を唇にそっとあてる。

「お前、もういいのかよ」
「ええ。私は弱いくせに生には貪欲なのですよ。この子が助けてくれたので、早く完治しました。」

 大事な大事なものを抱きしめる。

「ちょいと無理をさせたかの」
「ほんとにロイ爺は無理をさせますよ。ノア、それに・・」
「サク・・オレはサク。カーラがサクって・・」

 サクにしてみれば、珍しく自分からそう言った。
 シグルーンのしごきで何か変わったのだろうかと、ノアはサクの成長を喜ぶ。

「ノア、サク。カーラは一晩こちらで寝かせます。魔力を使い過ぎたみたいですから。私が一晩中抱っこしていれば、明日にはまたあなた方と冒険できますから」

 その微笑みは聖母のようで、ノアとサクはぼ~とし、頷くのだった。





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