トンネルを抜けると異世界だった~荒れ狂うと言う名を持つ乙女~

ゆき

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23 情けは人の為ならず

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 ギルドマスターの執務室に、アイアンカードからブロンズカードへ落ちたダニエルと、鼻ピアスのガイルに、厚化粧のミラーが呼ばれていた。
 
「お前たちの腐った性根はちょっとはマシになったか?」

 凄い威圧でランドグリスは三人組を見る。

「は、はい。もう二度と新人狩りなど致しません」
「お、おなじく・・」
「もう、ごめんよ! 本当に・・悪かったわよ」

 それぞれに反省はしているようだ。
 
「もしもだ。また自身の私腹を肥やし、または快楽のために過ちを犯すのなら・・」
「俺達は快楽の為じゃなく、金が欲しかっただけだ。」
「そうよ! 決して殺しを楽しんでたんじゃない」

 こいつらの救いはそこだけだとランドグリスは思った。
 これが、殺しを楽しむのが目的ならば、救いようはない。
 
「お前達は、これから発表するが、ワースティアの支援部隊に入ってもらう。サングリーズルが大暴れした地だ。そこで惜しまず働くこと! 他のメンバーは希望者として募る。」
「まさか!」

 ダニエルは嫌な予感がした。
 それは、あの筋肉凶暴女が一緒に行くのではないかと言うことだ。

「残念ながらウールヴへジンは行かない。何でも第二の弟子を鍛えるらしく、しばらく顔を見せないと、白の聖女様がおっしゃっていた。代わりに、筋肉凶暴女よりも恐ろしい奴を引率させる」

 その言葉に三人組は顔の色を無くした。






====================



 スパイシーケルウスを探しながら、燻製器で、森狼や、ビッグハニーやらの燻製作りにいそしみ、サクはシグルーンと日々訓練をし、ロイ爺さんの紹介でサブ職の料理人を取得する為に、調理師ギルドの登録をした。
 そこで、ロイ邸の見習い料理人となるのだけど、先生はロイ爺さんだそう。
 ロイ爺さんって・・・。
 カードを見せて欲しいです。
 って言うか、料理ができるなら、洞窟でも作ってくれたってよくない?
 干し肉や、乾燥薬草以外は.生でしたから。

 私も聖職ギルドに登録したよ。
 治癒師を目指したい。
 ヴェルジュの酷い火傷を治療した。
 もっと治療の事を学んでいればと思ったから。

「だったら、最低週二回は治癒師見習いとして働かなくちゃいけないでしょう?」
「そうなの?」
「そうでしょう」

 ダンクの店に立ち寄り、カリンちゃんが焼く胡桃パンを食べながら冒険者ギルドへの道を、ノアとリズと私は歩く。
 
「ほう~! この胡桃パンというものはふわふわしておるの~」

 リズも気にいったようだ。
 肩車状態は、もう、彼女の定位置となっている。

「じゃ、私もカーラが、治癒師見習いの間は、猟人としてやるわ」
「それって冒険者ギルドと同じじゃないの?」
「違うから。やることは同じでも、伸び率がちがうよ。」

 伸び率
 それは、それに特化したほうが、グングンと上達すると言う事だそうだ。
 冒険者ギルドで、武器を剣とする。
 しかし、戦士ギルドで、剣士として剣を持ち、訓練や討伐などしたほうが、上達が早い。
 剣士をメインに幅広く動ける冒険者をサブ職にする者もいる。
 メイン職とサブ職は、使い様なのだそうです。
 ノアは狩人。
 スキル『鷹の目』を習得する為だと言った。
 
「これからいそがしくなるね」
「サクは、行動が別だから、一応冒険者パーティーから抜けたけど、よかったの?」
「うん。今はシグルーンとロイ爺さんが、鍛えているから。」

 一緒にまたクエストや、冒険をするようになったら、またパーティーを組む。
 その時は、彼も戦力になる。
 ゲームならば、初期値を上げているのだ。
 戦い方も知らずに行くより、絶対にサクの為であり、私達の為だと思うのです。


 
 冒険者ギルドに行くと広いホール内が騒がしい。

「どうしたのじゃ?」
「どうしたのかな?」
「ちょっと見てくるわ」

 ノアは私に、大事な弓矢を預けた。
 人をかき分けてゆく。

「ワースティアの復興支援を募るか・・行ってもいいけどな」
「ブロンズカードに上がれるらしいぞ」

 そんな声が聞こえた。
 ワースティアって言えば、ヴェルジュがサングリーズルと戦った所だ。

「ふわふわをもっとじゃ~」

 吾知らぬ顔で、胡桃パンを催促するリズです。
 ロイ印のウエストポーチから、焼きたて胡桃パンを取り出して渡すと、それは美味しそうに食べている。

 ノアが、戻って来た。

「サングリーズルの被害で、ワースティアの街が大変みたい。だから、各街の各ギルドに神王様からの依頼だそうよ。神王様! このルリジオン神国のトップからの依頼」

 ノアが、とても興奮しています。
 太っ腹な方だと思う。
 いったい国の予算をどれくらいまわすのか?
 
「おーい! 皆、聞いてくれーーーぇ」

 ホールに響くギルドマスターの声に、皆は注目した。

「ワースティアの街への依頼だが、報酬は金じゃない!」

 その言葉にブーイングが飛び交う。
 ノアまでぶうぶうと言っている。

「聞けぇぇーーー!」

 その声は皆を黙らせる。
 膝を付く者もいた。
 ノアもその一人だ。

「ほほぉ~中々の威圧じゃな」

 リズは面白そうに言います。
 はい!
 私も平気です。
 シグルーンやロイ爺さんの方が格段に、恐ろしいもん。

「国は支援として、物資の資金と移動や滞在費は出してくれる。だが、そこでの人件費は、ボランティアだ。そこで、各ギルドは、その者の働きに対し、ランクアップのポイントを与える。」

 生産職のギルドの者は、自分の技術を伸ばすチャンスだろう。
 多分色々な物が破壊されている。
 聖職ギルドならば、怪我人もいるだろうから、治癒師は出来るだけ出すのかな?
 だが、冒険者ギルドでは、力仕事がメインになる。
 
「俺達は行かねーぇ」
「やめとくわ」

 ブロンズカード以上の者は、ホールから出て行った。
 お金にならないのなら、他のクエストをこなす方が良い。

「私、行きます。」
「俺達も」

 それは青銅のカードの者達だった。
 青銅のカードの期限は一年間。
 だったら、この支援部隊に入り、ランクアップしたいと言った。

「カーラはどうする?」
「そうだなぁ~私は行くなら聖職ギルドから行きたい。だって治癒師見習いだし。」

 サブ職だけど、そこを伸ばしたいのです。

「私が行ったって、何にもできないしな」
「そうかな? 一人の力は微々たるものでもさ、集まれば大きな力になるもんだよ。何もできないじゃなく、何が出来るのか、だと思います。」

 情けは人の為ならず。
 人に親切にしておくと、それは巡り巡って、やがて自分の為になるってことわざもある。
 今、困っている人がいるのだ。
 もしもこの街が、同じような事になったら助けて欲しい。
 

「わらわも行くのか?」
「リズさんも。私と行ってくれたら嬉しいですね」

 知らない人ばかりの中は、ちょっと不安だし。
 もう、一体化しているような私とサングリーズルのリズだ。
 それに、自分が暴れたら、こんなになったよと、知らなくてはいけないと思うしね。

「そうじゃな。ノアよ、そこでスパイシーケルウスを射止めよ。」
「え~っ! いたらね」

 とても嫌そうにノアは返事をした。

「ノアが一緒に行ってくれたら心強いな」
「仕方ないわね! カリンちゃんの胡桃パンを、カーラの収納ポーチにたくさん入れて行くってのが条件よ」
「了解しました。」

 焼きたて胡桃パンをたくさん入れて行きます。

 
「カーラちょっと頼みを聞いてくれ」
「あ、はい」

 ギルドマスターが、ちょいちょいと私を、呼んだ。

「悪いが、商業ギルドで用意する物資を、その収納ポーチに入れて運べないか?」
「・・どのくらい入るのかはわかりませんよ。」
「あぁ。入るだけ。」

 食べ物とかなら、私のロイ印収納ウエストポーチの方が良い。
 持って行ったら、腐っていたり、カビカビだったりは最悪だ。




 ===============

 プラトーの街にあるひと際、大きく立派な建物。
 それは商業ギルド。
 受付カウンターで、冒険者ギルドマスターからの紹介状を見せる。

「なんか・・お金持ちって感じの建物」
「当たり前よ。お金が飛び交うギルドなんだから」
「そうだよね~」

 商人がわらわらいるんだからそうだろう。
 ノアは一人じゃ狩りはきついからと、私に同行してくれていた。
 リズは定位置です。
 ロイ爺さんに預けても良かったのだが、今はアパートメントに一緒にいるしね。
 サングリーズルと思うと怖いが、今のリズは可愛いです。

「カーラ、ふわふわと、干し肉を所望するのじゃ」
「さっき食べたばかりだよ」
「太るわよ」
「太らぬ! ノアは、もうちっと膨らむとよいぞ~。板切れじゃな」
「ぐさぁ!」

 ノアはペッタンコの胸を押さえた。
 まだ、十三歳なのだから、これからですよ。

 しばらくして、身なりが良い紳士が現れた。

「ミシェル・クラウドです。カーラさんですね」
「はい。支援物資を運ぶように言われました。」

 ぺこりとお辞儀した。
 するとリズが、落ちそうになり、慌てて両腕で、捕まえる。

「妹さんですか?」
「違うのじゃ。わらわはリズと申す。カーラはわらわの護衛車じゃ」
「違うから!」

 思わず強く言ってしまったよ。

「私達は冒険者パーティーですの。おほほほぉ」

 誰?
 上品さを出しているノアです。

「そうですか。では早速ですがこちらへ」

 ミシェル・クラウドさんに案内されて向かったのは、商業ギルドの裏。
 たくさんの大きな倉庫があり、大きな水路には、船がたくさん行き交っている。
 
「陸路と水上とで、交易しているのです。」

 このプラトーの街に、こんな場所があったんだと初めて知りました。
 水路はルリジオン神国を流れる大河につながる支流に繋がっていて、船で色々な街に物資や人をを運ぶ。
 ワースティアの街へも、船で行くのが、一番早く、そしてたくさん運べる。
 だが、それよりも、私のロイ印の収納ポーチに入れて運ぶ方が、効率が良い。
 そりゃ、人だけ運べばいいしね。

「カーラさんの所持する収納ポーチの性能を知りたくて、ランドグリス氏にお願いしました。」
「どうして?」
「有名ですから」

 有名?
 なんのことやらと思う。

「ロイ様がお作りになった、あのオムツは、カーラさんが、ヴァイオレットさんに、売ったんじゃなかったのですか?」
「・・・!」

 そこから~ぁですか!?
 詳しくは、ヴァイオレットさんのお父さん。
 あの孫にデレデレしていたオヤジだ。
 そう言えば、ウエストポーチから、大量のオムツを出した。
 そして、全身にロイ印をまとう私。
 見る人は見ていたのです。

「その弓は・・」
「売りません! 必死に死守したんです」

 ノアはロイ印の弓を、ミシェル・クラウドから隠す。

「失礼いたしました。ではその・・」
「ダメです。」

 私も両手を後ろに回した。
 ドローシとレージングルは譲りません。

「冗談はここまで。では、荷物をその収納ポーチに入れていただこう」

 スタスタと前を歩くミシェル・クラウドだったが、絶対に冗談ではなかったと思うわ。
 だって、目が真剣に武器をみてたもん。

 
 倉庫の中には、小麦粉の袋やら、果物を入れたコンテナに、水の樽や干し肉など、様々な食料。
 違う倉庫には木材や、漆喰やレンガの山。
 また違う倉庫には大量の布や、綿やら。

「入るの?」
「やったことがないから・・取り敢えずどれくらい入るかな」
「胡桃パンのスペースだけは残してよ」

 ノアの目が訴えます。
 他はどうでも良いが、胡桃パンだけは、絶対にと!

 まずは食料からと、ウエストポーチの蓋をを開き、その開いた口を、大きなコンテナに触れた。
 
「うわぁ! 魔法? これって魔法?」

 ノアが、とてもうるさいです。

「わらわも~」

 リズが肩から飛び降りる。
 そしてウエストポーチをと、これまたうるさい。

「わかったから。」

 そう言って腰からベルトを外し、ポーチを渡して、やり方を教えました。
 気持ち良いくらいに吸い込まれて行く様子に、リズもノアも大興奮している。

「歩けるじゃん」

 飛び回るリズを見て、ボヤキがはいってしまったし。

 どれくらい時間がたったか・・。

「カーラよ。わらわは働いたぞ。これでジイと同じくブラックカードかの~ぉ」
「いやいやいやいや・・リズさん。ブラックカードはレジェンドだから。でもお疲れ様です」
「うむ。 今夜はスパイシーケルウスを所望するぞ」
「それ、いつもだから」

 ノアも言います。
 いつもグサッと言われていますからね。

「カーラさん。そのポーチを是非とも・・」
「譲りません!」

 全ての荷物が入ったロイ印のウエストポーチだ。
 ミシェル・クラウドの目が怖いくらいに血走っていたし。
 
 
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