トンネルを抜けると異世界だった~荒れ狂うと言う名を持つ乙女~

ゆき

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24 昔語り

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 ワースティアの街へ行く前の夜。

「ほほぉ~。貧乏くさい衣装じゃの」
「リズさん!これはパッチワークって言うの。」

 ノア曰く、呪いの裁縫で作ったパッチワークの部屋着を、リズにも着せる。

「俺も?」
「そうです。四人お揃いなのですから」

 全員がパッチワークの部屋着に着替えて夕食をいただきます。

 商業ギルドのミシェル・クラウドから、スパイシーケルウスのお肉を貰った。
 今回、ワースティアの街へ運ぶ荷物を、ロイ印のウエストポーチに収納したからです。
 中々の太っ腹なお人ですね。
 本人は、全くお腹も出ていない、イケメン中年男性でしたよ。

 それで、今夜はステーキの晩餐会だ。
 明日、サクを残して、私達は、ワースティアの街へ行くから。

「旨いの~これは旨いの~!サク坊は上手じゃ。おかわりを所望するぞ」
「う、うん!」

 サクはリズから、空っぽの皿を受け取った。
 やっと、ロイ印のフライパンが、使われるようになりました。
 でも、私とノアは触ってはいけない。
 スィート・キャンディーシリーズと言う調理器具は、サク専用なのだ。
 部屋中に食欲を刺激する香りがする。
 
「このスパイシーケルウスは、ローズマリーが好きだったみたいね」
「美味しいね~」

 偏食鹿は、自分の気にいった植物しか食べない。
 だから、食べる植物により、味が変わる。
 ノアは今、食べているスパイシーケルウスの味から、偏食鹿が何を好みにしていたか言ってのけた。

「違うよノア。このスパイシーケルウスは、レモンバームを食べていたんだ。俺がローズマリーを足したから」

 キッチンからサクが言った。

「そ、そうね。そう言われたらレモンのような・・うん。美味しいわ」
「ぷはぁ!」
「カーラ!」

 思わず吹き出してしまう。

「わらわはもっとピリピリ感も好きじゃ~」
「だったら黒胡椒を多めにするよ」
「サク坊を、わらわの料理人にしてやろう」

 サクはキッチンで、炎の料理人となっていた。
 彼はとても努力したのだろう。
 手には、豆がたくさんあり、切り傷や火傷の跡も。
 治すと言ったけど、このままでと言われたわ。
 その傷は、サクにとって努力の証なのでしょう。
 彼は嬉しそうに笑う。

「はい。できたよ」

 リズの前に置かれるステーキからスパイシーな香りが漂う。

「これは~なかなかじゃ!」

 黒胡椒多めはリズの舌を満足させたようだ。

「俺、こんなに料理が楽しいって知らなかった。シグルーン様との訓練も楽しい」
「ほんとう? 泣かされているのに」

 ノアが、胡桃パンを食べながら言う。
 サクはちょっとハニカミながら頷く。

「俺・・嬉しいんだ。確かにシグルーン様の訓練は厳しいけど、俺を痛めつけたいからとかじゃなく、俺を強くしてくれるためってわかるから。ロイ様も、厳しいけど、そのおかげで、カーラ達が美味しいって笑ってくれる」

 もう、きゅ~んです。

「サク~!」
「サク!」

 私とノアで、サクを抱きしめる。

「わらわもじゃ~」

 リズまでサクの頭の上へ乗ります。
 賑やかな食卓って最高に贅沢で幸せの時間だよ。



 
 洗い物は私とノア。
 それが終わったら、並んで歯磨きし、皆でキングサイズのお姫様ベットで眠るのです。
 他にシングルベットがふたつあるが、まだ未使用。
 子供が四人くらいではお姫様ベットは余裕があるのですよ。

「サクは明日からシグルーンと訓練合宿ですね」
「うん。シグルーン様が、特別授業をしてくれるって」

 特別授業とは、どんな特訓が待っているのか?
 
「なんか、明日からの事を思うと眠れない~」

 ゴロゴロとノアがベットの上で転がりだす。

「よし、わらわが昔語りをしてやろう。今夜は気分が良いでな~」

 コホンと一つリズは咳をする。

 私は枕から頭を上げて、リズを見た。
 サクも私の横で、リズを注目する。
 ノアは、私の膝を枕にリズを見ている。

「おっ! もっと注目してよいぞ~」

 普通、そんなに見ないでとか言わない?
 注目されてテンションを上げています。

「昔、それは神々がまだこの人間世界にもいた頃じゃ・・。精霊と神の間に産まれた、それはそれは可愛い~姫がおりましたとさ」

 リズは綺麗なグリーン色の瞳を閉じる。

 精霊と神の間に産まれた可愛いお姫様は、ある日、人の世界へやって来た。
 歩いていると、残酷なまでに殺された娘の遺体があった。
 可哀想に思い、お姫様はその遺体を埋葬してやろうとしたが、それは残酷な思念の塊だった。
 お姫様は、その残酷な思念の塊に捕らえらえ次第に姿を消し変えた。

 ごくりと、ノアの喉がなり、サクが、私の腕にしがみついている。
 これってサングリーズルの過去のお話ではないの?
 そう思いながらもリズの話を聞いた。

 残酷な思念の塊は、お姫様を助けようとした大蛇をも捕える。
 そして大きくなった残酷な思念の塊は、その姿を凶暴な魔獣へと変え、暴れた。
 何度も、聖なる者により封印されるが、残酷な思念はまた大きくなる。
 そしてまた悪意ある者に封印を解かれを繰り返した。

「たおせないの?」

 ノアはリズに聞くと、リズは瞳を開く。

「もう、お姫様と残酷な思念は同化しておるのじゃ。それにお姫様は、精霊と神の間に産まれたものだしの。唯一、蛇がお姫様を守ってくれておるの~。残酷な思念は切り落とされても、また人々の中にある残酷を自分の糧に大きくなるのじゃ~」
「それって・・」
「そうじゃ、カーラ。サングリーズルのことよ」

 リズの言葉に、ノアと、サクは大きくのけぞる。

「そ、それって、S級冒険者とウール様が倒したんじゃないの?」
「そうじゃな。大きく膨らんだ残酷な思念を切り落としたのじゃ。ヘルヴォルが使うギンレイヴと言う斧には神々が残されたものという名じゃな。それはそれは見事に切られての~」

 すっきりしたようなリズだ。

「お姫様と蛇は、元に戻らない?」

 サクはお姫様と蛇が哀れだと言った。
 それは目の前にいるリズなんだけどな。

「もう、残酷な思念は、お姫様にくっついて離れないでの。染まった布じゃ。」

 諦めている。
 そう思う。

「ねぇ、リズ」
「なんじゃ?カーラよ」
「どうしてそんな昔語りを話してくれたの?」

 リズは、優し気な目をして、私達を見た。

「どうしてだろうかの~。ただ残酷な魔獣にも、そんないきさつがあったと、誰かに聞いてほしかったのかもな~」
「まるで、自分のことのように言うのね」

 ノアが、ど真ん中に返す言葉に、私はひきつる。
 だってこれは極秘情報だから。

「まぁな。わらわも蛇に守られているし、高貴な姫様じゃからな」

 そう言って頭から蛇を出す。
 それには、私もびっくりして、声を出した。

「おや? お前さん、色が変わっておるのかぇ」

 すると蛇はわかるらしく頷いた。
 はじめは真っ白な大蛇で、それから真っ黒に変化していたらしい。
 今は薄い青。
 

「ビーストテイマー? それともサマナー?」

 ノアが、そう言うと、リズは少し首を傾げる。

「獣使い・・?召喚師? どっちじゃ、蛇」

 蛇に聞きますか?
 蛇も、はてなマークにならなくても・・・。

「蛇に名前はないの?」
「ないの? サクは名前があった方が良いのかえ?」
「うん。俺はカーラにサクって名前を付けてもらって嬉しかったよ」

 私もシグルーンに付けてもらって嬉しかったと言いたいが、経緯が経緯だし、暴れ狂うってね~。

「ではチュールじぁな。お前はチュール。勇敢な神と同じ名を与えてやろう」

 ぱぁぁと、チュールと名前を付けられたリズの蛇が光った。
 今後とも守れと、偉そうにリズはチュールに言った。
 まぁ、勇敢な蛇だったのだ。
 リズを助けようとしたのだからね。
 次第に眠気が襲う。
 四人と蛇は、キングサイズのベットで、仲良く眠りについたのです。
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