現代乙女ゲー世界に転生したら主人公のモブな社会人な姉でしたがゲームに出ない陰気な先生に溺愛されました。

からどり

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プレゼント交換

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プレゼントの交換が始まった。

「これ、龍一さんに」

私が龍一さんのためにずっと持ち歩いていたラッピングバッグに入れたマフラーを渡すと彼は目を輝かせて受け取ってくれて、子供みたいにすぐに開けてマフラーをとりだすと首に巻き出した。

「ありがとうございます。一生、一年中大事に使います」
「そんな……そこまで大切にしてくれなくても大丈夫ですよ」

「一年中」っと笑いをこらえているミサキとミール。夏なんか特にマフラーを使わないし、私も一年中は使わなくていいと思うわ。ただ、寒くなる頃に使ってくれればそれでいい。でもすごく喜んでくれている様子に私も嬉しくなった。龍一さんが使ってくれるなら手作りしてよかったと思う。

「それと二人に私からね」
「欲しかったバッグだ!ありがとう!大事にするね」
「へへ、分かってるじゃん。さすが姉貴だな」

ミサキには欲しがっていたバックを、ミールにはこっそり棚に入れてあげようと思っていたクッキーボックスセットをプレゼントしてあげた。

「俺からも二人に。使ってもらえたら嬉しいです」

龍一さんからは私とミサキに色違いでおそろいの手袋をプレゼントでもらえた。

「俺様のは?」
「コレでいいならやる」

無造作に渡したのは私達に渡してくれたプレゼントと同じ袋。中にはメンズの手袋。

「食い物じゃないのかよ。まっ、もらってやるから使ってやるよ」
「いらないなら俺が自分で使うから返してくれていいんだぞ」
「姉貴達が見てるんだぜ。心広いの見せとけよ」

人前でプレゼントを交換するのに照れてるのかしら。仲が良いわね。


ミサキからは龍一さんと私はおそろいのマグカップ、ミールにはキャンディーの入った可愛いコップだった。

「ミールは何かくれないの?」
「わりーな。俺様は願いを叶える方法のため以外はアイテムを人間に渡せないんだ。妖精界の決まりだ」

妖精には妖精のルールがあって、私達と混ざりあえないことを突きつけられる。

「そっか。でもミサキがお世話になってるからそれだけで十分よね」
「そうだね。それよりあおいさんのプレゼント開けてみようよ。前みたいな木彫りの置物じゃないといいけど」

白い袋のリボンをほどき、袋をあけると丸くすべっとして角みたいなものが二本ついた黒いものがあらわれた。

「……」

袋から出てきたのは、私が思っていたより大きくて立派な黒犬の木彫り人形だった。それも一匹じゃなくて数匹、大小あわせて六匹の犬が下になる犬に乗っかるような姿で縦に並んでいた。大きさは一メートル弱あるだろうか。目もつぶっていない、リアルな黒犬の顔をした犬達はみんな口を閉じていてまるで本物のようだった。木彫りにしては軽いと思ってヒックリ返してみると中がくり抜かれて空洞になっていた。重さに気を使って軽量化したのね……。

「えー、『トモヨ様、ミサキ様、メリークリスマス。先日はお世話になっておきながらお礼を贈るのが遅くなってごめんなさい。この子たちは私が作ってみました。木彫りのワンちゃんです。どうか末永く仲良くしてください』だって」

メッセージカードを読んだミサキが言う。

「こんなすごいの作れるなんてあおいさん器用だね……お姉ちゃん」
「そうね。意外な一面だわ」

私とミサキは口に出さないけど目を合わせれば分かる。これ、どうしようって思っていることを。

「とりあえず下駄箱の横の隙間に置いてこようか」
「俺、持ちますよ」

龍一さんが木彫りの黒犬を持ってくれて私は置場所を伝えるために一緒に玄関に向かった。

*******
ミサキとミールは「コンビニ行ってくる」と言って出ていき、龍一さんと二人っきりになったリビング。

「あの、ともよさん。実はもう一つプレゼントがあるんです」

そう言って鞄から取り出したのは長細いしっかりした箱。龍一さんが蓋をあけると中には一粒パールのネックレスが入っていた。

「好みがあるのは分かってるんですが、コレを見た時にトモヨさんに似合いそうだと思って」

「嬉しい……すごくうれしい!」
「俺がつけてあげるので見せてください」
龍一さんからプレゼントされたネックレスはきっとどんな服にも合うだろう。
彼が腕を回して慣れない手付きでつけてくれる。いつもならキスしてしまう距離の近さだから私はそれさえもドキドキしてしまう。
アクセサリーに詳しくない彼なりに一生懸命に悩んでくれたんだと思うと愛しさが溢れて正面を向くと頬が緩んでしまう。

「思った通りよく似合ってる。俺のお姫様からキスのお返しが欲しい」

彼が私の肩に手を置き、軽く抱き寄せてくるから私も身をゆだねて龍一さんに顔を近づける。
彼が私の肩に手を置き、軽く抱き寄せてくるから私も身をゆだねて龍一さんに顔を近づける。そして私から唇を重ねようと―――

バタンッ!

突然、リビングの入り口で音がしたのでそちらを見るとミサキとミールが立っていた。二人は買い物袋を手に提げてドアの影からこちらを覗いている。

一瞬の間があって、私達に気づかれたことに気づいた二人は慌てて寝室の方に駆け込んで行った。その光景を見て私は怒られた子犬や子猫が逃げる動画を思い出してつい笑ってしまう。

龍一さんは明らかに不機嫌な顔をしてドアをジッと見ていたので、彼の頬を両手で挟んで私の方を向かせて触れるだけのキスをした。すると彼は驚いて目を丸くしていたけれどすぐに笑顔になってくれて私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「さっきは大人気なくてすいません」

彼は照れ臭そうに笑って頭をかき、耳元に顔を寄せてきて言った言葉に、今度は私が目をまんまるにする番だった。

「でも明日は二人きりだから必ず続きをしましょう。いつも以上におねだしていいですから」

それは、明日もデートだし、町はどこも混むから龍一さんの部屋で過ごす予定だけど……ポッポッと熱くなった頬を両手で押さえて顔を伏せる私。恥ずかしがる私に優しい声がかかる。

「かわいいですね。そんな表情をされるとまた困らせたくなるな」

もうっ。どうしてこの人はこんなに恥ずかしい言葉を言ってしまえるのよ。だけど来年も再来年もずっと一緒にいたいな……。そう思って頬を押さえたまま彼の胸に頭を寄せて呟いた言葉。聞こえていたかどうかは分からないけど、龍一さんの手で強く抱きしめられる。それだけで十分だった。
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