現代乙女ゲー世界に転生したら主人公のモブな社会人な姉でしたがゲームに出ない陰気な先生に溺愛されました。

からどり

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しゃーねーからな :ミール視点:

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副担長山って感じで俺様は学校の廊下を一本道にしたような精神内を歩く。
副担のくせに妖精の俺様にこんな役させたんだ。ホールケーキの5個くらいは捧げさせないと俺様の気は収まらね―ぞ。そんなこと考えながら前に進む。

あいつの家族や数少ない友達、教え子達との記憶がたくさんの写真で飾られ、幾つものテレビの中でドラマ番組みたいに流れていた。たまにクマ人形を含めクマグッズやら本の詰まった棚やらがあって面白みのない精神構造だった。

副担長山のくせに俺様に一言も相談なく悪魔のゲームを受けやがってよ。時間を巻き戻して階段から落ちた二人を庇ってカッコつけて助けようとしたくせに自分が一番大怪我しやがって。しかも悪魔に意識まで奪われてざまあねえぜ。

大体な、副担含めて姉貴もミサキも妖精のこと過信し過ぎなんだよ。俺様と二人になった途端、ミサキは泣けば言うことを聞くと思ってるのか「先生を助けて」って泣きつく。
生死に関わる願いなんざ大天使でも制約があるのに試験中の俺様に頼むな。胸が痛くなってマジ困るぞ。
ミサキは泣き止んで、姉貴たちのところへ戻った途端にビービー泣いて困るし、慰めてくれるはずの姉貴も細い目が溶けてなくなるくらい泣いて収集がつかなくなってんだぞ。長山のくせに!

つーか、話は変わるけどよ。行く先々にいる悪魔の手先達。あいつらが最もヤバい。見張ってる悪魔に「ハ ミンナ ト トモダチ」って言って俺様のハッピーポイントワイロを渡したら「友達~!」って簡単に通してくれた。もうやばいな。いろいろやばい。

奥に進むと閉じたドアが見えた。その近くにはテレビがあってミサキ達とクリスマスをした時のが流れていた。クマグッズがまわりにあるし、どんだけクマを集めるんだとウンザリした。

俺様だからはっきり分かる重要なドアの見張り二匹にも友達~!をしたら普通にドアを開けてくれた。マジやばい。見張りの意味ない。あいつ、悪魔として尊敬されてなさすぎて敵なのに悲しくなるわ。

行く先々に見張りを置いていたのにドアの前に立つ俺様を見て悪魔が驚いていた。

「なぜ!?」

「ミンナ友達」
「バカにするな!」

今までしたみたいに1ポイントを投げつけてやったが悪魔は流石に懐柔されなかった。

アホなやり取り中、副担長山の部屋でよく見たソファで悪魔に膝枕されているバカは動かなかった。意識でも朦朧としてるのか?いつもならツッコむのにな。

「籠絡されずによく頑張れたな。だけど精神を眠らされたか」

「違うわよ。彼は自ら眠っているの」

「どっちでもいいさ。俺様はこれを渡しにきただけだ」

マフラーの入った袋をポンと投げつけてやると悪魔が掴んだ。

「これは……?ただのマフラーじゃないの。驚かせないでよ」

悪魔に警戒されないよう袋には副担長山の精神世界で見つけた普通のマフラーを入れてある。

「その通りだ。龍一に巻いてやってくれよ。んで、俺様はこの姉貴手作りマフラーだ」

龍一に向かって、龍一なら分かるだろうマフラーを振り回す。

「と…もよ……かえ…せ」

よっしゃっ、やっぱり思った通りの反応だ。

2。そしたらぜ」
「おまえっ?!まさかっ」

悪魔が取り乱す様に俺様は笑ってやった。

「ば…言うな…はや…かえせ」
「ダメッダメッ!私はここよ!貴方が愛する私はここ!」
「早くしないと俺様がつけちゃうぞ?ほら、かえせって言ってみ?」

「かえせ」

よっしゃっ、ついにだ。

「そうだ。龍一はと言った。チンケな悪魔は三度繰り返す人間の言葉を拒否できない。龍一を姉貴達のところに。」
「卑怯よ!そんな屁理屈でっ!ここは精神世界なのよっ!ルールに」
「背いてないぜ?実物のマフラーじゃないからな。なんせこのマフラーは姉貴の精神から持って来た龍一のために編んだマフラーだ。龍一にとって生きる意味の象徴。精神世界だからこそ現実世界より深く意味があるものだってお前も知ってんだろ。それにな、龍一はとは言ってない。最初に『トモヨ、かえせ』って言ったろ?あいつはな、と言おうとしたんだよ」

怒りと焦りに顔を歪める悪魔に俺様は憐憫の情を禁じ得ない。

「光が差し込んできたな。俺様は平気でも悪魔のお前にはキツいだろ。勝負は俺様の勝ちだ。早く出てけよ。二度と来るな」

俺様の屁理屈に負けた悪魔は慟哭を残して姿を消した。副担長山の精神世界であって悪魔が作った世界じゃないから崩壊なんてしないが、姉貴の名前ばかり呟く副担長山は放っておくと危なそうだ。

「解毒くらいしてやるから拗らせんなよ」

悪魔のスリープと精神を弱める毒を妖精の力で中和してやる。

「頭がはっきりしてちょっとは話せるようになったか?」

「頭が痛い」

「だろうな。これ以上はムリだから我慢しろよ」

俺様はソファの肘掛けに腰掛けた。

「ずっと気になってたんだけどよ。なんで厳重に鍵してる部屋に逃げなかったんだよ。悪魔がカギを外す間、俺様がきてやるまでの逃げる時間稼ぎになっただろうによ」

俺様は親指で一番奥の部屋を差したら副担長山は満足気に笑った。

「あの部屋は大事な場所なんだ。踏み荒らされなくて良かった」


「ふーん」

おまえが怖すぎるって言ってやろうと思ってやめた。
最後の部屋、もしくは最深部というべきか。毎日のように見てきた姉貴達の室内ドアには幾重ものチェーンとあらゆる種類の鍵がつけられていた。周りにはクマ人形の一つもない。ただドアがたたずむだけなのがまた怖い。


大事なものほど奥にくる精神世界。自分よりあの部屋が大事ってことはココまで来て唯一見なかった……ま、傷つけたり、道を踏み外すようなことは……

「ないよな?」
「何がだ?」
「おまえに聞いても「絶対しない」って言うから聞いてねーよ。別の人達だ」
「じゃあそろそろ帰れ」
「あの部屋に癒しを求める前にキツくても目を覚ましてやれよ。姉貴が泣きすぎて親父代わりの社長の胸で泣いてたぞ」

「!!」

ソファの上でひっくり返った亀みたいにバタバタする龍一。それを見てあとは大丈夫だと俺様は先に現実世界へ戻ってやった。

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