文章練習ノート

クロレキシー

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【掌編】ガチャ

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――ガチャ

 ドアノブを回すと、空から、まあるいプラスチックのカプセルが落ちてきた。
 いわゆるガチャカプセルと言われるモノだ。
 何気なくそれを拾い、パカッと開ければ、カプセルは光の粒子となって消え去り、手元にはポケットティッシュだけが残されていた。
 
「ああ、残念賞か」

 俺は特異体質を持っていて、ドアノブを回すと、高確率でガチャカプセルを引き寄せてしまうのだ。

 うらやましい?

 ただし、1日10回を越えると、高確率で罰ガチャを引き当てるがな。
 それは電撃だったり、魔法デコピンだったり、様々だ。知り合いのガチャ占い師がいうには、「超超レアだけど、デスガチャというのもあるから、気を付けなさいね」との事。どう気を付けるというのだ、ガチャなんて運だろが……。

 だから、俺は、ドアノブを回す時は、それが本当に必要な事かを、3秒だけ真剣に考える。
 正直、日常生活に支障になっているとも言えるかもしれない。
 ちなみに自宅は、すべて引き戸にした。「武家屋敷みたいだね」と女友達にいわれた。
  
 俺みたいな体質は、100人に一人ぐらいの確率でいる。わりと珍しくない。で、大抵、ガチャで身を亡ぼす。ガチャ依存症になるそうだ。まぁ、中毒性は高いかもしれんな。
 天上の神々は、この射幸心の高い呪いを、禁止すべきだ!と法規制を検討しているらしい。だが、守護の神の天下り先が、違法呪い法団の為、なかなか難しいようだ。

 俺は幸いな事に、ガチャを魅力的に感じない。
 なぜかというと、『はずれ神の加護ギフト』を俺は生まれつきもっているからだ。だから、くじやギャンブルは外れる。とはいっても、悪い事ばかりでもない。たとえば俺は食中毒に当たった事がない。
 戦場でも、流れ弾には当たらない。もちろん、狙われた場合は微妙だが。
 こんな風に、場合によっては、はずれ神の加護は、そう悲惨というほどでもない。ただし、俺みたいに冒険者といったギャンブルみたいな生業をしている奴にとっては、最悪の加護ではある。
 たとえば、俺はトラップの解除も得意なのだが、当然、パーティメンバーには誘われない。「あんたがいると、ドロップが余りにも悲惨になるからね」だそうだ。
 そんなわけで、ガチャの呪いよりも、はすれ神の加護ギフトの方が、上位らしい為、俺にはガチャにおけるアタリはまずないのだ。しかも、罰ガチャは、ハズレらしいから、普通に適応される。
 俺がガチャに魅力を感じないワケがわかっただろうか?

 さて、目的の場所についた。
 俺は今、無限迷宮といわれる、テレポートトラップが無数にあるダンジョンにいる。しかも、最下層だ。
 ここに来ると、願いがかなえられるのだという。

 目的? そりゃ、『はすれ神の加護ギフト』を解いてもらうことだ。

 さてと、俺は、宝物庫であろう部屋にはいった。

 ――あなたの願いをかなえましょう! なんと10割のアタリくじが入った、ラッキーガチャ!

 「・・・」目の前にあったのは、ガチャガチャであった。

 「・・・・いや、10割のアタリくじだからな、一応」 俺は、ガチャを回した。

 ――ガチャ

  
 
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