129 / 135
番外編 空に天空白露が戻ったら
128 こっちを向いて④
リョギエンはイリダナルの寝室に連れ込まれていた。
リョギエンが使っている部屋は侵入者によって散らかされてしまった為、今日は一緒に寝ようと言われ引き摺られてきた。
客室でいいと言ったが、無視されてしまった。
「イリダナル。私と番になるのは考え直したほうがいいと思うぞ。」
黙々と連れて来られてしまい、リョギエンは我慢できずに意見した。
イリダナルの碧眼が細められ、どこか意地悪な笑みを浮かべている。
「何故そう思う?」
「それは、…そうだろう?私にはなんの力もないし、色無だ。地上では色無は奴隷扱いだと聞いている。………だからイリダナルは私を隠しているのだろう?」
「…………。」
「違うのか?」
おずおずと告げるリョギエンに、イリダナルはぐしゃりと髪を掻き上げた。後ろで高く髪を結んだ紐が崩れ、パラリと金茶の髪が落ちる。
「………違うなぁ。」
否定されてリョギエンはより一層狼狽えていた。
「まず、リョギエンに力がないわけがない。」
はっきりと断言されたが、リョギエンは自分に力があるなんて思っていない。元は花守主ではあるが、その地位にいたのはそう生まれたからであり、他になる者がいなかったからだ。リョギエンが優れていたわけではない。
「……いや、ないと思うが………。イリダナルは王様なんだから、番になるなら自分の利益になる人間がいいだろう?」
イリダナルはうーんと上を向く。しばし考え、リョギエンを説得することにした。
リョギエンをベットに座らせ、自分もその隣に座る。リョギエンの片手を握り、腰を抱いてピッタリとくっついた。
あまりの近さにリョギエンは不思議そうな顔をしている。
その様子がイリダナルを全く恋愛対象に見ていないのだと言わんばかりで、イリダナルは絶対に今落とすと決めた。
「まずリョギエンは天空白露の元花守主と言うだけでもかなりの効力がある。」
リョギエンは藤色の瞳を見開いた。
「もうヌイフェンに後は譲ったのに?」
「そんなのは関係ない。地上の人間は天空白露との繋がりに希少価値を置いている。特に天上人とはな。しかもリョギエンは六主の中の花守主の元当主だった天上人だ。俺の番としてこれ以上の人間はいない。」
ポカンとリョギエンの口が開いている。自分が花守主であったことに全く本人は価値を見出していなかった。
「そうなのか?」
「当たり前だ。それに、俺は天上人の中でも神聖力が多い。番になれば長生きできるぞ。折角リョギエンに与えた温室を枯らすつもりか?」
「か、枯らすのか?ダメだ!」
今芽吹いた苗が大量にある。樹木も多いし、果実がなる木もある。果実がなるようになるまで数年から十年程度月日が必要になるが、そこまで待っていると確かにリョギエンの寿命が尽きてしまう。
「研究したいだろ?」
リョギエンはコクリと頷いた。
イリダナルとの番なんて願ってもないことだ。
「………だが、いいのか?私は他の天上人のようにあまり美しくないと思うんだが…。」
リョギエンの眉がヘニョリと下がる。
イリダナルはリョギエンから見ても美しく凛々しい王だ。こんな目つきの悪い色無を選んでいいのだろうかと心配になる。
「何言ってるんだ?可愛いだろう。最初から可愛かった。」
当然と言わんばかりに告げられて、リョギエンは固まった。可愛いなんて言われたことがない。
「イリダナルこそ何言ってるんだ?大丈夫か?」
イリダナルの目は悪いんだろうか。リョギエンは本気で心配になった。
「大丈夫に決まっている。いいか?顔の造作なんてどうでもいいんだ。俺が可愛いと好ましく思えばそれが一番だ。」
「…………。」
「何故逃げる。」
「に、逃げるに決まっている。」
言われなれないことを言われて、リョギエンは必死に身体を離そうとした。
「リョギエン、俺の番になれ。」
「こ、心の準備が……。」
「それはつまり拒否しないと言うことだよな?だったら今すぐだ。俺はリョギエンの寿命が心配でならん。」
ドサっとベットに押し倒される。
リョギエンの目はぐるぐると回っていた。その様子にこのままなし崩しに番にしてしまおうとイリダナルは強行する。
リョギエンの顎を掴み、唇を合わせた。
「!!!」
リョギエンの唇はしっとりと濡れて柔らかい。唇と舌で味わい、口内を犯していく。
リョギエンがこういった肉体関係をしてこなかったことは把握済みだ。仮にも花守主の当主だったので知識はあるだろうが、実践経験はない。
一度唇を離し表情を確認すると、真っ赤になって目を瞑っていた。その初々しい姿にイリダナルは興奮する。
「リョギエン。」
名を呼ぶとビクッとリョギエンの肩が震えた。
「リョギエン、目を開けろ。」
もう一度名を呼ぶと、ソロソロと瞼が開いて、藤色の瞳がイリダナルを見る。
「ううううぅ。」
手が震えている。きっと物凄く驚いたのだろう。
「俺を欲しがれ。そしてなんでも願うがいい。」
「………そんなこと……。」
無理だと言いかねないリョギエンの口を指で塞いだ。
「欲しがるんだ。俺が、マドナス国の王イリダナルが欲しいと願え。俺の命も神聖力もやるから、俺の側にいるんだ。そうでないと心配でならん。」
「……心配なのか?」
リョギエンの質問にそうだと答えながら、イリダナルはリョギエンの顔や耳、首筋に口付けを落としていく。
何枚か前合わせの服を重ねて着ていたリョギエンの服を緩めながら、口付けを下に下ろしていった。
「……ん、くすぐったい……。」
小さく身悶えるリョギエンの両足の間に身体を入れて、ほんの少し芯をもちだしたリョギエンの陰茎を手に握る。
リョギエンは口に両手を当ててビクンと震えた。目が見開いてプルプルと震えている。
必死に声を押し殺しているのか、リョギエンは口と共に目も閉じた。
そういう仕草が可愛いと思うのだが、リョギエンはこれを素でやっている。
イリダナルの周りには計算高く近付き、態とらしくか弱く無垢なフリをして身体を任せてくる者が多いのだが、そんな者には全く情を持ったことはない。容姿が良ければつまみ食いくらいはしたが、身体を繋げたからといって番になりそうになったこともなかった。
パクッとリョギエンのモノを口に含むと、リョギエンは小さく悲鳴を上げた。
一気に口の中で膨らみ固くなっていく陰茎に、イリダナルは舌を這わせて刺激を与え、強く吸った。
「………んんんんんっ、あ、ぁぁ、っイリ……、吸わないでっ!」
リョギエンの足が持ち上がり、間に入っているイリダナルの身体を挟んでくる。腰が揺れてブルブルと緊張していた。
根本まで飲み込みずずすと舐め上げ、トロトロと涎のように溢れさせる先っぽを、グリグリと舌でほじくりながら吸い上げた。
「ひぃ……っ、ん、んんっ!」
必死に我慢しているリョギエンが可愛い。歯を食いしばり、イリダナルの口の中で吐き出さないように堪えているのが分かった。
チュッ…と吸い上げながら口から吐き出すと、ビクビクとしながらも射精は我慢できたようだ。
「媚薬は使いたくないんだ。」
イリダナルの言葉に、リョギエンは固く閉じていた瞼を薄っすらと開く。眉は悩ましく寄せられ息は荒い。
無理矢理与えられた快感に、リョギエンは混乱し頭が回っていない。
イリダナルが一度離れて戸棚から便を持ってきた。
「これは媚薬ではなく滑りを良くする香油だ。」
リョギエンの目はイリダナルが手に持つ香油に注がれていた。言われたから見た。そんな感じだ。
返事が欲しい訳ではないので、リョギエンの隣に座り、仰向けに寝ていたリョギエンの腰を抱えてひっくり返した。
「………!?……?、っ?」
突き出されたお尻に香油をダラダラと垂らされる。ふわりと花の香りがリョギエンの鼻にも届いた。
そして後孔に柔らかな刺激が訪れる。
表面を優しく撫でているのかと思えば、ツプと何かが入ってきた感覚に、リョギエンは頭が真っ白になり震える声でイリダナルを振り返った。
「…………??なに………、イリダナル、何して……?」
何かがお尻の中に入っている!
リョギエンは困惑した。そしてすぐに、それがイリダナルの指だと理解する。
「リョギエン、ここに俺のモノを挿れたら、呪文を唱えろ。」
「……え?…あ、……ん、ん、なに?ぁぁ……。」
力が抜ける。
腰が震え、膝立ちて上げられた腰を自力で支えきれない。
リョギエンは呪文とはなんだろうと必死に考えた。そうすることで泡粒のように腰に湧き立つ快感を逃そうとした。
「勿論、イリダナルが欲しい、だ。」
イ、イリダナルが、欲しい……?
「い、いりだなる、を……?」
はぁはぁと息を吐きながら、リョギエンは繰り返す。
「そうだ。何度でも言うがいい。」
イリダナルを?
リョギエンが混乱している間に、イリダナルの作業は手早く進んでいく。己の陰茎も限界だ。
混乱しながら喘ぐリョギエンの姿に興奮が増していく。
まっさらな人間を自分だけの色に染めることに、興奮しない人間はいないと思う。
時間をかけてゆっくりと後ろをほぐし、力無く頭を落とすリョギエンの顎を掴んだ。鈍色から白に変わり出した灰色の髪を掻き上げて耳にかけてあげながら、イリダナルの方を無理矢理向かせる。
「今からリョギエンは俺のものになるんだ。その間ちゃんと呪文を唱えるんだぞ?いいな?」
視線を合わせてゆっくりと言い聞かせる。
リョギエンは潤んだ瞳で頷いた。
その姿に満足して、イリダナルはリョギエンの後孔にピタリと自分の陰茎を当てる。
スリスリと先で刺激すると気持ちがいい。
「んん……。」
緊張するリョギエンの腰を掴んで、ズプッと埋め込んだ。
掴んだ腰はずっと震えている。
ヌプ、ズプ…、と繰り返し抽送すると、リョギエンは震えながら喘ぎ声を漏らした。
「ふぁ、…ぁ、………んん、ん、ぁぁ、ふぅぅ……。」
必死に我慢しているが、堪えきれずに声を漏らしている。
態と強く押し込むと、リョギエンは喉を仰け反らせて小さく叫んだ。
イリダナルの陰茎を飲み込んだ後孔の皮膚が伸びて、ピッタリと吸い付いている。更に香油を垂らして伸びた皮膚を撫でると、リョギエンはギュウっと力を入れた。
「リョギエン、呪文を忘れているぞ…。」
囁くと、リョギエンは口に指を当てて必死に口を開いた。
「…ぁ、い、イリダナルが、欲しい……。」
「そうだ、繰り返せよ?」
ズブゥと陰茎を奥へと押し込む。
「ひぅぅ、………イリ、ダナルが、欲しいぃ………!」
「もっとだ、奥に届き俺が果てるまで、言い続けろ。」
ズブ、ズブブ、と繰り返し抜き差ししながら、リョギエンに己が欲しいと言わせ続ける。
「んん、ああっ、あっ、イリダナル、が、欲しいっーー、あああっ!」
ズブンと奥まで届き、さらに奥を攻めながら、リョギエンの勃ち上がった陰茎を掴んだ。
「や、触ったら、あ、ああっ!」
陰茎を扱かれて、リョギエンは悲鳴をあげる。前も後ろも気持ち良すぎて耐えられなくなっていた。
「ちゃんと呪文を言えたら優しくしてやる。」
リョギエンはポロポロと涙を流しながら、楽になりたくて呪文を繰り返した。
「イリ、イリダナル、欲しいっ!あ、あぁっ、イリダナルーーー、んああ、欲しっ、ああっ!」
腹の中を動く熱と、扱かれる陰茎の快感に、堪らずリョギエンは精を放った。
ギュウウと力が入り、イリダナルは汗を流して耐える。波打ち包み込むリョギエンの腸壁に圧迫され、イリダナルも射精しそうになっていた。
「くっ………。」
優しく頭を撫で耳を揉むように触ると、リョギエンが止めていた息をはぁぁと吐き出した。
「あぅ、あうぅ……。」
涙と涎でぐちゃぐちゃになったリョギエンを見下ろしながら、もう少しとイリダナルは計算した。
「リョギエン、呪文を言うんだ。」
暗示のようにイリダナルの声はリョギエンの心を犯す。
「……イリダナル、欲しい……?」
ボウとするリョギエンの片足を持ち上げ、自分の肩に掛けて、グッと腰を更に奥に進めた。
ズプッと奥に入り込み、リョギエンの目が大きく見開かれる。
「ーーーっんああぁっ!」
ユサユサと腰を揺らしながら、イリダナルはリョギエンに口付けた。
抽送しながら、リョギエンの中に神聖力を流していく。リョギエンは色無だ。その身体の中を自分の神聖力で満たしていく。
ズンっと一際強く突き上げると、リョギエンは身体を震わせて痙攣した。
出したばかりだというのに、また陰茎は勃ち上がり白濁がトポッと零れる。勢いはないが、ダラダラと涎のように先から吐き出されていた。
「リョギエン、俺が欲しいか?」
「ん、んん、う、うん、欲しい……、イリダナルが、欲しいぃぃーー!」
「よし、いい子だ……。」
激しく腰を抜き差しする。
リョギエンの目は見開かれ、我慢できずに喘ぎ声が悲鳴に変わった。
先程から言わされ続けた言葉が、リョギエンの口から出てくる。
「んうぅぅうーーー、イリダナルが欲しーーっ………!」
リョギエンの声に合わせて、リョギエンの中に溜まったイリダナルの神聖力が、また元の持ち主の中へと戻っていく。
神聖力がぐるりと二人の中を回り、混じり合っていくのを感じながら、イリダナルは笑みを浮かべた。
「…………くく、俺も、リョギエンが欲しい。」
ズブンっと勢いをつけてイリダナルの陰茎が奥を突く。熱い精液が奥へ放たれ、リョギエンはその熱さで多幸感に包まれた。
「あへ、ふぇ、ぁぁぁ………、いりだにゃる、………。」
リョギエンの藤色の瞳は焦点が合わず、目元が赤らみ浮かされている。白色に戻りつつあった髪は、艶やかな鈍色へと変わっていた。
「うん?よしよし、これで俺達は番になったぞ。俺はリョギエンのものだ。」
イリダナルは、私のもの………?
お腹が熱い。
イリダナルの神聖力が身体の中を駆け巡っている。
「疲れたか?仕方ないな……。まだ俺は足りないんだが……。」
遠くでイリダナルが何か言っていたが、リョギエンには限界だった。
漸く自分を見た。漸くイリダナルのものになった。
眠るリョギエンをイリダナルは満足気に抱き締めた。
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
Seele―目が見えるようになったのは奇跡ではなく、罰だった―
真紀
BL
【完結まで執筆済み】目が見えない兄と、死にゆく弟の物語。
死んだ弟の角膜で、光(コウ)は視力を得た。見えたのは、涙をこらえる親友の顔。「和はおまえが大嫌いだった。憎んでた。だからおまえに目をくれたんだよ」光が歌をやめたのは、その日からだ。
あの人が泣きながら殴るたび、光は願う。「どうか明日は、早く壊れてしまえますように」と。
光は音楽を捨て、達哉は涙を隠せないまま、二人は同じ世界に立ち続ける。
これは、赦しのない世界で、それでも生きようとする者たちの物語。
《第二章》盲目の光が、最愛の弟を失うまでの日々を書いています。ブロマンス寄りですがBL好きな方に読んで欲しい作品です。「ノンケを堕とすノンケ」が好物の方、ぜひどうぞ。