じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

文字の大きさ
2 / 90

1 妖精さん!?

しおりを挟む

 異世界ってね、本当にあるんだってしみじみと思うんだよ。
 オギャーと生まれたら転生してましたってね、嘘かまことか天国か。死んだらあの世じゃなくて異世界ってね。
 たぶん、たぶんね。僕は女性でそこそこいい年齢まで生きてたと思うんだ。あんまり詳しいところは覚えてないけどね。
 そこでだ。転生したのならば、ここがどんな世界か気になるもの。漫画とか小説とかゲームとか一通り遊んでいた気がするから、国名とかキャラ名とか聞いたらピンとくるはず!
 早く知りたくてうずうずしていたけど、何せ最初は赤ちゃんだったから全く情報が足りなかった。
 せめて父と母くらいは知りたい!
 そう思っていたのに何故か僕の両親は会いに来てくれない。世話をしてくれるメイド達っぽい人達が、僕は愛されていない子なのだと笑いながらよく喋っていた。
 いやいや、そんな話はいいから父と母の名前を教えてよ。
 と言いたかったのに、二歳くらいまで上手く喋れませんでした。がっかり。
 メイド達は父のことを「こうしゃくさま」。母のことを「こうしゃく夫人」と言っていた。
 こうしゃくさま?こうしゃくって公爵か侯爵か………。どっちだろう?こんなつまらんことに二年も悩んでしまった!
 因みに僕の名前はヨフミィというらしい。なんか変な名前っ!と思いつつ、僕は自分の名前を頭にインプットした。出来れば誰か家名も言って欲しかった。
 僕が自分のフルネームを知ったのは三歳の頃だった。

「ヨフミィ・アクセミア公爵子息にご挨拶申し上げます。」

 三十代くらいの男の人がやってきて、最初に僕にそう挨拶をした。この人は家庭教師の先生だった。
 先生の名前はフブラオ・バハルジィだと名乗ってくれた。アクセミア公爵家の傍系出身で、公爵家の事業を任せられたり、こうやって直系に子供が生まれればその世話役や教育係などを任せられたりなど、様々な補佐をしている家門らしい。
 バハルジィ家は子爵家らしいが、フブラオ先生には特に爵位はないのだと説明してくれた。
 そして「こうしゃく」は公爵のことだと判明した。

「当主とは全てアルファ性が継ぐことになりますから。」

「アルファ…?」

 アルファ?いや待って!アルファって言った!?

「この世には男性と女性のほかに第二の性としてアルファ、ベータ、オメガという性がありまして…。」

 あ、お決まりの説明が始まった!
 優れたアルファに、普通のベータに、発情期があるオメガね!知ってる~!
 ええ!?もしかしてここってオメガバースがあるんだぁ!?
 一気に僕は興奮した。

「先生はなに?」

「私はベータですよ。」

「僕は?」

「ヨフミィお坊っちゃまはまだ分かりませんが、正確に判明するのは十歳頃でしょう。当主様はアルファであり、公爵夫人はオメガですので、アルファかオメガである可能性が高いと思いますよ。」

 あ、十歳くらいにならないとわからないってことかぁ。

「ベータにはならないの?」

「ごくまれにアルファとオメガの間からもベータは生まれますが、本当にごく少数です。」

 へぇ~。どっちだろう?たのしみぃ~!
 にぇへへ、と笑うとフブラオ先生もつられて笑い返してくれた。
 この日からフブラオ先生がやってきて授業が始まったけど、僕はまだ三歳。文字すらわからない。まずは一文字ずつ教わった。
 うん、言葉がね、話してる会話が全然日本語でも英語でもないからそりゃー文字も知らない文字だよね。
 なんだかふにゃふにゃした文字を僕は必死に覚えたよ。だって早くこの世界のこと知りたかったしね。
 今住んでるお屋敷って物すごく広くて、どっかに図書館があるらしい。字を覚えたら通ってみるつもりだ。だってここがどんな世界なのか早く知りたいし!
 あと残念なことにこの世界には魔法がなかった。
 いやいいんだもん。アルファとオメガがいればそれだけで楽しめる!
 でもフブラオ先生いわく、アルファもオメガもあんまり多くないんだって。だからこそアルファが産まれたら当主候補として家門一丸となって教育していくらしいし、オメガが生まれれば早くから婚約関係を繋いで家門の繁栄を望むらしい。何故ならオメガはアルファやオメガを産みやすいから。
 つまり僕はアルファとオメガの間に生まれた血統書付きってことね。
 うーん、でも……。

「もしかしたらベータってこともある?」

 フブラオ先生はおや?と笑みを浮かべた。

「それはどうでしょうか。まだ三歳だというのにこんなに賢いのですから、普通のベータではないのだと感じますよ。それに、アクセミア公爵の榛色の瞳と公爵夫人の柔らかな白髪を譲り受けたこんなにも愛らしいお子様が、ただのベータであるはずありません。」

 おお、褒めまくりだ!ちょっと照れちゃうなぁ~。
 テレテレと照れる僕を、フブラオ先生はとても可愛がってくれた。
 ま、賢いのは前世の記憶があるからだけどね!


 フブラオ先生が来てから約二年、先生の授業を受けつつ、僕は公爵邸の散策を日課にして行動範囲を広げていった。なにしろとんでもなく敷地が広い。
 乗馬もできるし、小さな森もありますよと言われてしまった。屋敷もまだまだ全部把握できていないくらい広いし、庭師達によって整えられた庭園も凄く立派だった。
 だからか知らないけど、相変わらず僕は両親に会えない生活が続いていた。父上は何回か会えたけど、お母さんには会えていない。
 おかしくない?僕前世の記憶があるから、今世も赤ちゃんの頃からしっかりと記憶があるし判断能力もあるんだよ?会ったことあれば覚えてる。でも全くお母さんの姿を記憶していないから、一度も僕に会いに来たことがないんだ。
 これは何かある!
 まさか公爵は愛人を囲っているのか!?
 僕はコソコソと屋敷の中を動き回り情報収集を続けた。
 そこで次のことがわかった。
 その一、公爵は妻とは別に好きな人がいる。
 そのニ、好きな人は王太子妃様だ。つまり片想い。
 その三、王太子妃は物凄くモテモテらしい。
 その四、王太子は嫉妬して公爵に結婚を命じた。
 お喋りな使用人達が話すことを要約するとこんな感じだった。
 つまり無理矢理王命で結婚させられて、仕方なく子供を作った。両親は元々婚約者同士で政略結婚だったので、公爵は夫人を愛していないということだ。
 公爵は王宮勤めで次期宰相と言われるくらいの人らしい。
 そして公爵夫人の噂は悪いものばかりだった。
 政略結婚に不満があった公爵夫人は、子供を一人産んだらいいだろうとばかりに離れにある離宮へ引っ込んでしまったらしい。そこで贅沢三昧に過ごしているともっぱらの噂だ。
 なんかガッカリ。
 だってアルファもオメガも超美形が定番でしょ?見たかったけど仲悪いんじゃ家族一斉に揃うことはなさそうだ。僕を含めた美形一家を見る日は来ないってこと。

 とりあえず前世の記憶の中からアクセミア公爵家なんて名前に聞き覚えはなかった。
 公爵の名前はリウィーテル・アクセミア三十歳だと分かった。そして公爵夫人の名前はジュヒィー・アクセミア二十四歳!そして僕ヨフミィ・アクセミア現在五歳だ。三人家族だね。
 先生から名前は教えてもらったのだが、全く聞き覚えがなかった。
 いや、あるような気もするんだけど、前世で読んだりゲームしたりと数々の作品を網羅していたから、正直一つ一つ覚えていないというのが正しい。

「うーん、でもなぁ。」

 むむ、と考える。
 気になるのは王太子妃の話だ。王太子妃は元々王宮メイドの一人だった。だけどとても美しいオメガの女性で、王太子をはじめうちの公爵様や他にも何人かが王太子妃に夢中になっていたらしい。数々のプロポーズの中から彼女は王太子を選んだ。そして王太子はオメガの王太子妃が心配で、それまで王太子妃に秋波を送っていたアルファ達に結婚を命じたらしい。その中の一人がうちの親だとさ。
 なんだかそのシチュエーションが乙女ゲームっぽい。
 そう考えると、今いるこの世界は乙女ゲームが終わった後ということになるんじゃないかな?
 はぁ、ヒロインでも悪役令嬢でも攻略対象者でもなく、終わった後の選ばれなかった攻略対象者の子供とか?
 どこを楽しめばいいのやら。
 しかもヒロインが女の子だったなら、悪役は令嬢だろうし?
 せめてBLならもう少し楽しめたのかもしれないのに~。
 残念に思いつつ僕は日課の探検を熟していた。これでたまに使用人達の隠し事とか噂話とか拾えるんだもんね。
 今日は森の方へやってきた。
 ガサゴソと歩いていた、なんだか寂れた小さめの屋敷が見えてくる。
 木造二階建てで、色の褪せた木の壁や屋根が今にも崩れ落ちそうだ。

「…………いや、まさかね。」

 離宮に住んでいる僕の生みの親。
 贅沢三昧って聞いている。こんな所に住んでるはずないよね……?
 念の為、念の為に…。
 僕はコソコソと屋敷に近付いた。
 カタンと音がする。錆びた蝶番のギイィという音と、トストスと軽い足音がする。
 僕は植木という名の雑草に隠れて覗き込んだ。

「……!」

 天使!?妖精さん!?
 真っ白の長髪を緩く後ろで無造作に結んで、眠たげに薄紫の瞳を空に向けている人が外に出てきた。白い肌は柔らかそうで、華奢な身体は儚げな頼りなさがある。
 ほ、ほ、ほえ~~きれぇ~。
 ボーっとしながら見ていると、その人は出てきたドアの周辺をキョロキョロと見ていた。
 何してるんだろう。
 よく分からないが、見回してから溜息を一つ吐いて戻って行った。
 僕はそのままジッと屋敷を見ていた。
 ボロボロのお屋敷。さっきの人以外は誰もいなさそうな静かな場所。本邸からは少し離れてはいるけど、僕の足で来れる程度。でも森の中なので誰も近寄らない。
 さっきの人は綺麗な人だったけど、着ている服はヨレヨレだった。痩せて疲れた感じがある。顔色も悪い。
 
 あの人は誰?

 ジッと考えて僕は本邸の方へ戻ることにした。











しおりを挟む
感想 493

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

処理中です...