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52 全てを捧げる誓い
しおりを挟む久しぶりに夢を見た。
今の世界とは違う、天井の低い小さな台所と、ガラスの引き戸で仕切られた隣の居間。畳が擦り切れた古臭い日本家屋の普通の家。
妹夫婦は両親と暮らしていた。だからあたしは外で一人暮らしをしていたけど、よく実家には帰っていた。
帰ると妹の子達が喜んでくれるから嬉しかった。
『お姉ちゃんも結婚しなよ。』
いやいや、相手いないし~?
『うちの子達見てくれるのは助かるけどさぁ、彼氏作ろうとか思わないの?』
うーん。無理だよぉ。会社とアパートと実家の往復で満腹だよ。
『好きな人とかいないの?会社にいいなぁって思う人とかさぁ。』
それがねぇ。いないんだよ。好きな人ってどうやったら出来るの?逆に聞きたいわぁ~。
『はあ、呆れちゃうー。』
あははは、呆れないでー。
目の前に麦茶が入ったコップがコン…と置かれた。その音がやけに響く。
テレビのボリュームが上がったのか、妹が何か言っているのに雑音が多くて聞き取りにくい。
『ありがとう。お姉ちゃん。でも…………ザザザ…………、心配。ザザ……。』
妹の目が揺れている。
ごめんね、ありがとう。聞こえないけど、そう言っているのが分かる。
隣の居間からお母さんも入ってきた。
『そんなとこにいるから分かんなくなるのよ?』
何が?
お母さんは小言が多いんだよねぇ。結婚だけが人生じゃないんだよ?
『だからって独身が正解でもないでしょ?アニメばっかりみてないで。お隣の佐藤さんちの子は市役所に婚姻届出しただけで結婚式はしないんだって言ってたわよ。』
はぁ、最近は多いんじゃない?披露宴とか流行んないよ。というか佐藤さんって誰よ。隣の家は佐藤さんだったってなんか久しぶり情報すぎるわ、あはは。
『いいのよ……ザザ………でも。もっと自分を大切にしてくれれば。』
お母さんの顔が今日のリュハナの顔に被る。いや、全然顔の造り違うんですけど?ウチのお母さんとリュハナのキラッキラの顔を被らせるとかどんな精神攻撃だよ。
………でも、どっちも一緒なのかも。心配してる。
『お姉ちゃん……。』
うん?なんだい、妹よ。
『そこ、攻略しないとか有り得んから。』
はい?
どたっ………。
「いてっ。」
目を開けたらいつもの部屋だった。ジールさんの小さな家の二階の部屋。ベッドしかない部屋だ。
「……………え?」
何の夢?
なんだが途中まではすっごく懐かしい夢だったんだけど、最後変なこと言われたような?
攻略とは……?
今は女神達のクエスト進めるので精一杯なのよ~。あ、攻略ってそのことかな?
起き上がらずに床に寝そべり天井を見上げると、目の前には青いスクリーン画面。
もう次があるの?
『③黒幕を暴け!何の目的で薬が作られたのか調べましょう。場所、王妃の私室。』
王妃の私室ぅ?
どうやってそんなとこに入ればいいの?侵入して調べろってこと?
『報酬、騎士の忠誠。』
騎士ってことはソヴィーシャだよね?既に幼少期に誓ってもらったような?あ、でも今は庭師のヨフなんだから違うのか。
このクエストはヘミィネが番を得るまで続く…ってことだよねぇ。
「この手のゲーム苦手なのにぃ~……。」
「へぇ、ヨフは何かゲームに参加中なの?」
ヒョイと人の顔が目の前に現れた。
!?!!?お父様!?
ガバッとヨフミィが起き上がると、お父様の顔が後ろに下がった。お父様の後ろにはフブラオ先生がいた。僕との顔面衝突を避ける為にお父様の身体を後ろに引いたみたいで、ちょっと慌てた顔をしていた。
「おはようございます、ヨフ。急に起き上がってはぶつかってしまいますよ。」
起きて早々注意される。
「………あい、おはようございます…??」
よく分からず挨拶を返すと、お父様がふふふふと綺麗に笑った。
「おはよう、ヨフ。お寝坊さんだね。皆んな下に集まってるよ。」
みんな……。みんな?集まるとは?
フブラオ先生が手を出してくれたのでありがたく掴まって立ち上がった。
お父様とフブラオ先生と一緒に一階に降りて行くと、いつもご飯を食べているテーブルにヘミィネとルヌジュが座っていた。
「おっそいよ、ヨフ!」
「寝過ぎじゃないの?」
朝から二人がキャンキャンと文句を言っているけど、この状況は?
キッチンにはジールさんとラニラルがいて、二人で食事の用意をしていた。ラニラル、ご飯作れるんだ?美味しそうな匂いにお腹がグゥとなる。
「なんで皆んないるの?」
リュハナも来ていた。
「本当はね、僕とラニラルで来ようとしたんだけどバレちゃった。」
テヘっとリュハナは笑って言った。
バレちゃうとお父様達が追加されるんだ?何故に?
「僕だけでいいって言ったのにこの子達までついて来たがったんだよ。大勢でごめんね。」
お父様が謝る。
「うん、僕はいいよぉ~。」
ジールさんは大変そうだけど。
フブラオ先生が双子をソファに追いやり、僕とお父様をテーブルに座らせた。僕の前には豪華な朝食が並ぶ。ベーコン入り塩スープにサラダとハム入りスクランブルエッグとスライスしたパン。茹でたトウモロコシまであるっ!
「このトウモロコシ美味しかった。」
前にも貰ったやつだ。身がプリプリしてて美味しかった!甘かった!
「今度裏ごししてスープにしてあげますね。」
ラニラルがニコニコと笑いながら僕の顔を拭いている。………これ拭かれてていいのかな?暖かいお湯で濡らした布だから気持ちいいけど。
「なんでラニラルにお世話されてるの!?」
ヘミィネが噛み付いてきた。だよね?僕もそう思う~。
「うぶぶ、んぶ、まっ、しゃべ…!」
ラニラル拭きすぎっ!喋れない~!ニコニコしながら顔拭かないで!メガネが取れちゃうって!耳も拭かないでっ!くすぐったい!
「まあまぁ、そのくらいにして食事なさって下さい。」
フブラオ先生が止めてくれた。
「いただきまぁ~す。」
はむっはむっと食べていると、お父様が目の前で微笑みながら見ている。
見ている………。
見ているね…?
スススと背筋を伸ばした。無言なのに、なんかね?スプーンもお上品に持ち直した。泣く泣くね。平民ばんざーい……。
「今日は朝からどうしたんですか?」
会話で場をもたせよう…。ところで今度はラニラルが僕の髪の毛に櫛いれだしたよ。
「うん?ん~。どうしてるのかなぁって思って。」
そうなんだ?なんかよく分かんないなぁ。
「ヨフは今日仕事?」
ルヌジュが尋ねてきた。
「うん、仕事だよ。」
「え~~~、つまんない。」
「なんだ、一緒に遊べると思ったのに。」
双子が同じ表情を作って文句を言い出した。
僕はいい大人なので仕事して稼がなきゃなんだよ。ほぼ生活費出してないけど……。僕ヒモじゃんっ!
「………休んでもいいぞ。」
ジールさんがお休みくれちゃった。
「もし庭師の方が忙しくないなら公爵家の手伝いする?」
お父様がニコッと笑って提案してきた。
お手伝い?
「いいんじゃないか?庭師より給料いいぞ。」
「え…?でも。」
庭師ではあるけど、この国の中枢である王宮の庭師だよ?そこら辺の庭師じゃないよ?給料いいよ?
「王宮の調査ですよ。」
フブラオ先生が補足してきた。
王宮の?てことはラニラル達が調べてる薬関連?
「私の助手をしますか?」
ラニラルも提案してきた。いつの間にか髪の毛がツインテールになっている。
「気をつけてな。」
ジールさんには頑張れと応援されてしまう。
「…………あれ。これ決定なの?」
「そうだよ?」
お父様がニコッと微笑んで肯定した。
僕、庭師むいてない?もしや、解雇?
「ねぇ、僕もう庭師になれないのかなぁ。」
テクテクと歩きながら呟く。
「そんなことはありませんよ。一時的なものです。護衛も兼ねてますから一緒にいた方が守りやすいのですよ。」
ラニラルが優しく慰めてくれた。
「そう?そうだよね?僕、ジールさんの邪魔なわけじゃないよね?」
「…………確認なのですが、テフベル卿と恋人同士というわけではありませんよね?」
「ゲフゥッ!ゲホッ、ゲホンゲホン!……え?ええ!?何歳違いだと思ってるの!?」
ジールさんと僕では親くらいに歳が違うんだよ!
驚きすぎて息が詰まってしまった。ラニラルが僕の背中をトントンと叩いてくれる。
「申し訳ありません。念の為に…。」
「ない、ない。ジールさんの筋肉はすんごく魅力的だけど。だいたい恋愛しようって気がないし。」
今はヘミィネの番を作らなきゃ自分の人生がかかってるからね!ヘミィネが四人のうち誰かと番にならないと、始めからやり直しになるかもなんだよ?自分が恋愛してる暇なんてないんだよ。
「……ですが、いずれは誰かと番になった方がいいと思います。」
ラニラルが言うことはわからんでもないけどねぇ。オメガである以上、生き続けるならアルファの番はいた方がいい。とは聞いている。若いうちなら発情期も一人でなんとか乗り越えられるけど、歳とってきたらアルファの番がいた方が安定出来るって聞いてる。
でもそれは生きていたらの話だ。そんなこと誰にも言えないけど。
「ラニラルは?ラニラルは誰かと番にならないの?好きな人はいないの?」
リュハナはいるらしいけど。リュハナの好きな人は教えてもらえなかったけど、もしヘミィネじゃなかったらヘミィネの番候補は三人になってしまう!
というか駄女神の小説通りなら四人の好きな人は僕じゃん?……今現在も僕?ルヌジュはそんなこと言ってたよねぇ。でも本人達から聞いたわけではないしねぇ。ここははっきりと確認しておこう。
「………私は決まった主人がおりますから。その方にずっとついていくつもりです。」
「えーー………?主人じゃなくて番の話だよぉ?」
ラニラルはいつもの通りの笑顔でなんでもないことのように話している。
「もし主人が誰かと番って仕えろと仰るのならそうしますが。」
いやいやいや、それは違うよぉ?好きな人と番になってもらいたいんだけど…。でも矛盾してるのかな?ラニラルがヘミィネを好きじゃないと二人はいい夫婦になれないような気もするよね。それは他の三人にも言えることだけど。
無理矢理ヘミィネと誰かを番にするのは間違ってるのかなぁ。
「ね、ラニラルはヘミィネのこと好き?」
思い切って確認しとこう!
尋ねたらラニラルはキョトンとした。
「ヘミィネ様ですか?ヘミィネ様は公爵家の大切なご子息です。主人ではありませんが、誠心誠意お仕えするべきお方です。」
「そこに恋愛感情は?」
「お仕えする方と私は同列ではありませんから恋愛感情はありません。」
ないのかぁーーーっ!!困った!
「あれ?そういえばラニラルの主人ってだれ?」
子供の頃は僕に忠誠を誓うとは言ってたけど、流石に子供の頃の話だしねぇ?父上かな?
何気なく訊いたらラニラルが立ち止まり無表情に僕を見ていた。
「ラニラル?」
そしてフッと微笑む。
「………私はその方に全てを捧げると誓いました。もし……、その方が私に全てを渡せと言われるのなら……。私は主人に全てを捧げるつもりです。」
ラニラルは僕の目を見て一言一言ゆっくりと重く言葉を吐いた。まるで神に誓う神聖な言葉のように。
一瞬返す言葉が見つからない。
「……あ、……っと、そう、なんだ?すごい忠誠心だね…、へへ。」
バカみたいなつまらない返事しか出てこなかった。
「はい。そう覚えておいて下さいね。」
ラニラルはどこか満足気な顔で笑っている。言いたいことが言えたのだと言わんばかりだ。
「うん。」
僕達が今向かっているのは騎士団本部だった。
少し前に捕まえた管理人から情報を得る為に、ラニラルはソヴィーシャが率いている第二騎士団第一隊と一緒に調べていたらしい。
「騎士団も巻き込んでよかったの?」
ソヴィーシャはいいだろうけど、第二騎士団まで動かすとなると極秘の意味がないんじゃない?
「王太子殿下の権限で第一隊だけ動かしたんです。流石に人手が足りなさそうなので。」
ふぅーんと言いながらラニラルの説明を聞く。
今のところ僕が知っているのは、オメガの発情期を無理矢理促して相手を番と勘違いさせる怪しい薬を放火犯が使っていたということだけだ。
貴族が関わっているらしいと言うことで、王命でアクセミア公爵家が調べることになり、ラニラルが単独で調査を開始したんだよね?
ラニラルは騎士団本部に着くと受付ではなく真っ直ぐ別の建物に向かった。本部を迂回して併設された建物に入っていく。
中にはソヴィーシャが自分の部下と一緒に待っていた。そこには副隊長のフヒィルもいた。
「ヨフ。こっち!」
フヒィルは自分の隣の椅子を指差した。わーい。こうやって呼んでもらえると友達ーって気がしちゃうよね!
ラニラルはソヴィーシャと話し出したのでフヒィルの隣に遠慮なく座った。
「暫く一緒に行動するって聞いたから、俺のとこにいなよ。」
「うれしー!そうするっ!」
ニコーとフヒィルは満面の笑顔で笑ってくるので、僕もニコーと笑い返した。
暫くざわついていたけど、ソヴィーシャが手を叩くと全員シンと静かになった。ビシッと背筋が伸びて緊張が走る。
「これより王太子殿下のご命令により、極秘の任務を行う。」
窓も扉も閉め切られ、ソヴィーシャの声が静かな部屋の中に響いた。
「今現在王宮内を中心に違法薬物が秘密裏に使用されている形跡があったが、被害者が貴族家のオメガと言うこともあり騎士団に訴える家がなかった為表沙汰になっていなかった。」
ツンツンとフヒィルの手をつつく。
「何で訴えないの?」
「ん?ああ、使われたのが立場が危うい家が多かったんだ。借金あるとか、ちょっと脱税しちゃったとか。自分家のオメガのことで訴えたら逆に家のこと粗探しされるって思って表に出さずに裏で処理してるんだよ。」
裏で、処理?なんか嫌な予感。
「薬使われたオメガの人ってどうなったの?」
「依存性が高い薬だし、その、大概がそこらへんの平民とか、あまり良くない奴とかが相手になっててね。貴族のオメガが平民の家とかで暮らしていけるわけもないし、その相手も急にオメガの人と結婚しろとか言われても出来ないしね。養えないし。何人かは保護してできたばかりの治療薬を使ってもらって様子見中なんだけど……。」
どうやらフヒィルの表情からあまり良くない状況になったらしい。
「ヨフ、質問は後で私かラニラルに聞け。」
ソヴィーシャに注意されて慌てて僕は手で口を塞いだ。
「バハルジィ伯爵子息の調査で第一騎士団の第四隊とメーリュンデ侯爵家が主犯ではないかと睨んでいる。今後そちらに注視して調査を始める。決して悟られないように。」
そこまで説明し、ソヴィーシャは隊員一人一人に細かく指示を出し始めた。
副隊長としてフヒィルもソヴィーシャの補佐を始めたので大人しく座っていたら、ラニラルが代わりに近付いてきて隣に座った。
「何かお尋ねしたいことは?」
ニコッと笑って訊いてくれる。なので僕もニコッと笑った。
「ほとんど分かんないや。」
ラニラルは胸に手をやって説明しますね、と言ってくれた。
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