じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

文字の大きさ
69 / 90

68 妹女神様っ!教えて!

しおりを挟む

 ぱちぱちと目を開けると、そこは花が溢れかえる庭園だった。
 白いテーブルと椅子が目の前にあり、妹女神様が既に座っていた。
 テーブルの上には湯気の立つ紅茶が置かれ、妹女神様は僕を見て微笑んでいた。

「妹女神様……?」

「ええ、久しぶりね。」

 ゆっくりと妹女神様はうなずく。
 僕は急いで空いている方の椅子に座った。

「質問だらけですよっ!」
 
 妹女神様は笑っている。

「順調そうで良かったわ。」

 順調?

「あの、クエスト報酬がよく分からないですよっ。」

 妹女神様は不思議そうに小首を傾げた。テーブルに置いてあった角砂糖をシュガートングで摘み、紅茶の中に落としていく。ティースプーンでくるくる混ぜる姿は上品だ。

「この上なく順調よ。思ったよりも最速だわ。」

 どうぞとシュガートングを渡されたので、僕も二つ摘んで紅茶の中に落とした。砂糖が溶けてプクプクと泡が数個立ち消えていく。

「ええっとですね、まずクエスト③の騎士の忠誠だけどね。騎士はソヴィーシャだとは思うんだ。これによってソヴィーシャは候補から外れたってこと?」

 妹女神様はティーカップを持ち上げ一口飲んだ。

「外れましたよ。」

 やっぱり!

「てことは、ヘミィネはラニラルかレジュノ王太子と番になるってことだよね?」

 妹女神様は口に手を当て上品に笑った。

「まぁ、ふふふ。違うわ。」

 …………うん?

「前回言ったでしょう?これは貴方のゲーム。貴方が進めるクエストであり、貴方への報酬なの。貴方が進めばヘミィネも進むのよ。」

 ううーん?
 また謎解きみたいなこと言ってる!もうちょっとハッキリ言って欲しいなぁ。

「じゃあ、クエストの④は?王太子の本心ってどういうこと?」

 僕はヘミィネではなくフヒィルを選んだ。

「クエスト④は王太子とヘミィネが誤った番契約をしないようにする為のクエスト。」

「誤った番契約?」

 妹女神様はニコッと笑った。

「ヘミィネもだけど、王太子にも幸せになってもらいたいでしょう?お姉様の小説の通りに進めれば、また二人は何も理解することなく番になるわ。今まで進めたクエストはそれを阻止する為の布石。」

「じゃあっ、やっぱりヘミィネは舞踏会で薬を盛られたんだ?」

「そうよ。お姉様の小説にはそこまで書かれてはいないけれどね。」

 妹女神様はヘミィネが薬を飲まなくてもいいように誘導してくれたんだ。

「ありがとう。」

「いいのよ。たた私はこの世界にこういった形でしか干渉できないのよ。ごめんなさいね。深く考えずに教材を使ったものだから。」

 僕は首を振った。ヘミィネと王太子が薬で番にならなくて良かったと思う。
 乙女ゲーム仕様の教材って妹女神様が世界に干渉するベースになってるんだね。
 駄女神の方は自然を操ってたけど、なんでだろう?世界観が駄女神の想像から出来てるからとかかな。

「王太子の本心って結局なんだったの?」

「簡単に言えば寂しいという心よ。幼い頃にヨフミィという心の拠り所をなくして代わりを探す子。クエストなら答えに正解はなかったのよ。ヘミィネでもあり得たの。」

 僕は目を見開く。

「まさか選んだ答えが新たな拠り所…、とか?」

「になる可能性を高める選択。」

 つまりフヒィルが新たな拠り所に!?
 てっきり僕は選んだ人と王太子がくっつくかもって思って、小説の通りヘミィネが苦しむかもしれないと思ってヘミィネを選ばなかったのに!
 妹女神様はくすくす笑っている。

「いいのよ。貴方は最善の選択を選んでいるわ。」

「ええ~~~?」

 待って、それならヘミィネの候補はもうラニラルとソヴィーシャだけになるよ?
 どどどどっち?

「もういっそのこと答えを教えてください。」

 僕は手をプルプルと振るわせて懇願した。

「もう答えは決まってるわよ。」

「決まってても僕にはわからないよぉ~!」

 笑ってないで教えて!

「答えはソヴィーシャの騎士の忠誠にあるわ。」

 ソヴィーシャの忠誠?
 
「大丈夫………。」

 妹女神様は何か喋ろうとした。しかしそれは轟音で阻止される。
 ゴゴゴゴーー……!
 と地響きが聞こえ地面が揺れた。

「わ、わわっ!なに?地震?」

 グラグラ揺れて机にしがみついた。

「いいえ、これはお姉様よ。」

 駄女神?
 そういえばどこにいるの?前回は木に吊るされていたけど、今はいない。
 ザ、ザザザ…。
 波の音が聞こえ足が冷たい。

「えっ、あれ?水が……!」

 地面に水が流れていた。美しく咲いた花々が水没している。
 うわっ、ちょっと、この水増えてる?

「手を。」

 妹女神様が手を差し出してきたので慌ててその手を掴んだ。
 ふわりと身体が宙に浮く。
 妹女神様は僕と手を繋いだまま空に浮かんだ。
 水嵩は勢いよく増え、白いテーブルも咲き誇る花々も透明な水の中に沈んでしまう。ティーカップが波にさらわれ、花びらと共に遠くへと流されて行く。

「なに?なんでこんなことに?」

「少し前に繋いでいた綱を切ったの。怒っているのよ。」

 怒ってるからって水没させちゃうのかぁ。激しすぎないかなぁ。
 妹女神様はしばらく嵐のように荒れ出した水を見ていた。風が吹き妹女神様と僕の髪が流れる。
 風と自分の髪で前が見えにくい。

「うわ、どーなってるの!?」

 妹女神様が何か言おうとしたけど聞こえなかった。
 唸り声を上げる風が耳を塞いだ。
 さっきまで晴れ渡っていた空は、黒く厚い雲によって覆われる。
 
「………丈夫。……結末を、急いで。………の…が……てくれるわ。」

「………え、……うぷ、なんて……。っっつ!わぁっ!」

 妹女神様が手を離した。
 わ、あ、あ、え、えぇぇぇぇ!?
 落ちるぅーーーー!
 視界がぐるりと回った。
 あ、これ、夢の終わりだ。もうお終い!?
 早すぎるよぉーーーー!!
 ぐるぐる、ぐるぐる僕は回りながら落ちていく。

 大丈夫よ。もう答えは出ているわ。

 妹女神様の声が頭の中に響くように聞こえた気がした。








しおりを挟む
感想 493

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

処理中です...