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68 妹女神様っ!教えて!
しおりを挟むぱちぱちと目を開けると、そこは花が溢れかえる庭園だった。
白いテーブルと椅子が目の前にあり、妹女神様が既に座っていた。
テーブルの上には湯気の立つ紅茶が置かれ、妹女神様は僕を見て微笑んでいた。
「妹女神様……?」
「ええ、久しぶりね。」
ゆっくりと妹女神様はうなずく。
僕は急いで空いている方の椅子に座った。
「質問だらけですよっ!」
妹女神様は笑っている。
「順調そうで良かったわ。」
順調?
「あの、クエスト報酬がよく分からないですよっ。」
妹女神様は不思議そうに小首を傾げた。テーブルに置いてあった角砂糖をシュガートングで摘み、紅茶の中に落としていく。ティースプーンでくるくる混ぜる姿は上品だ。
「この上なく順調よ。思ったよりも最速だわ。」
どうぞとシュガートングを渡されたので、僕も二つ摘んで紅茶の中に落とした。砂糖が溶けてプクプクと泡が数個立ち消えていく。
「ええっとですね、まずクエスト③の騎士の忠誠だけどね。騎士はソヴィーシャだとは思うんだ。これによってソヴィーシャは候補から外れたってこと?」
妹女神様はティーカップを持ち上げ一口飲んだ。
「外れましたよ。」
やっぱり!
「てことは、ヘミィネはラニラルかレジュノ王太子と番になるってことだよね?」
妹女神様は口に手を当て上品に笑った。
「まぁ、ふふふ。違うわ。」
…………うん?
「前回言ったでしょう?これは貴方のゲーム。貴方が進めるクエストであり、貴方への報酬なの。貴方が進めばヘミィネも進むのよ。」
ううーん?
また謎解きみたいなこと言ってる!もうちょっとハッキリ言って欲しいなぁ。
「じゃあ、クエストの④は?王太子の本心ってどういうこと?」
僕はヘミィネではなくフヒィルを選んだ。
「クエスト④は王太子とヘミィネが誤った番契約をしないようにする為のクエスト。」
「誤った番契約?」
妹女神様はニコッと笑った。
「ヘミィネもだけど、王太子にも幸せになってもらいたいでしょう?お姉様の小説の通りに進めれば、また二人は何も理解することなく番になるわ。今まで進めたクエストはそれを阻止する為の布石。」
「じゃあっ、やっぱりヘミィネは舞踏会で薬を盛られたんだ?」
「そうよ。お姉様の小説にはそこまで書かれてはいないけれどね。」
妹女神様はヘミィネが薬を飲まなくてもいいように誘導してくれたんだ。
「ありがとう。」
「いいのよ。たた私はこの世界にこういった形でしか干渉できないのよ。ごめんなさいね。深く考えずに教材を使ったものだから。」
僕は首を振った。ヘミィネと王太子が薬で番にならなくて良かったと思う。
乙女ゲーム仕様の教材って妹女神様が世界に干渉するベースになってるんだね。
駄女神の方は自然を操ってたけど、なんでだろう?世界観が駄女神の想像から出来てるからとかかな。
「王太子の本心って結局なんだったの?」
「簡単に言えば寂しいという心よ。幼い頃にヨフミィという心の拠り所をなくして代わりを探す子。クエストなら答えに正解はなかったのよ。ヘミィネでもあり得たの。」
僕は目を見開く。
「まさか選んだ答えが新たな拠り所…、とか?」
「になる可能性を高める選択。」
つまりフヒィルが新たな拠り所に!?
てっきり僕は選んだ人と王太子がくっつくかもって思って、小説の通りヘミィネが苦しむかもしれないと思ってヘミィネを選ばなかったのに!
妹女神様はくすくす笑っている。
「いいのよ。貴方は最善の選択を選んでいるわ。」
「ええ~~~?」
待って、それならヘミィネの候補はもうラニラルとソヴィーシャだけになるよ?
どどどどっち?
「もういっそのこと答えを教えてください。」
僕は手をプルプルと振るわせて懇願した。
「もう答えは決まってるわよ。」
「決まってても僕にはわからないよぉ~!」
笑ってないで教えて!
「答えはソヴィーシャの騎士の忠誠にあるわ。」
ソヴィーシャの忠誠?
「大丈夫………。」
妹女神様は何か喋ろうとした。しかしそれは轟音で阻止される。
ゴゴゴゴーー……!
と地響きが聞こえ地面が揺れた。
「わ、わわっ!なに?地震?」
グラグラ揺れて机にしがみついた。
「いいえ、これはお姉様よ。」
駄女神?
そういえばどこにいるの?前回は木に吊るされていたけど、今はいない。
ザ、ザザザ…。
波の音が聞こえ足が冷たい。
「えっ、あれ?水が……!」
地面に水が流れていた。美しく咲いた花々が水没している。
うわっ、ちょっと、この水増えてる?
「手を。」
妹女神様が手を差し出してきたので慌ててその手を掴んだ。
ふわりと身体が宙に浮く。
妹女神様は僕と手を繋いだまま空に浮かんだ。
水嵩は勢いよく増え、白いテーブルも咲き誇る花々も透明な水の中に沈んでしまう。ティーカップが波にさらわれ、花びらと共に遠くへと流されて行く。
「なに?なんでこんなことに?」
「少し前に繋いでいた綱を切ったの。怒っているのよ。」
怒ってるからって水没させちゃうのかぁ。激しすぎないかなぁ。
妹女神様はしばらく嵐のように荒れ出した水を見ていた。風が吹き妹女神様と僕の髪が流れる。
風と自分の髪で前が見えにくい。
「うわ、どーなってるの!?」
妹女神様が何か言おうとしたけど聞こえなかった。
唸り声を上げる風が耳を塞いだ。
さっきまで晴れ渡っていた空は、黒く厚い雲によって覆われる。
「………丈夫。……結末を、急いで。………の…が……てくれるわ。」
「………え、……うぷ、なんて……。っっつ!わぁっ!」
妹女神様が手を離した。
わ、あ、あ、え、えぇぇぇぇ!?
落ちるぅーーーー!
視界がぐるりと回った。
あ、これ、夢の終わりだ。もうお終い!?
早すぎるよぉーーーー!!
ぐるぐる、ぐるぐる僕は回りながら落ちていく。
大丈夫よ。もう答えは出ているわ。
妹女神様の声が頭の中に響くように聞こえた気がした。
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