じゃあっ!僕がお父様を幸せにします!

黄金 

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72 妹女神様と最後のお話

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 目を開けると、いつもの女神様の庭園だった。

「お疲れ様でした。」

 いつもの花いっぱいの庭園と、白いテーブルと椅子は元通りになっていた。水没なんてなかったかのように、木々は爽やかな風に揺れ、花の香りが空気に満ちている。
 椅子には妹女神様が座って紅茶を飲んでいた。
 
「ねえ、終わり?本当に終わり?」

 僕はテーブルに駆け寄り尋ねた。
 妹女神様はにっこりと笑ってうなずく。

「ええ、終わりだわ。頑張ったわね。こんなに早く終われるとは思いませんでした。貴方のおかげです。」

 そ、そおっかぁ~。良かった。

「あれ。でもヘミィネに番はまだ出来てないよ?」

 妹女神様は小さく笑う。

「そうね。まだだけど、ほぼ達成しているわよ。」

 本当に?

「ヘミィネと話をしてみるといいわ。」
 
 僕はうなずいた。

「駄女神はどうしたの?何で急に暴れ出したの?」

 僕の問いに妹女神様は困った顔をする。急ではないのだと首を振った。

「お姉様の我儘で貴方を巻き込んでいるのに、貴方が思った通りにやらないからと言って、勝手に巻き戻そうとしていたの。」

 ええっ!

「だから縛って吊るしていたのよ。」

 えええっ!
 
「巻き戻しになると僕ってどうなってたの?」

「もう一度生まれた時からになるわ。そして六歳でまた死ぬのだけども、お姉様が今回生き返らせたようにするかどうかはわからなかったの。死んだまま話を進めたかもしれないし、失敗したとまたやり直すとなれば貴方は生まれた瞬間から六歳の死までをまた繰り返すことになるわ。お姉様が納得するまで延々と。」

 ゾワっとした。冗談じゃない!

「だから一度で終わらせるよう。私が介入していたのだけど、それが気に食わなかったようなのよ。私の介入を壊そうとしたから吊るしていたのだけど、逃げてしまったの。そして貴方が大切にしていたものを使って世界に介入して、壊そうとしたのよ。貴方は私達姉妹とあの世界へ繋がる存在だから、貴方の思い入れがあり普段から持っていた物を使うのが効率的だったの。」

 何て我儘っ!
 僕の手鏡はそのせいで壊れちゃった。
 
「ありがとうございます…。じゃあ倒せるように力を貸してくれたってことですよね?剣もありがとうございます!」

 あの神様の宝剣のおかげでラニラルの火傷も綺麗に治っていた。命が助かったとしてもラニラルの肌が火傷で爛れてしまうところだった。

「良いのよ。あの剣は私の夫が力を貸してくれたものなの。お姉様より私の方が格上とはいえ、あの世界はお姉様の方が権利が上だったから私の介入だけでは権利を奪えなかったのよ。だから夫に助けてもらったの。」

 私の夫は上級神なのよ、と妹女神様は得意顔だ。
 つまり格上である旦那様に助けてもらったのかぁ。

「僕はこの後どうしたらいいですか?」
 
 妹女神様は申し訳なさそうにした。

「お姉様が無理矢理連れてきたことは申し訳ないのだけども、帰すことが出来ないの。そもそも貴方をどこから連れて来たのか本人も把握できていないのよ。」

 でえぇ。なんていい加減な。

「少し前に元の家族の夢を見ましたけど。」

 もしかして女神様が見せてくれたのかなぁとか思ったりもしたんだけど。

「きっとそれは貴方の夢ね。」
 
 そっかぁ。夢だったかぁ。もしかしたら家族に会えたのかなと思ってしまったけど、僕が自分で見せた夢だったのかぁ。

「過去を懐かしむ気持ちは理解出来るわ。だけど今、貴方がいなくなったら悲しむ人達が大勢いるの。だから彼等と共に生きて行ってくれないかしら?」

 う、うーん。それは構わないけど。もう前の人生も薄れてしまっているし、今の生活は楽しいもんね。
 僕が了承すると妹女神様は安堵していた。

「これからはお姉様の介入はないわ。ただ…。」

 ただ…?
 嫌な予感がする。

「わたくしったら、この世界はお姉様ベースが基本だとしか思ってなかったから、ほら…、適当に教材を入れ込んでしまったでしょう?だから、ね?」

 ね?

「それに今回レアアイテムを顕現させてるでしょう?それが世界に干渉してるし、お姉様を悪の女神としたから……、ね?」

 ね?
 なにが、ね?

「時々悪の女神が復活して、神様の宝剣に選ばれし者が……。なんて感じかしら?」

「え、まさかこれからそんな話が始まるとか?」

 駄女神の小説の方じゃなくて?

「うふふふふ、ベースがそうなってしまったのよ。ごめんなさいね?悪の女神の復活スパンはどのくらいがいいかしら?10年?」

「そんな短いのは困るよ!」

「あら、そお?じゃあ……五十年かしら?」

 それじゃあ、僕が生きてる間にまた悪の女神が復活するかもじゃん!
 僕がブルブルと首を振ると、妹女神様は考えている。

「じゃあ、百年!」

「もうちょい!」

「そう…?三百年ならどうかしら?」

「もう少し…。」

「五百年よ。これ以上は嫌だわ。世界を維持するためにもイベント発生は必須よ。」

 悪の女神イベントが五百年に一度しか使えないなら、他のも考えなきゃ。とかなんとか妹女神様は呟いている。

「いいわ。貴方達の国だけしかないわけではないもの。短期イベントとかで調整しておくわ。」

 なんかもう神様達のルールがよくわからない。
 
「駄女神ってどうなったんですか?」

「お姉様?」

 お姉様ならあそこよ。と、指差した。草木が自然と割れて向こうに湖が見える。

「閉じ込めたのよ。あまりにも素行が悪いとああやって眠りにつかせられることがあるの。しはらくは起きないわ。起きても私が世界の管理者になったから貴方達には何も出来ないから大丈夫よ。それに、貴方の感覚では途方もない時間を寝ていることになるから、意識する必要もないわ。」

 それならいいけど。
 
「……。」

 あれ?
 口がパクパクする。声が出ないよ?

「もうこれでお終いよ。貴方には感謝するわ。番と幸せにね。」

 あ、そだ。番。ヘミィネの番って結局どっちになってるの?
 僕は?
 僕の為のクエストって言ってたけど…。
 ぐらっと足元が崩れた。

「ありがとう。元気でね。」

 妹女神様が笑顔で手を振る。
 ぐるぐるといつものように視界が回り出した。
 うーん、やっぱり肝心なところは教えてもらえないんだねぇ。
 でも、もう文句は言わないよ。最後だもん、妹女神様が来なければ、僕はもっと大変だった。
 だから僕の方こそ感謝しているよ。
 僕がぐるぐる回りながら手を振ると、妹女神様は満面の笑顔を見せてくれた。














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