偽りオメガの虚構世界

黄金 

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78 楓の番

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 本日は卒業式。
 卒業生徒とその保護者、そして在校生代表は体育館に集まり卒業式の真っ最中だ。
 本来在校生代表でない生徒は自宅待機となっているのだが、自宅待機の筈の楓は登校して来ていた。
 誰もいない二年生の教室。
 今日は識月や光風達でさえ自宅待機組。
 楓は窓側の一番前の席で待ち人を待っていた。
 窓を少し開けて風を入れ込む。
 まだ少し冷たい風が、楓の黒髪をサラサラと揺らした。

 外から聞こえる微かな歌声に、楓は目を瞑って耳を澄ませる。
 口ずさむ歌声は高く細く、呼ばれてやって来た人物が入って来ても、止まる事はない。



 言われた通りに式を抜け出し、教室に入った法村は、鍵を閉めて立ち尽くした。
 入ったら鍵を閉めろとチャットに入っていたのだ。
 一番前の窓際の席に座り、肘をついて歌を歌う楓は、普段のおちゃらけた雰囲気を消して、細く涼やかに歌を歌っていた。

 その姿に法村は見覚えがあった。
 
 フリフィアで貰った試作品VR。卒業式、誰もいない教室で待つ楓。
 開いた窓から風が吹き、カーテンを揺らして楓は待っているのだ。
 
「ふふ。」

 歌を止めて楓が小さく笑った。

「………カエデ?」

 楓から風に乗ってふわりと甘い香りが流れてきた。
 今時アルファもオメガも不用意にフェロモンの匂いを出す事はない。
 だから法村もそう経験があるわけではないが、この理性を奪う甘美な匂いに、法村はクラリと目眩を起こし、一歩足が出る。
 これ以上近付けば、楓に手を出してしまう。
 
「僕が送った試作品、楽しめた?」

「…………カエデがあれは作ったのか?」

 そうだよ、と楓は微笑んだ。
 楓が自らモデルになって作ったのだ。この世に一つだけの法村の為に作った試作品だった。
 法村に近付いては危険に晒すと分かっていても、忘れて欲しくなくて作った。
 どうせ守るならと転任までさせて、天邪鬼の楓は法村に近付いた。
 
「カエデは発情期なのか?匂いがっ……。」

 法村が苦しげに訴える。

「そうだよ。…………センセ、『来て』。」

 ビクンと法村が震えた。苦し気に眉を寄せて、近くの机に縋り付く。

「カエデ、ダメだ……!襲ってしまうっ!」

 楓が無情にも窓を閉めた。
 オメガのフェロモンが濃さを増し、法村を逃すまいと包み込む。
 楓は楽し気にクスクスと笑った。
 優しい、優しい、楓のアルファ。
 そんなに我慢しなくていいのに。

「苦しいでしょ?…………タクミ君からも、フェロモンが僕に届いてるよ。」

 優しく楓は告げる。
 小さなカエデは法村の事をいつもタクミ君と呼んでいた。
 
「……………カエデ………。」

 楓は椅子から立ち上がり、服を脱ぎ出した。
 ゆっくりと、法村が目で追う様に見せつけていく。上着を脱いで、シャツのボタンを上から三つ外し、ベルトをシュルリと抜き去る。
 ズボンとパンツを引き下ろし、ゆっくりと産毛すら生えていない滑らかな白い足を抜いていった。
 楓は白シャツ一枚で机に寄りかかった。




 そんなに苦しまなくて良いんだよ?さぁ、おいで?
 そう語り掛け誘う瞳は、法村から視線を外す事を許さない。
 軽く机に座った楓の白い腿が目に眩しい。
 ボタンは上だけ外して下はまだ止まっている。なので見えそうで見えない。
 潤む瞳がゆっくりと瞬きをする。薄く開く桃色の唇の隙間から、赤い舌が覗いていて、法村はゴクリと喉を鳴らした。
 まだ楓は学生だ。
 理性がそう警鐘を鳴らすのに、法村の足はゆるゆると楓に近付いて行った。

 楓が法村に向かって両手を伸ばした。
 シャツの裾が上がり、チラリと見えたそれに、法村は鼻血を噴きそうな程血が昇る。
 
「はぁはぁ、……楓、我慢出来ない………。」
 
 法村に纏わりつく楓のフェロモンが、法村のなけなしの理性を奪っていった。
 法村のピアスから何故か緊急抑制剤が出ないのだが、それに気付く事も今の法村には出来なかった。

「………ほら、タクミ君触りたかったでしょ?とぉっても熱いんだよ。」

 少し足を開いて法村に見せ付ける。
 法村が楓の手を取り腰を引いて口付けて来たのを、楓は愉悦を浮かべて受け入れた。
 楓は目的の為なら、この身体を使う事も厭わなかった。
 最終的に欲しいものが手に入るなら構わないと、いろんな人間と身体を重ねて来たが、それも今日で終わりだ。
 
 オメガは一度しか番えない。
 番えばそのアルファとしかセックスは出来ない。

 楓は身を捩って机に手を付き、己の白いまろやかな双丘を法村に差し出す。割れ目の間は既に濡れ、ヒクヒクと法村を待ち受けていた。

「ふふ、ほら、僕待ってるよ。……入れて。」

 法村は楓の足の間にしゃがみ込み、その濡れた穴に顔を近づけた。
 ペロペロと舌の這う感触に、楓は熱い吐息を漏らす。

「ふふ、ふ、くく、ワンコみたいだねぇ~。」

 柔らかい舌が出入りし出し、小さく喘ぎながら楓は笑った。
 ホント、法村は楓の可愛いアルファだ。

 カチャカチャと法村も自身の陰茎を取り出して、手で弄り出す。既に猛々しく勃ち上がり、ビクビクと動いて汁を垂らしていた。

「……カエデ、入れていい…?」

 法村が白い尻にキスを這わせながら訴える。

「もぅっ!早く入れないと仕まっちゃうよ!」

 楓は態と拗ねてみせた。
 法村は慌てて立ち上がり楓に覆い被さる。
 楓のぴょこんと勃つ陰茎を撫で、指を腹から胸に滑らせながら、法村は小さな後孔に太い陰茎を沈めていった。

「……あああ、ぁ、はぁ………あ、いい………気持ち良い…………っ。」

 楓も発情期にアルファを受け入れたのは初めてだった。
 あまりの気持ち良さに意識が飛びそうになるが、なんとか持ち堪える。
 開いた口からポタポタと涎が落ち、喘ぎ声が止まらない。

「あぁっ!いいっっ…………んぁ………はぁ……はぁ……、かんでぇっ!あっ、んん、項、はやく、噛んでっ!」

 楓は法村に項を噛めと懇願する。

「……で、も………あ゛ぁ………一生に一度、なのに………………、俺なんか、と……………あ゛あ゛あ゛っ!」

 法村が躊躇うと楓がぎゅう~~と後孔に力を入れた。楓は細身だがかなり鍛えているので腹筋も強い。思いっきり入れた陰茎が圧迫されて、法村は痛いのか気持ち良いのか分からない衝撃に呻いた。

「い、い、か、らっ!『噛めっ』!!!」

 懇願というより命令だ。
 法村は楓の項にキスを落とし、口を開けた。はぁ……と息を吸いながら、歯を突き立てる。
 まさかオメガと番になる日が来るとは思ってもいなかった法村は、もう一生懸命だ。
 番になる瞬間、多幸感に包まれるのはオメガだけではない。
 アルファの法村もあまりの気持ち良さに陶酔し、我を忘れて腰を打ちつけた。
 ドクドクと噛み付いたまま楓の中に精を放ち、牙を離してカエデ、カエデと何度も噛み付いた傷を舐める。
 長い射精が終わりズルリと陰茎を抜くと、楓は法村の方を向いた。

「………カエデ…………。」

 縋り付く法村の頭を、楓は胸に抱き締める。
 楓の小さな粒に法村は舌を這わせ、吸い付くのを、楓はうっとりと眺めた。髪に指を沈め、愛おし気に撫でる。
 無心に乳首に吸い付く法村の頭を抱き込み、楓は視線を上げた。
 視線の先には久我見湊のホログラムが立っていた。
 表情は無いが、楓には何を考えているのか手に取るように理解していた。

 楓の愛らしい顔がニィぃと笑う。

「してやられたな。」

 湊が一言放ち、消えた。

 楓はフィブシステムの一部を改竄した。
 改竄にはまたもや史人経由で識頼みになってしまったが、金は払ったし識も協力的だったので上手く行った。
 望まぬ番契約から逃れたい、という理由に同情的だったのだ。流石仁彩の父親だ。

 楓が改竄したのは健康管理システムだ。
 オメガは発情期が近付くと、その経過が本人に報告される。だが九重にそれを知られるわけにはいかなかった。
 九重が手に入れた湊の身体はアルファ性だ。
 次の後継を手に入れる為に、楓を無理矢理番にする可能性があった。

 とんでもない!!!

 その考えに早々と行き着いた楓は、九重に発情期を気付かれないよう、健康管理システムを改竄したわけだ。
 学校の中で態々噛ませたのは、単に法村が好きそうだなという理由もあるが、法村のアパートや楓の自宅は九重の監視が入っている。
 学校という場所は独特な個別システムが入っているので、九重が本体で入り込むには少々無理がある。それを利用した。
 ついでに法村のピアスにも細工して、本日の緊急抑制剤投与を停止している。

 楓は九重に気付かれる事なく発情期に入り、学校で法村に噛ませた。
 もう九重は楓に手が出せない。

 楓と法村が番になった事に気付いて見に来たのだろうが、既に番った後なので諦めた様だ。

「くくくくくっ。」

 楓が喉の奥で笑うと、法村はどうしたのかと見上げて来た。
 可愛いアルファを手に入れた楓の顔は、頬を上気させ欲を孕んで絶対者の瞳で笑っていた。
 その他者を飲み込む笑顔を、法村はうっとりと見上げる。

「何でもないよぉ。さて、続きは僕の家でやろう?センセ、ズボンを履かせて抱っこして?裏門に部下と車待たせてるから。あ、センセは一年後に僕とここを卒業ね。教師生活最後の一年になるから張り切って行こ~!」

 そのセリフに法村は慌てる。
 一気に目が覚めた。

「えぇ!?俺は仕事辞めるのか!?その後どうすればっ!」

「ん~?そんなの決まってるじゃん。僕の伴侶でお付きで下僕だよ。」

「な、なるほど………????」

 頭にはてなマークをつけた法村は、楓に脱いだパンツとズボンを履かせてお姫様抱っこした。

「はぁ……。軽い、小さい、可愛い………!」

 ジーンと感無量で楓を抱き上げた法村に、楓はいいから早く行けと命じる。
 
 外からはパチパチと拍手が鳴り、人々の歓声や泣き声が聞こえる中、静かに楓と法村は帰って行った。














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