悪役令息が戦闘狂オメガに転向したら王太子殿下に執着されました

黄金 

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番外編

154 ヨニアの翠玉⑫

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 夢にまで見たネイニィとの番の儀式に、ヨニアはクラクラと酩酊感を感じながら貪った。
 涎を垂らし獣のように醜くなりたくない。そう思うのに、ネイニィの唇に吸い付き身体中にキスの跡を残していく。
 首筋には大量に赤い花びらのような跡があるが、まだまだ足りないとヨニアは吸い付いた。
 挿れてと請われて、下僕のようにネイニィの中に自分を挿れる。
 この人を自分のものにしたい。
 自分だけが愛していい人。
 
「ん、あぁ、はっあっあっ、せんせ、噛んでよ、早く、噛んで!」

 背後から抱き締め揺さぶられ、ネイニィは息も絶え絶えに訴える。
 もう意識がとびそうだった。
 項に何度もキスを繰り返し吸い上げながら刺激を与えてくるのに、噛んでくれない。
 握った拳をヨニアが上から優しく手のひらで覆った。ピッタリとネイニィの背中とヨニアの身体が合わさり温かい。ふわりとヨニアの優しい匂いが包み込み、ネイニィはクラリと目を回し、力が抜けて前屈みに頭が落ちた。お尻だけ上げた卑猥な格好になったネイニィの臀部から、グチュグチュと水音が響き、パンパンと肉と肉が打ち合う。

「ーーあぅっ、ん、………あぁっ、あ、せんせ、だめ、もう、がまん、できないっ……!」

 枕を引き寄せぎゅうっと握り締める。

「……はぁ、はぁ、ネイニィ………、可愛い………。また射精ちゃうねっ………。」

「はうっっ!」

 ズンっと奥を強く打たれて、ネイニィは堪らず白濁を漏らす。勢いがないのはこれで何回目かだからだ。数を数えることも出来ずに翻弄されている。優しい抱き方なのに、ヨニアの性行は長くて粘着質だ。

「んむ、んんん、ぐすっ………、かんでよぉ~……。」

 とっくの昔に涙は流れていたが、ネイニィはクスンクスンと泣き出した。オメガの発情期で思考が纏まらず、番になりたいという本能だけがネイニィの中で渦巻いている。なかなか噛んでくれないヨニアにネイニィは悲しくなってきた。

「はぁ…………。ごめんね。あんまりにも可愛いからつい……。」

 ネイニィの項は吸い付かれ過ぎて赤くなっている。
 
「あぁ……、痕になるかな……?でもネイニィなら治せちゃう?ネイニィ?ね?」

 尋ねたがネイニィはポロポロ涙を流している。
 嬉しすぎて、この瞬間が幸せ過ぎて、つい番になるのを引き延ばしてしまった。これで終わりになるわけでもないのに。
 待ち過ぎて未だに信じられない気持ちがあるのだ。
 項を噛んだらネイニィはずっとヨニアのもの。
 その幸せが尊くもあり、恐ろしくもある。
 
「ネイニィ………、噛むね?噛んでもいい?」

 耳元にそっと囁くと、目を見開き、直ぐに微笑んでウンウンとネイニィは頷いた。
 噛み痕は小さくしよう。オメガの項の噛み痕は、聖魔法の治癒でも消えないと聞いた。
 口を開け、なるべく小さく噛む。でも深く、奥深くまで、ヨニアのものになるように、ググッと顎に力を入れて射精した。
 血の味が広がり、噛みながら舌でペロリと舐めた。
 

 ネイニィ、大好き。

 
 大好き。


 君がしつこいと言っても、邪魔だといっても、ずっと追いかけるから……。

 顎の力を抜いて、噛み痕を確認した。
 ネイニィは恍惚とした表情で瞳は虚空を見つめている。半開きの口から涎を垂らし、普通なら間抜けな顔だろうに、ネイニィならなんでも美しい。
 長い射精が終わり、ヨニアが陰茎を引き抜くと、ネイニィは小さく呻きながらポロリと涙を流している。

 うつ伏せだったネイニィを反転させ、ヨニアは瞼や頬に口付けを繰り返す。

「……………ん。」

 ネイニィはボンヤリと上を見た。
 ヨニアの頭上には金のステータス画面がある。

『おめでとう、アテネラ・リトフ・ネイニィ。』

 ??アテ…?誰、それ。でもネイニィって同じ名前?何だか懐かしい……。
 なんでだろう?
 文字が流れだす。

『番を見つけたかな?愛する人を得られたかな?ネイニィは幸せを見つけ、全てのネイニィに幸せを送れたかな?誰かがつまずいても、君の幸せが皆んなを幸せにするよ。お疲れ様、ネイニィ。』

 これはゲームだったはずなのに、まるでネイニィに語りかけるように文字が流れる。
 金色のステータス画面がサラサラと金の粒になり、滑らかに見えた表面がざらざらと変わり出した。

『そして、おめでとう。ここから先は手伝えないけれど、君が幸せになると信じて、この世界を贈るよ。』

 ネイニィはずっと泣いていたけど、また涙が流れだす。
 語りかけるのが誰なのか分からない。
 だけどとても懐かしく悲しかった。

『おめでとう。』

 何度もおめでとうと繰り返される。そして幸せになれと言う。
 金の画面はサラサラと崩れ出した。固めた砂粒が崩れるように、サラサラサラサラと落ちて広がり消えていく。
 
『これは君への、君たちへのプレゼント。』

 サァアァァァァーーー……と画面が一気に広がり薄くなる。

『愛してるよ、ネイニィ。』

 それを最後に跡形もなくステータス画面は消えてしまった。
 
「どうしたの?」

 目を見開いて上を見たまま固まるネイニィに気付いて、ヨニアはネイニィの顔を覗き込んだ。

「……………んーーん。ハッピーエンドになったんだ……。」

 呟くネイニィに、ヨニアは首を傾げた。
 そしていつものように微笑む。ネイニィが変なことを言ってもヨニアは全く気にしない。

「…続きをしようよ。」

 まだまだ足りないとヨニアは深く口付けてくる。

「……うん。」

 うん、ゲームは終わったけど、僕たちはこれからだもんね。
 さっきの誰かがくれた言葉の意味はあまり分からなかったけど、ネイニィは必ず幸せになるからと心に誓った。






 ポンッ………と頭の中に音が響き、目の前に金色に光る画面が現れた。

『アテネラ・リトフ・ネイニィはナンバー36の世界で攻略対象者ヨニア・アバイセンとハッピーエンドを迎えました。次の世界に移動して下さい。』

「…………………。」

 移動なんて出来るわけがない。もう自分は精神支配型ではないのだから。
 そうメネヴィオ・キーゼアンは考えながら用意された紅茶を飲んだ。
 これはネイニィがゲーム終了時に送られてくるアナウンスだ。幾つかの世界を並行して攻略させるつもりだったので、エンディングを迎えたら案内がくるように設定していた。
 まさか生まれ変わっても精神支配型の魂を追って案内板が届くとは思っても見なかった。
 凄いじゃないか、以前の自分は。
 これが来たことにより独自に調べられないネイニィの情報を知ることが出来た。
 攻略対象者ヨニア・アバイセンは、対象者の中ではエンディング後も幸せになれる可能性が高い人物だった。
 地位や名誉を求めなければ、ヨニアは絶対にネイニィを裏切らない。死ぬその時まで愛情を注ぐ人物だった。
 ネイニィの為ならばプライドも地位も自分自身さえもあっさりと捨てることの出来る人物。それを知っていたからヨニアを見つけた時、ネイニィを託すことが出来るのはヨニアしかいないと思った。
 攻略対象者ではないがウィゼミト・ディテ・ナワラーヤならばどうにかしてくれるだろうと思い、二人を任せたが、うまくいって良かった。
 金の案内板は親密度が最高値を意味する。

 良かった……。

 うっかりメネヴィオは微笑んでしまった。

「兄さま、ご機嫌だね。」

 メネヴィオの弟アヴィラワが琥珀色の瞳を細めて妖艶に笑う。アヴィラワはメネヴィオとのお茶会を頻繁に開きたがる。常に一緒に居たいのだろうが、王太子としての公務がある為叶わない。いい逃げ場ではあるが、それでも可能な限り一緒に過ごすようにしていた。
 
「今日のお茶は美味しいからね。アヴィラワが選んでくれたんだよね?」

「そうだよ。良かった。」

 こうやって一緒に過ごせばアヴィラワは大人しい。
 今日は機嫌が良いよ。ネイニィにハッピーエンドが訪れたのだから。





 

 ここはアニナガルテ王国王太子執務室。
 窓から入る陽の光の中で、小さな手が何かを掴もうと伸ばされた。

「はいはい、少し待とうね。お手紙を読んでるからね。」

 ナリシュは腕に抱く赤子に微笑み語りかける。
 手紙ではなく影が寄越した報告書なのだが、オリュガはそれを熱心に読んでいた。
 
「…………くっ、むっ、ふむぅ~~~!」

 オリュガの呻き声に反応して、赤子はオリュガの方に気を取られる。

「ふふふふ、変な父様だねぇ。」

 ナリシュは産まれたばかりの我が子を抱っこして、オリュガの様子を観察していた。きっと知りたいだろうと思い、遊びに来たついでに渡したのだ。

「なんてこと、なんてこと!うらやまっ!羨ましい~~~!なんでアニナガルテには海がないの!?僕も海賊船をぶった斬りたかった!」

「ネイニィは船は斬ってないはずだけど?」

 ふにぁあぁぁぁーーー!とオリュガは騒ぐ。
 産まれた息子は自分の産みの親を見て大層喜んだ。
 まだ生後一月の息子はナリシュにそっくりのプラチナブロンドの髪に群青色の瞳を持つ、とても綺麗な子供だった。まだ幼く検査はしていないが、魔力の多さからもアルファで間違いないだろうと言われている。
 名前はロラシュと名付けられた。ロラシュ・カフィノルア王子。
 愛嬌があり誰からも好かれている。
 オリュガの出産は難産になりやすいと言われる男オメガとは思えない超安産で終わった。
 ポーンと産まれてオギャーと泣く我が子に、オリュガは涙を流して有難うと言っていた。
 産んで暫くは静養させられていたが、学院の卒業式に参加し、少しずつ公務もこなしながら王城で過ごしていた。
 ナリシュの言うことを聞いて大人しくしていたのだ。
 お腹の子の為!
 その一心だった。

「僕も海賊船討伐行きたい~~~~!」

 半泣きのオリュガに縋られて、ナリシュはタラリと汗を流す。
 オリュガは頑張って大人しくしていた。王城に留まり、ナリシュの言うことを聞いて、城の外に出るのも公務で出る時だけだった。
 窓からの出入りもしなかった。
 暴飲暴食もやめていた。

「………………………………そのうち連れてってやるから。ね?」

 抱っこしていたロラシュをミリュミカに預け、優しくオリュガを抱き締め頭を撫でる。

「絶対だよ!あ、ついでにネイニィのとこも行こうよ!」

 それはネイニィが喜ぶか疑問だなとは思ったが、ナリシュはそうだねと微笑んで頷く。自分の番が喜ぶならば、他はどうでもよかった。

「あ、でも海賊はネイニィが倒したばかりかぁ~。どのくらいで発生するのかな?」

「テイローラワ国の王太子が根絶やしにしたようだからまだ先じゃないかな?」

 動物や虫じゃないんですから…とミリュミカはロラシュ王子をあやしながら内心ツッコミを入れる。

「新婚旅行は船旅がいいな!」

 どう考えても海賊探しをするつもりのオリュガに、ナリシュは微笑みながら頷く。

「そうだね…。でもロラシュはまだ幼いから危ないことは出来ないんだよ?」

 そう言われてオリュガはがあぁ~んとショックを受けた。
 そうだった…。
 
「………分かった…。ロラシュも強くなれば良いよね?」

「……え?」

 ナリシュとしては普通の楽しい新婚旅行にしたかっただけなのだが、オリュガは斜め上に解釈した。
 ミリュミカはご機嫌な笑顔のロラシュにニコリと笑いかける。
 
「このミリュミカがお守り致しますよ。」

 ロラシュはニコーと笑い返した。






 春が過ぎ、リフィッツエの町に雨が続く。
 ネイニィはぐったりとベットに横になって寝ていた。意識はある。具合が悪いのだ。ただこれは病気ではない。

「ネイニィ?起きてる?ほら、冷たいスープだよ。」

 果物の果汁を使って作った冷製スープ。少し酸味があり普段ならネイニィは好まないようなスープを、ヨニアは料理人に作らせ持ってきた。

「…………もうダメ……。」

 ヨニアの美しく整った眉が下がる。

「少しだけでも食べれる?吐いても良いから。」

 起きあがろうとするネイニィを支えて、ヨニアはスプーンで一掬いすくってネイニィに飲ませる。
 試行錯誤した結果、これならなんとか飲めると分かって、ヨニアは味や食感を変えずに栄養価を入れるよう料理人に命じ作らせていた。

「………ん、これなら、少しは。」

 本当に少しだけ飲んでまたベットの上に転がった。

「こんなに悪阻って酷いんだね……。」

 苦しむネイニィを見て、ヨニアは泣きそうだ。
 一緒にベットに入ってきて、ネイニィを抱き締める。食事を取れていないからか、ネイニィの身体が冷えている気がして心配だった。

「………大丈夫だよ。泣かないで…。」

 具合が悪いネイニィの方が慰める。
 ずっとムカムカしてるけど、ネイニィは幸せだから良いと思っている。自分とヨニアの子なのだから、絶対美形だ。
 早く会いたいなぁ。
 ふわふわと石鹸の香りがする。番の優しい香り。どんなに具合が悪くても、この香りは良い匂いだと思える。
 温めてくれる番の腕の中で、スゥー…と深くヨニアの香りを吸い込み、ネイニィはトロトロと眠りについていった。







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