Doubts beget doubts

朔月

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私、死んでないよ

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 私は『死んだ』。
いや、正確に言えばまだ生きているのかもしれない。
私は『死ぬ』まで、心臓が停止して脳の活動に終止符が打たれることこそが死であると思っていた。
しかし、どうだろう。
現に私には意識があるじゃないか。
私は、まだ死んでいない。

ーーーーーーーーーーーーーー

しばらくして、私の葬式が行われた。
まさか、自分の葬式を見ることになるなんて。
母が、父が、妹が、友達が、先生が、恋人が…見える。
「もっと近づいて触れたい」
私は手を伸ばし、足を一歩踏み入れた。
刹那、見えない壁に当たり、自分の死体のほうに引き戻された。
仕方なく皆んなを見守る。
涙を流す人を見て、私は思わずもらい泣きをした。
「私、死んでないよ。まだここにいるんだよ…」
口にした言葉は誰にも気付かれず、弔いの空間に埋もれていった。

ーーーーーーーーーーーーーー

 葬式の後、私はバスに乗せられた。
皆んなも一緒に乗り込んで、私を乗せたバス型の霊柩車は走り出した。

ーーーーーーーーーーーーーー

「葬式が終わったら次はどうするんだっけ。ねぇどこに行くの?」
妹は母に聞いた。
「そうね…。お姉ちゃんと最後のお別れをして、天国に送り出すのよ」
母は枯れた声でそう言った。
私はまた、
「死んでないよ。ここにいるんだよ…」
と呟いた。
しかし、私の嘆きは誰にも知られず、車の音にかき消された。

ーーーーーーーーーーーーーー

 煙が上がる厳かな建物に着いた。
おそらく、葬儀関係の何かを行う建物だろう。
線香の匂いが漂っている。
それにしても不便だ。
死体から3mくらいしか移動出来ないし、ガタガタと移動するときの振動も伝わってくる。
『死体の私』と私は深くつながっているようだ。
ところでこんな奥まできて、一体どこに向かっているのだろう。
だんだんと暑くなってきた。
服を脱ぎたい。

ーーーーーーーーーーーーーー

 私と死体は、厚い金属の壁の前まできた。
私はここにきてようやく理解した。







火葬場だ。







私は装置の奥まで入れられた。
厚くて冷たい金属の扉が閉まる。
「助けて!!!!」
なんとか外に出ようと走ったが、見えない壁に阻まれた。
どんどん自分の身体が焼けていくのを感じる。
目が、手が、頭が溶けていく。
あついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあつい



「私、死んでないよ!!!!!!まだここにいるんだよ!!!!!!」



助けを求める声は誰にも届かず、魂の墓場に埋もれていった。
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