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5-11 ハッピー・ライフ・ゴースト
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「久しぶりじゃん。元気だった?」
「えっ、げ、元気だけど」
記憶のなかの見慣れた笑顔で笑う母親に、私は反射的に返事をしてしまう。
母親の足元には影がなかった。
これは、悪夢だ。
内容をそらせ。
これ以上、悪夢を大きくさせたらマズい。
でも、もう少し話していたい。
悪夢でもいい、って思いはじめてる。
ユメジ……ハニービー……!
私、どうしたらいいの?
「あ、あの……どうしてここに」
「見てたから」
「み、見てたって?」
「食生活。しっかりしろって、ユミルが一人暮らしするときに言ったよね」
何年か前の春。
ブルーム・アカデミーを卒業し、一人暮らしをする自分に、母親が言っていた言葉だ。
確かに私は何かに熱中すると、他のものをおろそかにしてしまうことがある。
勉強にゲームに、趣味である千ピースのパズル。
特に、入浴中の読書なんかは熱いからと給湯スイッチを切ると、湯が冷たくなるまで入ってしまい、風邪をひいてしまうこともあった。
そのへんを母親は、つねづね心配していたのだ。
「じゃあ、お母さんは私の食生活が心配で、ば……化けて出てきたってこと?」
「そうそう! でも、そんなに怖くないでしょ。影がないくらいで。本当はさ、顔色も悪くて、目も生気がないんだよ。メイクでごまかしてるの。しゃべるのも口を動かさなくていいんだけど、わざわざ動かしてるのよ。やっぱり、口を動かさないでしゃべるなんて、気味が悪いじゃん。私も周りの幽霊見ていろいろ勉強したんだ。我が子におびえられたら、生きていけないもんねえ~」
「いや、えっと、もう生きてないけど……」
「ハハハ! そうだったわ」
おかしそうに笑う母親に、私もつられて笑顔になってしまう。
この人、死んだのに全然変わってない。
いつも明るくて、家族の中心だった。
そのあたたかな心で、家族を優しくつつんでくれていた。
まるで太陽みたいな人だった。
何だか、涙がこみあげてきてしまう。
もう、この人がこの世にいないだなんて。
「ねえ、ユミル。ごはん、作ってあげよっか」
「へっ」
突然な母親の申し出に、私はまぬけな声をあげた。
「ど、どゆこと。作れるの、幽霊が」
「えっ、げ、元気だけど」
記憶のなかの見慣れた笑顔で笑う母親に、私は反射的に返事をしてしまう。
母親の足元には影がなかった。
これは、悪夢だ。
内容をそらせ。
これ以上、悪夢を大きくさせたらマズい。
でも、もう少し話していたい。
悪夢でもいい、って思いはじめてる。
ユメジ……ハニービー……!
私、どうしたらいいの?
「あ、あの……どうしてここに」
「見てたから」
「み、見てたって?」
「食生活。しっかりしろって、ユミルが一人暮らしするときに言ったよね」
何年か前の春。
ブルーム・アカデミーを卒業し、一人暮らしをする自分に、母親が言っていた言葉だ。
確かに私は何かに熱中すると、他のものをおろそかにしてしまうことがある。
勉強にゲームに、趣味である千ピースのパズル。
特に、入浴中の読書なんかは熱いからと給湯スイッチを切ると、湯が冷たくなるまで入ってしまい、風邪をひいてしまうこともあった。
そのへんを母親は、つねづね心配していたのだ。
「じゃあ、お母さんは私の食生活が心配で、ば……化けて出てきたってこと?」
「そうそう! でも、そんなに怖くないでしょ。影がないくらいで。本当はさ、顔色も悪くて、目も生気がないんだよ。メイクでごまかしてるの。しゃべるのも口を動かさなくていいんだけど、わざわざ動かしてるのよ。やっぱり、口を動かさないでしゃべるなんて、気味が悪いじゃん。私も周りの幽霊見ていろいろ勉強したんだ。我が子におびえられたら、生きていけないもんねえ~」
「いや、えっと、もう生きてないけど……」
「ハハハ! そうだったわ」
おかしそうに笑う母親に、私もつられて笑顔になってしまう。
この人、死んだのに全然変わってない。
いつも明るくて、家族の中心だった。
そのあたたかな心で、家族を優しくつつんでくれていた。
まるで太陽みたいな人だった。
何だか、涙がこみあげてきてしまう。
もう、この人がこの世にいないだなんて。
「ねえ、ユミル。ごはん、作ってあげよっか」
「へっ」
突然な母親の申し出に、私はまぬけな声をあげた。
「ど、どゆこと。作れるの、幽霊が」
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