軽音部の恋物語は音を奏でるだけでは成立しない?

ど~はん

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8.噂の幽霊

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「まぁ~さか。で……出るわけないでしょ」

千瀬が言った。

「それがさ、何人も見たってさ」

「幽霊っていうとだいたい夜だろ?何人もっておかしくないか?」

達真の言うとおり、怪談となると深夜2時~とか、夜中に鏡を~とか、夜の話になる。
何人も見るということは、夜の学校に来ることになるが、そういうのに興味ある人間ならいいが、そんなに何人も夜の学校に来るだろうか……。

「そう思うだろ?俺も最初、そう思った。だが聞いた話によると違うらしい」

「もしかして昼間!?」

三葉は、驚いてそう言うと同時に席を立つ。

「いや、部活やってる時間帯だ」

この学校は放課後午後4時から部活。
まだ日が沈んでいない時刻だ。

「目撃情報によると実験室、科学室、生物研究室とかがある廊下らしい」

「あそこか、突き当たりには図書館があったよな」

「そうだ。ということで今日の夕方行くぞ」

龍人が提案をすると、

『却下!』

と他の4人が声を揃えて言った。

「お前ら…そんな怖いのか?」

「そっ……そうじゃないが…」

「わ…私たちは練習あるし……ね?成羽」

「そ……そうそう!」

「じゃあ、練習終わったら行こう」

どうやら言い逃れはできないらしい。
残念ながら、諦めて付き合うことにした成羽、千瀬、達真、三葉であった。

それからは5人で昼飯を食べたり、成羽と千瀬の練習を他3人が観客として見て、感想を出したりして時は過ぎていった。



夕方5時15分。

「そろそろ行くか、片付け手伝うぞ~」

「あ、ありがとう。それは準備室の入ったとこに置いといて」

「これは?」

「それはそこでいいよ」

5人で手分けして片付けが進んだ。


5時25分。

彼らは音楽室から出た。

「鍵は私が持って帰るわ」

「了解~」

「それじゃ~、本題にいくぞぉ」

「本題……絶対そっちじゃない…」

龍人が噂の幽霊の特徴について話始めた。

「えーと、噂だと白い服で長い髪の人が廊下にいたらしい」

「いや、典型的なやつじゃねぇか!」

達真が笑って言った。

「見間違いでしょ」

「私もそう思う……」

三葉と千瀬が小さい声でそう言った。

「ここか」

彼らはその廊下の入り口に着いた。

「い……いくぞ…」

達真、龍人、三葉はその廊下を歩き出した。

成羽はというと……、

「あの~、千瀬さん?」

「なに?」

廊下の入り口で立ち止まっていた。

「なにじゃなくて、なっ……なんで俺の手を…?」

千瀬はさぞ当たり前かのように、左手で成羽の右手首を握っていた。

「いいから!進んで」

「怖いの?」

「…………」

千瀬はなにも言わなかった。

成羽は手首を握っている千瀬の左手を静かに外して、千瀬の広げている左手に右手をそっと合わせ、2人は3人の後を追うように歩き出した。

幽霊の噂は、果たして本当なのか―。
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