軽音部の恋物語は音を奏でるだけでは成立しない?

ど~はん

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9.ドア

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「な……なにもいないね……」

5人の足音だけが響く静かな廊下で三葉が呟いた。

窓から射し込めていた、太陽という名の照明は光を無くした。
恐らく雲に遮られてしまったのだろう。

「ち……千瀬さ…ん?だんだん握る力が強くなっているような」

「そ…そんなこと……ない」

千瀬は成羽と手を繋いでいるが、幸多と横並びではなく、1歩後ろに下がったくらいを歩いている。

「お、なにも……なかったな」

突き当たり、図書館の入り口に到着した。
左を見ると下へ行く階段がある。
休みということもあり、図書室の中は暗い。

「恐らく見間違いだろう……」

達真が言った。

「そ…うだといいんだけど」

三葉が廊下を見て言った。

「見間違いって何と見間違えるんだよ」

「お化け」

「それ言い方変えただけ!」

龍人と達真が話していると、

「ねぇ、中も一応見てみない?」

三葉が言い出した。
しかし、

「いいけど……閉まってるぞ多分」

そう、達真の言う通り普通の教室なら開いてるが、科学室などになると貴重な物が置いてあったりするので、使わない時は閉まっている。

「閉め忘れとかあるでしょ~。あの人なにかとおっちょこちょいだし」

「ひでぇこと言うな……」

龍人はあきれているが、たしかに三葉の言ってる事は正解かもしれない。

研究室から実験室やらを管理しているのは栗島先生というのだが、前回の授業がどこまでやったのか忘れたり、実験でも早くから準備してあるものの必ずなにかを準備し忘れたりする。

「とりあえず見ていくか」

逆に図書館の方から例の廊下を進むとまずあるのは、科学研究室。

三葉がドアに手を掛ける。

「ん、開いてないね」

何回か引き戸に力を入れるが開かない。

次に科学室。
ここは前と後ろにドアがある。

「両方開かないね」

「全部閉まってるんじゃない?」

千瀬が呟く。

その後、実験室、実験準備室……と次々と確認していく。

「後はここだな」

そして最後、生物研究室。

三葉がドアに手を掛ける。

「あ……」

すると、軽い力でドアが動いた。
薄暗い廊下にドアのローラーの音が響く。

言い出した三葉もびっくりする出来事だった。

「まじかぁ、あの人やっぱりなんかやらかすな」

「だ……誰も見てないよね」

幸多がそう言って周りを見たが誰もいなかった。

「よし、入ろう」

5人は中に入ったのであった―。
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